Words & Photos By Masanori Nishikawa
マウンテンバイクジャーニーの西川昌徳さんによる新連載「旅のおと」今週はVol.2をお届けします。
今回初めてご覧になった方は、ぜひVol.1もご覧ください。

毎日ただただ走り少しでも先を目指すこと。
なんとかして食べて、眠る場所を見つけ、その日を生き延びること。
けれどそんな毎日が、いま振り返ると紛れもなく僕の旅の人生のはじまりだった。

ユーラシア大陸横断を目指し、中国上海からヨーロッパへ向けて走りはじめたときのことを前回は書きました。

言葉が分からない。
文化も常識も違う。
もちろん知ってる人なんて、ひとりもいない。
そんな旅のはじまりの僕の心にはこれからどうなるんだだろうという不安と、何も分からない怖さと、けれどもなんとかするしかないという必死さでいっぱいでした。

けれども、そんな僕を待ち構えていたのは。
その土地に生きる人たちの好奇心と笑顔でした。
「どこから来たんだ?」
「どこまで行くんだ?」
「ひとりなのか?」
「名前は?」
「寂しくないのか?」
「お腹すいてないか?」
おっかなびっくり旅をはじめた僕も、さすがに毎日休憩に立ち寄った街や村で人に囲まれて同じ質問をぶつけられたなら、中国語でも何を聞かれているのか分かってきました。

だいたい聞かれているだろう内容を想像して、メモ帳に漢字で書いて見せる。 そしたらみんなそれを見て「おー!」となる。
おせっかいのおじさんが中学校の英語の授業の「リピートアフターミー!」みたいな感じで、中国語での答え方を教えてくれる。
それをマネして言うと、みんな喜んでくれる。
そうして日常会話を覚えていきました。
そして、その日の終わりに日記を書くころには、なんだかよく分からないんですが「その日の出会った人たちとのやりとり」をスラスラと書いているんです。 あれ?ってなるんです。

旅のはじまりには、あんなに不安で、こわくて、ヒリヒリしていたのに。 気づいたら、毎日お腹いっぱいごはんが食べられて、カタコトでもなんとか現地のひとたちとやりとりし、一緒に写真を撮ってまたねー!と笑顔で手を振りながら、また前にむかってペダルをこぐ僕がいる。 笑ってる自分がいる。

このころの僕が撮ってる写真って、すっごい寄ってるんです。
相手の顔に。 よっぽどうれしかったんだと思うんですよね。
旅のはじめ、あんなにも怖がっていた僕をおもしろがって受け入れてくれて、一緒に笑ったり、ごはんを食べさせてくれたり「そんなところでテント張るくらいなら、うちに来て寝たらいい!」と泊めてもらったりしたことが。


そうして、あぁ信じていいんだ。
この土地も。
人たちのことも。
それは「自分が旅する国」ということではなく、この「世界」と「ひと」をということだったんだと思います。

将来目指したい夢もなく、かといって人に自慢できるようなことが何も無い 「自分ってなんなんだろう」と思い続けてきた僕にとって。
こうして旅の空のもとで迎えてくださった方々の笑顔や、親切が、紛れもなく自分が自分であること。
何者かであるということ、教えてくれたように思うのです。
Vol.3に続く。