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泰安洋行をサンプリングしたり、バッハの旋律を夜に聞いてみたり、運命的な出会いをアニメにしたりしないといけない、つまりは新しい人を求め続けなければいけない。- サークルズ年暦・産みの苦しみは生の苦しみの根源編 –

バージョン 2

生み出すこと、それは物であっても人であってもとても困難を極める、と言われている。
もちろん現場づくりの代表的な店づくりにおいても、常にトライ・エラーという嵐の中を、なすべきことを見失うこと無く進み続けるということだと思っている。
でも実は道を見失ってみて、はじめて理解できることもあり、時には失うことも大切なのだと、のちのちになってわかるというのもまたひとつの真実なのだけども。
かのモーフィアスも言ってる、道を知っていることと、実際にその道を歩くことは別物だと。

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個人的に人は多くの物事をひとつの小さな入れ物に入れたがることが多いのではないかと思っている。
ただ果たしてそれが実際に良いことなのだろうかと考えることも多いし、詰め込まれた意味を正しく読解すれば有益につながることだって多い。
そして短所を見つけるのは長所を見つけることよりも容易いという、一般的によく言われる論理をもとにすこし推測すると、短所と呼ばれるものを長所と捉え、それらをじっくりと発展させ、次への道へと派生させた物事は近年ほぼ皆無なのかもしれない。

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前回の話でサーリーという思想について話をしてみたのだけれども、なぜサーリーを選びたいのかと言う質問に対して、特に面白い意見や特別な思いや考えを聞くことは基本的にはない。そしてそれでいいとも思う。なぜなら買って使ってみる以上の優秀な回答はないのだから、そして使い切ったことのある経験者だけがその正しき答えを持っているといえるのではないのだろうか。いやらしく言うと僕らの存在価値がまだあるのだと今でも信じることもできるというわけだし。

バージョン 2

繰り返すのだが、私たちは店舗がベースということもあり、買うことは常に日常の作業に含まれている。そして購買の先にある、使用という行為を繰り返すと、おのずと自分たちが販売したいと思える商品に囲まれていくことになる。そしてそれは特徴的な物もあれば、至極シンプルで質素なものになることもある。これを繰り返していくことこそが正しき店舗運営につながっていくとわたしはまだ信じていられるのは、結構幸運な方なのかもしれない。そして、そうするための必要な物をゼロから生み出さなければいけないということに、割と早い時点で気づけれたのは幸いだったのだろう。

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単純にスチールバイクの質感が好きであった若かりし頃の自分は、近所の自転車屋で組んだズノウに乗り続けていたこともあって、その意味を詳しく知ることも無く、ぼくに合うのはこんなバイクだなって勝手に思い込んでいた。そして修行が始まり、ありとあらゆる種類の自転車と戯れたことによって得た体験と結果は、早くの段階で自分自身にとって必要な答えを知ることにもなった。

あぁ、俺は鉄が好きだなってことに。

そこには様々な理由があるのだけども、一番的確な答えは作りやすい、直しやすいということだ。それはズノウに始まって多少のマスプロの鉄を知り、サーリーを知った後にナーブスに行ったってことがとても大きな理由になっている。もちろんサークルズが今の状況になっていったことにも大きく関与するのだけれども、今回はサーリーを知り、ナーブスに行った結果のシムワークスのお話をしたいと思う。

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きっかけは実はサルサだった。
リック・ハンターが最初に買ったバイクはスペシャのスタンプジャンパーだったのだけども、すぐに訳あってサルサのカスタムオーダーをすることになった。そしてわたしはシュインを買ったあとのズノウだった。リックにはサルサが必要である明快な答えがあり、わたしにはそれほどまでにはなかった。その答えへのたどり着いた早さの違いによって、彼が自転車を作ろうと思った動機となり、私は有能な売り子になろうと思った動機になったのかもしれない。

 
生み出すためには少なからずの動機がやはり必要なんだと思うのだけども、彼の場合は一般人よりもかなり背が高すぎた。わたしの場合は必要としていたパーツの製造をやめてしまった会社があったってこと。そしてもうすでに歯車は深く絡み合い、周りだしていたから。詳しく言うと、サルサがクロモステムの製造をやめてしまったときに、わたしたちはクロモリ製のステムを作らなければいけなくなっていた。それほどまでにサーリーを街中に走らせ続ける意味と必要があると判断をしていたし、そしてそれはわたしたちの美学に基づいているほうが単純に好ましかった。ただ僕たちには特にコネクションもなく、あるのは知恵と行動力だけだった。なのでそれを振り絞った結果のNITTOさんに直接お願いするという選択肢しか僕らの答えはなかった。他の様々な意味も含めて。

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様々な意味とはもう本当にいっぱいあるのだけども、ひとつを声高に言うならば、ある意味ドナルド・トランプと一緒なのかもしれない。ニホンにはまだまだ知るべきことも、やることも、やるべきことも、誇れるべきことも、そして作り続けるためには売らなければいけないということも、そして誰が何を欲しがっているかを学ぶこともあって、最後にはこれら全部をひっくるめてニホンがやっぱり好きだってことだと思う。
(やるべきことは、もう見たことや聞いたことがありそうな、二番煎じ的行動を当たり前のことだと繰り返すのではなく、自分たちにとって必要なもの、求めているもの、できること、したいこと、そしてやるべきことを的確に見極め、磨きあげていくことなのだと思う。)

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ただやはり物事はすんなりと行くのはドラマ的に面白くない。国内で会えるタイミングを見て、話をしてみるが当然のように突っぱねられ、突っぱねられ、何度も何度もあきらめずに相談したけれども決して首を縦に振ってくれない。もうこうなったら正攻法で行くのはやめ、別の国で会えるときでは時間がありそうだったことを思い出し、それを実行に移した。そんなこんなでほぼ2年が過ぎ、持っていたクロモステムのデッドストックの在庫が切れかかる本当にちょっと前に、ようやくそのテーブルに付くことが許されたのだった。(もちろんクロモのみならず、ありとあらゆるNITTO製のデッドストックを買い漁っていたのでその残り香は私たちのDiggin’the Circleに見え隠れしているはずです。)

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それからの展開や自分の中での感覚はまったく違ったものに変った。まずは必要とする物、次は必要となっていくもの、そしてちょっとした挑戦をして、また振り出しに戻る。人が買うことを想像する。売ることも想像する。作る現場も想像する。環境も未来も想像する。想像は創造を産み、創造は製造を産んでいく。そんなモノを生み出していく現場に入ってからの製造に対する産み出しは今でも大好きだし、苦になることはあまりない。一番の大きな産みの苦しみとはヒトと環境に対してだと悟るのはそう遅くはなかった。

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物を誰かのために作り出すこと、それはもちろん自分の生活のために必要なんだけども、それを考えすぎて今でもリックは苦しんでいるのだろうと憶測する。そしてそれは動機の問題なのかもしれない。わたしは喜んで物を誰かのために作り出したいと心の底から思う。これも動機の違いか性格の違いなのかもしれないのだけども。わたしたちが知っておくこととは、市場は常に変化して、たまに意味の分からない発作も起こすし、巨大な実弾はあからさまに人のマインドや行動をも壊しても行く。だからこそ本当に好きになったものを選び、その場が求める1歩進んだものを考えるのは楽しいと心底思えるし、そこまで自転車が速く走れなくても、自転車が好きでこの世界に入れたのは本当によかったし、音楽や映画や食事がたまに自転車よりもとっても愛おしく思える瞬間があることに感謝もできる。そんな全てをこんな自転車に落とし込んでペダリングをすると、きっとたのしいだろうなって勝手に想像して、行動している。こんな行動を見てくれた誰かがオレも!ってやってきてくれるともっと最高なのだけども。

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つまりなにが言いたいかって、人はそれぞれとても違うし、どんな感覚で世界を見ているかなんてそれこそ人によりけり、でも人のために想像することを楽しまなければいけない。そんな人のたちと出会うことや産み出していくこと、意志をつなげること、そのつながりの先に環境軸が生まれて、また新たな面白い人達がやって来るという周回軸も産み出していかなければいけない。それはほかの産業の若者のように、泰安洋行をサンプリングしたり、バッハの旋律を夜に聞いてみたり、運命的な出会いをアニメにしたりしないといけない、つまりは新しい人を求め続けなければいけない。そして彼らに求め続けられる環境づくりを、我々を含む関係各位は日々励まなければならないってことなんだろう。そのすべてがLIFEってアルバムにつめこまれていて、私がサークルズという名前をこの吟遊詩人からもらっているわけなのだけども。

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シムワークスとはコンセプトだ。僕たちのC調でアップテンポなビートに乗っかって一緒に踊って欲しい。夏目先生も言ってたように、智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい、と。そんなんだから自分の好きな自転車にまたがって、波長が合った物たちとビートに乗った人たちが自由を求めて生きたいところに行けばいい。敷かれたレールなんてそこまで必死に見る必要なんてなく、自分でレールを敷いていく、いやレールすらいらないだろう。常にオフローダーの感性で生きればいい。もしこんなコンセプトを気に入ってくれたなら、少しだけ覗いてくれれば幸いだ。そしてぼくが多くの自由を学んだ冒険大国にも飛び火して、数年後には世界とやらをこの環境軸に飛び込んできた仲間と一緒に回せたら最高かなって今は未来の創造をしている途中なのだけども。

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– サークルズ年暦・食い意地の意地とはよく言ったものでとにかく意地が大事編 -につづく。

 

– INFORMATION - 

 

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サークルズ10周年記念祭

場所:PLASTIC FACTORY
日時:12月3日(土) PM7:00~
10周年イベントまとめページ

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ぜひ手帳に書き留めておいていただければ幸いです。

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田中 慎也

空転する思いと考えを自転出来るところまで押し上げてみた2006年。自転し始めたその空間は更なる求心力を持ちより多く、より高くへと僕を運んでいくのだろうか。多くの仲間に支えられ、助けられて回り続ける回転はローリングストーンズの様に生き長らえることができるのならば素直にとても嬉しいのです。既成概念をぶっ飛ばしてあなただけの自転力に置き換えてくれるのなら僕は何時でも一緒に漕ぎ進めていきたいと思っているのだから。
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