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今、そこから始める自転力について。

久しぶりにビッグシティー東京に行ってきました。
その目的とはコリーヌ・ベイリー・レイのライブに行きたかったのが一つ、そして週末に調布で開催されたオフ・ザ・グリットへ現場スタッフから急遽追加発注された商品をハンドキャリーして持っていくのが追加されたのでした。 この場を借り、非常に多くの方にRALの新製品NEW TABBY SOCKSをお買い上げいただきましたこととても感謝しております。 誠にありがとうございました。

最近ではイベント出店が多く、商品や什器の搬入のため車での移動が多くなっていたのですが、今回は久しぶりに新幹線で時間的には早くもありますが、ゆっくりと自分の中で考え事をしての移動だったので思い立ったことをここに記載しておこうと筆を執った次第です。 (ここからの写真はイメージです)

オフ・ザ・グリットにはアウトドア・フィールドにおいて、自分たちの欲しいもの、やりたいことを形にするガレージブランドが多く出店しており、開場前には入場待ちの列ができるほど人気イベントです。 オープンと共にダッシュでお目当てのブランドに辿り着こうとする人たちをしり目に、わたしたちはわたしたちでブースの最終チェック。 ありがたいことに前日ほとんど売り切れたソックスの補充に励みます。 そんな人気のあるガレージメーカーのサイトをたまに覗きに行くと、驚くことが連続して起きます。 その多くがものを作り上げていくまでの時間をあまり惜しんでいないということがまず上げられます。 憶測にはなりますが競争の多いアウトドア産業の中においても、それぞれの生み出したいと思うものが、決して他の多くがまだ想像していないと考え、行動しているからなのだと思います。 そしてしっかりと作った以上にその過程と内容を伝えていくことも非常に大事にしているということも含めて。  


また現場で思ったことで残念なことは、数年前に生み出された画期的なアイデアは多くの作らざる得ないメーカーに完全に真似をされており、誰が実際に本家だったのかさえ、わからない状態になっていたことなどもありました。 しかしながらやはり群を抜いて際立っていた何社かのメーカーは、イベント現場においても自分たちの仕事に確固たるプライドがあり、その都度の仕掛けを作り、極めて正しく、楽しく、正確に伝えるという現場活動自体も、ものづくりに比例して飛び抜けているのがとても印象的でわたしたちもしっかりと見習いたいと思ったわけです。

常日頃シムワークスRALとしてなんとか良い製品づくりをと勤しんではいるのですが、まだまだ製造に対する工程管理や時間軸、その目的意識をかれらほど正しく、丁寧に伝えきれていないことが今の重大な課題ではあるのですが、やはり今売れてるものを血眼になって探し、それを真似るようなモノ作り屋だけにはやはりなりたくないと強く思うわけなのです。

またそこで考えました。 今一度サークルズと言う自転車屋を作った目的を話す必要があると思ったのでおさらいをしてみようと。

服飾業で働いていた私でしたが、服の可能性をまだまだ感じつつも、その使われ方や売られ方において疑問符を消すことが出来なかったために、なるべく人のためになれることを自分の一生涯の仕事にしたいと思い始めたのが今から16年前のことでした。 それ以前よりハマっていたマウンテンバイクだったのですが、やはりマウンテンバイクというものはそれまで好きだったスキーと同じくして、山の近所で付き合っていくことが必要だったため、そして当時の自分としては街を離れるという想像が出来なかったために、自分がどう自転車と向き合い、そしてより愛することができるのかを日々考えていました。

また自身の海外での体験も強烈でした。 その多くのサイクリストはものを使い切ることを前提に自転車を手に入れ、しっかりと壊し、そして技術とともにコンポーネントもステップアップしていくのでした。 また自分の所有するものをどこまでも理解したいと思う気持ちや自身が作り上げ、考え抜いた感覚や哲学を他に広めつつ、サイクリング仲間を増やして行く手段などもとても素敵だなと思ったことだったのです。そんな感覚をなんとかこの国にも定着できないかを試行錯誤し自分なりに考え出した答えが自転力という言葉でした。

自ら転がりだす勇気を内部に生み出し、それをコントロールするために自身の力で慣性を得る。 すなわちペダリングを行い続けるという行為の魅力が私を虜にしたのだと悟ったわけでした。 よって私にとっての自転車という存在はそのシンプルな物理的魅力もさることながら、より哲学的な響きによってもたらされたのだと思っています。 ふと思ったのですが、登山家が山に登る理由がそこに山があるのだからとよくいいますが、もし山がなくてもきっと海に深くもぐったり、ウルトラマラソンをしているかもしれないなぁなんて感じでしょうか。

さておき、いろいろな物事にも当てはまると思うのですが、もし人が好きなものを徹底的に考えたり、追求をすることによって先ほどの自転力というものは勝手に身に付くものだと思っています。 その自転力を身に付けた人たちは今週末のオフ・ザ・グリットでも少なくないほど出会うことができました。 それらは大小を問わずに自分たちで考え抜き、作りたい、伝えたい欲求に駆られており、多分シムワークスやRALなどの感覚に近いものとして生み出された意識たちの結晶なのだとも感じました。


話は戻りますがサークルズは自転車を信じていますとABOUT USにも書いてあるように、ある特定のものだけを愛するような偏ったことはあまりしたくないのです。 街に溶け込んだママチャリや実用車、そして使い込まれた通勤快速車などにもそれぞれ道具としての美しさがあります。 そして何よりも移動インフラとしての自転車をサポートすることは何よりも大切だと思い、またそれらをより長く、愛着もって使い込んでいってほしいと心より願っているわけなのです。 また好きが突出してしまった方たちにはカルチャークラブというサイクル・コミュニティーセンターもご用意しています。 ぜひ自分の自転車をより詳しく知ってみてはいかがでしょう? そして自転車の本質的な素晴らしさを奥様や恋人、友達や同僚に嫌味なく、オタク感無いように伝える努力をしてみるのはどうでしょう?

自分の好きなことを他人が興味持てるように話すことはとても難しいはずです。
でもそんな気持ちが生まれることがまさに自転力の始まりなのだと信じております。



 
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Text by Kyutai
 
  
 

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田中 慎也

空転する思いと考えを自転出来るところまで押し上げてみた2006年。自転し始めたその空間は更なる求心力を持ちより多く、より高くへと僕を運んでいくのだろうか。多くの仲間に支えられ、助けられて回り続ける回転はローリングストーンズの様に生き長らえることができるのならば素直にとても嬉しいのです。既成概念をぶっ飛ばしてあなただけの自転力に置き換えてくれるのなら僕は何時でも一緒に漕ぎ進めていきたいと思っているのだから。
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