基本的に下手ウマの画風は苦手なんですが、しりあがり寿大先生だけは別です。
最近また名作「弥次喜多 in DEEP」を読んでいたところです。たどり着けば幸せになれるという伊勢を目指して旅するカップルの話で、いつも現実か幻か分からない事件に巻き込まれて、光と陰、生と死を行き来する旅物語がゆるーいタッチで描かれます。
今回のライドは東海道ではなく信州と鎌倉をつなぐ鎌倉街道(上道)ですが、郊外の池沼で4年に一度(干ばつのたびに)開催されている龍神を呼び出す雨乞いの儀式を見に行くというプロットがもう非常にマジカルで弥次喜多的です。
その儀式、埼玉県鶴ヶ島市の脚折地区で開催される「脚折雨乞(すねおりあまごい)」は江戸時代から実施されているようなので、当時の街道を行き交う人からしたら、それは不思議な光景だったに違いありません。いや、現代に埼玉郊外の住宅街に30mを超える巨大ドラゴンがヌッと現れる様子もかなり寓話的でした。
なんとか気温を下げてもらえないでしょうか?
何だか日本昔ばなしのような景色と出来事に拍車をかけるのは、快晴で38.1℃(鳩山町)まで上がった気温と、ギラギラ照りつける太陽です。どれだけ水分補給をしても頭がぼーっとする暑さで、目の前の風景が朧げに見えてきます。
嵐山渓谷の辺りも川の水量が少なく、水浴びも戸惑うほど澱んでましたし、「死にそうなんだけど大丈夫かな?」とか「こんなのは無茶しないとやってられないよ!」とか不穏な会話が飛び交う祭りの会場でも、実際に神輿を担ぐ人が倒れて救急車で運ばれていました。かつては農業のために必要だった雨乞いも、地球温暖化の現代においては暑さ対策として同じく必要な祈りなのかもしれません。ドラゴンが昇天してからは少し雲が出て太陽を遮ってくれたおかげて過ごしやすくなり、龍神様のご加護を感じました。
ライドルートを引いてくれたのはお馴染み #ArakawaOutback のカコ君( @aosmi )。今回のライドも出発してすぐに荒川的グラベルに突入する素晴らしいルートで、なんでこんな良い道知ってるの??っていうハイライトの抜け道が次から次へとつながっていきます。
ルートはどうやって引いてるのか?という問いに、「線ではなく、面で考えるんですよね」と答えるカコくん。目的地へ向かう道を探すのではなく、そのエリアにある良い道をネットワークするという感じでしょう。そう考えると、前回のジャンボ鯉のぼり(これも相当に弥次喜多的…)ではそのライド体験を「華厳的」と書いたのも間違いではなく、彼のルート作りと荒川流域の地相は、繰り返しと反射反転し、帝網のようにネットワークするのです。
ゴールは小川町
祭を見物してからさらに走り、最終的なゴールは小川町の麦雑穀工房( @zakkokubeer )です。埼玉の僻地(失礼)に美味しいビールを作るお店があるらしいという噂を耳にして、バイクロアに出展してもらおうと訪ねたのはもう10年も前です。
今の醸造所兼タップルームに移る前のお店は満席で、このビールのためにここに移住してきたという夫婦が2組もいたことと、そこで飲んだ雑穀ヴァイツェンの美味しさはかなり印象に残っています。今回も鈴木さんに無理言ってちょっと長めに滞在させてもらいました。
有機農業が盛んな小川町は美味しい飲食店も増えて、今や移住したい街のトップだそう。駅前に良いお店が揃っているので、秩父方面へのライドやハイクのベースタウンとしても最高です。
暑さにやられ、ルートに翻弄され、不思議な光景と美味しいビールでさらに朦朧とする、夏の蜃気楼のようなライド。現実なのか幻想なのか、なんだか化かされたような走了感があるのがとても良かったです。
埼玉にはまだまだやばい祭りがたくさんあります。そのうちまた開催するのでぜひご参加を。
今回もそれぞれスタイルがあった参加者達。
自転車もフルカーボンからサーリーやバイクフライデー、ハンドメイドまで多様でした。ディティールもかなり良いので、拡大してじっくり見てみてください。