こんにちは!Circles Tokyoの吉本です!
前回のブログでは「道に合わせて、自転車を考える」というテーマのもと、変化する環境や乗り方、行きたい場所を想像し組み上げたカスタムハンドメイドフレームについて書きました。
「道に合わせて、自転車を考える」という行為はなにもフルオーダーのフレームに限った話ではありません。自転車は様々なパーツの集合体であり、走る道に合わせてパーツをアッセンブルしていくことも極めて重要です。その中でも、自分の走りたい環境に最も直結するパーツがタイヤです。

私自身、店頭で一から自転車のオーダーをいただく際は、まず「どんなタイヤを履きたいか」を決め、そこから車種やフレームの設計を逆算して選定していくプロセスを大切にしています。
自転車を構成する無数のパーツの中で、路面と直接接しているのは唯一「タイヤ」だけ。路面や乗り方に合わせるために最も多種多様なニーズが存在し、種類が豊富に展開されているパーツなのです。





タイヤの太さやトレッドパターンの選択が、その自転車でどこを走れるのか、そしてどのような乗り心地になるのかを決定づける最も大きな要素です。乗り手が一番よく行く場所や、これから行きたいと願う場所は、如実にそのタイヤに現れるものだと私は思っています。
そして、選んだタイヤのポテンシャルを引き出す上で、もう一つ欠かせない要素があります。それが「タイヤの空気圧」です。空気圧の管理次第で、全く同じタイヤを履いていても乗り味や推進力は大きく異なるものになります。本日はそんなタイヤの空気圧についてのお話です。

適正な空気圧を考える
修理やメンテナンスで自転車をお預かりするとき、私は必ず「普段、タイヤの空気圧はどれくらいで入れていますか?」とお客様にお聞きしています。「特に決めていない」、あるいは「タイヤの側面に書いてある最大空気圧ギリギリまで入れている」といった答えがほとんどです。
グラベルなど未舗装路を走る際に空気圧を下げるという行為は、随分と一般化してきたように感じます。しかし、未舗装路に限らず、普段走るアスファルトの上での空気圧にも、もう少しこだわってみてもいいのではないかと思うのです。



これはあるタイヤ2種のサイドウォールに記載されている表記。
・TUBED MAX 525kPa(5.3bar 75psi)
TUBELESS MAX 400kPa(4.0bar 60psi)
・250-410 kPa (35-60psi/2.5-4.1bar)
上はチューブを使用する場合とチューブレスの場合とチューブドの場合の「最大空気圧」
下は「この空気圧の範囲内で使用してください」
という表記です。この数値まで空気を入れる方が多いのですが、これらはあくまで限界値や安全を担保できる範囲を示しているだけであり、決してあなたにとっての「最適解」ではありません。
競輪のトラック競技場のように整備された路面であれば、10Barを超えるような高圧を入れるのが正解です。しかし、私たちが日常的に走る街中は交通量の多さでアスファルトが傷み、ツギハギだらけで補修されている道が多く、舗装路でありながらグラベルに近いような状況もしばしば見受けられます。
そのような環境でタイヤが高圧で硬すぎると、路面の凹凸を柔軟に吸収できず、自転車が跳ねてしまいますよね?
この状態、実は前に進むためのエネルギーが上への運動に変換されてしまっていたり、タイヤが接地しないことで推進力が上手く地面に伝わらなくなり、ロスが生まれるのです。言うまでもなく乗り心地も悪いですよね!
かつて高圧の細いタイヤが速いとされていたのは、実験環境が滑らかな3本ローラーの上だったからで、実際の道路状況に合わせた最新の科学的研究の結果、適正な低圧にした太めのタイヤの方が抵抗が少ない事が判明しています。
チューブレス運用が普及したこともあり、現在ではプロのロードレース現場でも4気圧〜5気圧台といった低い空気圧がスタンダードになってきました。
何を基準に空気圧を決めるのか。
ここまでの話で適正な空気圧があるのは分かった。
でも、タイヤにも最大空気圧しか書いていないしどうやって正解を決めるんだろうと思いますよね!そんな時におすすめなのがこちらのツール。

SRAM Tire Pressure Guide https://axs.sram.com/guides/tire/pressure
体重や想定する路面状況、使用するタイヤのケーシング、そしてホイールのリム内幅など、複合的な要素によって適正な空気圧は変動します。だからこそ、まずは勘に頼らない信頼できる基準値を知ることが重要です。
このツールに体重、車体重量、ホイールのリム内幅、タイヤの種類、そしてよく走る路面状況を入力するだけで、推奨される前後タイヤの空気圧を論理的に算出してくれます。
まずはこのツールで出た数値を基準に入れてみてください。
それを基準値にして、同じルートを走り、0.2気圧〜0.5気圧刻みで微調整を行っていくことで、自分の機材構成に対する最適な気圧を見つけ出すことができますし、空気圧が違えば同じルートでも全く違う感覚になることでしょう。
私の場合、先日のブログで紹介したSEVEN Evergreenの数値をSRAM Tire Pressure Guideに入力すると、フロント1.99ba/リア2.12という数値が出ます。ただグラベルといってもどうしてもオンロードもかなりの割合になるので、もう少し空気圧を上げたフロント2.2bar/リア2.3bar程度が現在グラベルミックスのホームルートでは調子が良いですね。
「最高の優れた楽器でも作られたままでは本当の音は出ない。『正しく調律』と『ふさわしい演奏者』そこで初めて本当の音が出る」


首都高を舞台に時速300km以上の速度で競い合う走り屋を描いた漫画『湾岸ミッドナイト』のワンシーン。悪魔のZと呼ばれるS30型フェアレディZを駆る主人公・朝倉アキオの物語であると同時に、彼を取り巻くチューナーたちが機械とどう向き合うか、その哲学とプライドを描いた名作です。
同じく命を預ける乗り物である自転車にも、このチューナーたちの視点は深く当てはまると思っています。どんなに精巧に作られたフレームや、高価で高性能なタイヤをアッセンブルしたとしても、乗り手の体重や走る環境に合わせて正しく「調律」されていなければ、その機材が持つ本当のポテンシャルを引き出すことは決してできません。
空気圧の調整とは、まさにその調律作業そのものです。 空気をいれるという日常的な行為は、誰もがコストをかけずに行える、最も身近で立派なチューニングと言えるのではないでしょうか。

タイヤに空気を補充する。この日常的な作業も、構造的な視点を持てば、路面と乗り手を繋ぐ接点を最適化する立派な「調律(チューニング)」になります。
乗り心地と転がり抵抗の最適なバランスを見つけることができれば、コーナーでも路面を捉える感覚がはっきりと伝わり、不安なく車体をコントロールできるようになるでしょう。
自転車は、お店で組み上がった状態が100%の完成品ではないと私は考えています。乗り手の体重や走る環境に合わせて空気圧をセッティングしてみる。そうすることで初めてその人にとっての完成形に近づいていく。
空気圧のチューニングひとつで同じ道を走っても質は全くの別物に変わります。限界までパンパンに空気を入れるのはやめて、まずは精度が高く大きなメーターがついたポンプを手に入れてみてください。
補修しながら長く使える確かな計測機器があれば、日々のライドから「自分だけの空気圧」を論理的に探っていくことができます。自転車の構造を理解し、ポテンシャルを最大限に引き出すチューニングの過程も、この道具を所有する面白さの一つです。ぜひお試しください!
おすすめフロアポンプ



PARKTOOL Home Mechanic Floor Pump (PFP-10)
長年多くの現場で使われ続けている、質実剛健な造りのポンプです。構造がシンプルゆえに堅牢で、補修パーツも手に入りやすいため、何年にもわたって修理しながら使い続けられます。普遍的な価値を持つ、確かな道具の代表格と言えます。



FEEDBACK Pneuma CC Floor Pump
チューブレスタイヤのビード上げにも対応する、エアブースト機能を搭載したフロアポンプです。普段は通常のフロアポンプとして使いながら、必要なときには内蔵タンクから一気に空気を送り込むことができます。日常の空気圧管理からチューブレスのセットアップまで、1台で幅広く対応できる頼もしいポンプです。


PANARACER P-pump Pro
最近は小型電動ポンプも様々なタイプがリリースされています。空気圧を指定すれば自動でその気圧まで空気を入れてくれます。音が大きいのと、充電が必要なのがネックですが便利です。


SKS Rennkompressor Floor Pump
1925年の誕生以来、長きにわたって愛され続けている、ドイツ生まれの定番フロアポンプです。頑丈なスチール製ボディと安定感のある木製ベースを備え、シンプルでありながら高い耐久性を誇ります。長年使い続けられる確かな品質と、必要に応じてパーツを交換しながら使えるメンテナンス性も魅力。まさに一生ものの道具と呼ぶにふさわしいフロアポンプです。