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【SEVEN CYCLES】未知との遭遇 / Close Encounters of the Third Kind

Text by Shinya Tanaka/Photo by Ryota Kemmochi

きっかけは突然やってきた。それは思いもかけない一通のメールだった。
僕たちのやっていることを遠くからいつも見ていて、とても感心しているという話の始まりだった。
そして是非一緒に仕事ができないか? との問いかけで締められていた。
メールの差出人は “SEVEN CYCLES” と書いてあった。
僕はまるでフリークライミング中に指先がとても状態の良い岩を探し当てたような感じがした。
なので「ぜひ一度工場見学をさせてください。」とだけ書いてボストンへのチケットを取ることにした。

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1970年代すなわち巷ではディスコ一色だった頃、アメリカでは再びスポーツバイクブームが起こり、ピーター・ウェイグル、リチャード・ザックス、そしてクリス・チャンスなど、数名の勇気ある人たちがニューイングランドでのバイクビルディング商売を復活させた。

そして初期SEVEN CYCLESにいるほとんどの人間が働いていた “マーリン・メタルワークス” はその第二波の一部分であり、そこで培った基礎を元にSEVEN CYCLESが現在まで存在できているのは明確なる事実なのである。

今この時代でさえ、セブンで働いていた若きビルダーたちは外へ飛び出て自分の空間を持つ事がたびたびある。
たくさんの人々がセブンで働き、そして通り過ぎ、たくさんの人々がこれからもセブンで働くことになるのだろう。

しかしながら彼らの多くが “物” はどこで作られるかという事がとても重要だと感じていて、ボストン、そして大きな川沿いにある赤レンガ工場内で作られる一つ一つの自転車フレームにはその哲学とも言えるだろうものが宿っているとも信じている。

そしてこの壮大な 『ニューイングランドでの自転車作り』 という物語の中で、小さな役を演じられる事がとても幸運であるとも感じているのだ。

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早速到着したその工場内にはフロアから天井まで20フィート(約6m)の場所を、何百ものスチール、カーボン、チタニウムのチューブがぎっしりと敷き詰まり壁を形成している。 その異様な光景は他のプロダクションフロアと機械工作部門に隔たりを作っているのは下の写真から見て取れると思う。 そしてその壁の後ろには、旋盤やフライス盤がところ狭しとただ乱雑ではなくまるで使い勝手が良いキッチンのように場所を占有しており、そのいくつかは70年前に作られたものもあったり、それぞれの機械にはフレーム製造時の誤差を限りなく無くすためのパーツがカスタマイズされている。 また同じくしてプレス機、チューブベンダー、フィクスチャー、万力、金床、ヤスリ、調整可能ジグがところ狭しと隙間を埋めるように並んでいる。そこには金属の風景があり、当たり前だがそよ風や太陽光などはない。

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それぞれの部署に就くフレームビルダーたち(単に溶接工のみではなく、フレーム製造の何らかに携わる人々のことをフレームビルダーとここでは呼ばせてもらいます。)はそのフロアにて、一つの機械から次の機械へと効率よく動き、レバーをぽんと弾いたり、計量器をスライドさせたり、全ての行程において確実な数字にしていくための測量をかかすことはない。 イエロー色のホールソーが絶えずぐるぐると回り、チューブ同士が確実に合わさるように常に正しいものを作っている。機械工職人の腕の筋肉は膨れ上がり、チェーンステーやシートステーが生み出すフォームアンドファンクションの結晶『S字カーブ』を作るための赤い水圧プレスを押している。

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それぞれの機械はとてもはっきりと違いの分かる個別のサウンドを持っており、ラジオから流れる音楽とまるであたかも空気中で競演をしているかのようである。 旋盤は永遠に回り、様々な種類の素材を削り落としている。 ベルトサンダーはチューブエンドから小さなバリを正確に取り除き、ハイピッチですり合わせられている音が聞こえ、火花が飛び散る。 全ての行程がまるで耳と目のためのシンフォニーであるかのようだ。

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メタルが奏でる演奏がようやく終わり、それぞれのフレームパーツが完璧なまでに加工され、ようやく自転車本来の形がうっすらと見え始めるのである。 片手にCADドローイングを持っているフレームビルダーがフレームジグを組み立てている時、とりわけ特徴も無い、長方形の箱の中身が空になり始める。 ヘッドチューブやシートチューブの角度が固定され、長さが計られ、全てのチューブがパズルのように組み込まれ、ここで初めて自転車フレームの形になる。

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頭を2回うなずかせ溶接用マスクを落とし、突き刺さるような光から目を守るのである。 右手に溶接トーチ、左手にはフィラーロッドを持つ。 フレームが綺麗に掃除され、火の温度が適切なところまで来た時、フィラーロッドを接続部に近づけ、溶かし、そして小さな丸い水たまりを残すように作業を行なう。 それぞれの小さな1滴が溶接の力を増長させ、最後には永久的な結合をさせるのである。

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スタンドにセットされたフレームが持ち上げられ、回され、ひっくり返され、そして調整が施される前段階でもう完成している溶接痕はとても均一であり、仕上がりは一続きに流れているようにも見えるだろう。 これは職人の技術と芸術性に対する証なのである。

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フレームの位置合わせは1000分の1単位で計測され、溶接工は全ての過程においてフレームが正しく真っすぐになっているかを確認しなければならない。 できるだけフレームが完璧に近い直線になるように心がけながら、頻繁にチェックをする事により、その都度小さな調整をすることが可能となる。 ボトムブラケットとトップチューブが0.005インチ以内で平行になるよう保ちながら、最大の許容値として机の上に置いてあるコピー紙が2枚重なった高さまでが許される。 もしあなたもセブンを訪ねることがあるのなら、その精度保持に対して彼らは最高のプライドを持っていると何度も繰り返し説明を受けることになるだろう。

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溶接工はフレームやパーツの溶接に対して何時間もかける。 完成するにあたり、溶接部署に所属するオリジナルファイブの一人であるリーダー、ティムに最後の点検をしてもらい、オーケーがでると次の部署であるフィニッシングに配置されたフレームビルダーたちが最後の機械加工(ボトムブラケットのマシニング加工)といわゆる仕上げを行なうのである。

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最後のフィニッシング部における機械加工を施されることによって完全に機能するフレームとしては一旦完成するのだが、さらにカスタマーへと手渡されるフレームへとここからさらなる工程が加わっていくことになる。 まずはフィニッシングにおける機械加工なのだが、溶接トーチの熱によってほんの少しだけゆがんだヘッドチューブはビンテージ物であるマサチューセッツ産の旋盤によってフェーシングやリーミングが施され、そしてまだこの時点ではただの厚肉管であるボトムブラケットは、この建物の中で一番大きな機械であるCNC工作機を使って最終的にスレッド加工およびそのすべての加工がBBに施される。 その後シートチューブに切り込みが入れられ、チタニウム/カーボンモデルを作るならば、カーボンファイバーのチューブが各ラグ部に埋め込まれることになる。

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この時点でフレームはたくさんの工程を経てきた。未加工であった各チューブたちはその専用の棚から降ろされ、カット、やすり掛け、サンディング、取り付け、配置、溶接、リーミング、フェーシング、そしてスレッド加工を通ってきたのである。 ただフィニッシングビルダーがフレームをフィニッシングスタンドに取り付けた時点では、まだ完成品ほどの美しさを持ちあわせてはいない。 乾いた切削油がフレームにまだ残っており、それぞれの溶接された場所には熱からくるくすんだシミもある。 CNC加工された時に出る金属破片ですらまだシートチューブの中に詰まっているだろう。

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機械加工場は壁に囲まれた感じがし、溶接場は研究所のような雰囲気で、この仕上げ部門は中庭のような明るさがあり、大きな窓からは自然光が部屋を覆う。 ここでは蛍光灯が一番明るく、デカールのアライメントや綿密な検査の時にとても役に立つ。 そこには以前の部署のように固定された機械や大きな金属製の机の代わりに、小さな軽量の道具たち、ナイロックスホイルがついたドリル、薄い細長いサンドペーパーの切れ端、そしてスコッチブライトが装着されているバイクスタンドがいくつかある。 ガリガリと音のするナイロックスホイルは目障りな変色部分を綺麗にさせ、表面にあるグリットを取り除く。そしてチタニウムに使う時のホイールの音はいつも正確に一定に保たれているのだ。

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チタニウムフレームは完全に溶接された後、価値のある革靴を磨くようにスコッチブライトによって丁寧に磨かれる。 この最後の行程により、均一で明るい外観へと変身する。 そしてデカールが装着され、小さなパーツたちが固定される。フレーム全体が薄いファニチャーポリッシュでコーティングされ、レーザーカット加工もされ、そしてステンレススチール製のSEVENオリジナルヘッドバッジが埋め込まれるのである。

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またサイクリストによってはさらなる満足を得るためのオリジナルカスタムペイントが必要な人もいるかもしれない。 もちろんセブンには他の部署と同じくらい優秀なペイント職人がおり、カスタマーの要望を完全に満たすための小さなマスキングひとつずつを貼る、剥がすを丁寧に繰り返し、クリアーコートを重ねながらその独自の世界観の演出の手助けをしている。

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彼ら、フレームビルダーがカスタムバイクを作っている事を街の人達が知った時、スーパーや学校の送り迎え場所やドーナッツショップで、「よう。いったいどんな自転車を作っているんだい?」と尋ねてくる。 そして彼らはの思考は一瞬立ち止まってしまうという。 なぜなら質問よりも答えのほうが圧倒的に大きくなってしまうからだ。「そうですね、全種類ですね。ロードバイク、マウンテンバイク、コミューターにシクロクロスなど、みんなが欲しいと思うものは何でも作りますよ。」としばらくして彼らは答える。

しかし、この説明すらほんの一部でしかない。

事実、現状の自転車シーンを見渡すとロードやマウンテンなどのようなカテゴリーなんてものは段々と意味をなし得なくなってきてはいないだろうか? ロードバイクを作るという事を意味するのは、時々は幅が狭いタイヤのレースマシーンであったり、少し太めのタイヤを許容する泥よけ付きの長距離用ランドナーであったりもする。 

何?? ランドナー??? もちろんドーナッツショップにおいてランドナーという言葉を使ってもまったくもって意味がない。

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なので仮に人に説明をすると見立てそのカテゴリーを分類することにしよう。 たとえばロードバイクというものは、種類の全く違う、様々な面白い自転車のスタイルが覆い被さってできている大きな傘のようであり、あなたがいま考えているその欲しい自転車とは、実は全く違うカテゴリーに分類されるかもしれない。 

例えばそれはシクロクロスであったり、コミューターなどの通勤快速号に当てはまる場合も往々にして起こるし、そして舗装道路を走ればそれがロードバイクになるのだろうか? もしくは山林のトレイルの上を走ればそれはマウンテンバイクなのだろうか? つまりはバイクをどうやって定義づけるのかを知るのはとても難しい事なのである。 フレームビルダーとはタイヤサイズ、モデル年式、パーツ、ペイント、舗装道路や泥道などによって制約はされないバイクを作ることが仕事なのである。

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セブンにはよくお客が直接出入りもするらしい。 なぜなら彼らが欲しいものは一言や二言では伝えきれないからである。 もしかしたら彼らはロードバイクが欲しいのかもしれない、しかしオプションとしてフェンダーを付け加えたり、週末のグループライドで速く走りたくない時はラックを付けたいなと思っていたり、またあるいは冬場のためのシクロクロスレーサーが欲しいのだけども、そのシーズンが終わった後には夏用のコミューターに改良してしまいたいと思っているかもしれないからなのだ。

「もちろん生粋なピュアロードレーサーバイクも正確に作ることができますよ。」スーパーや理容店で聞かれたときには彼らはこう答える。

しかし本当はオンロードからオフロードを問わず、区切られたレースコースから学校への送り迎えの間にあるすべての道々で彼らが走りたいと望むスタイルのバイクはなんでも作れる。

それが彼らが作る自転車の種類なのだから。

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To be continued next FEATURE…
  

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名古屋の自転車屋、Circlesです。This is Circles Bike shop in Nagoya Japan.
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