来店予約はこちら

「週刊 球体の作りかた」Vol.2

日米首脳会談と自転車インフラの未来

先日、石破首相とトランプ大統領の首脳会談が行われました。経済や防衛に関する議論が中心でしたが、その中で特にわたしたちが注目すべきトピックとしては「インフラ投資」と「関税」の話題だったのではないでしょうか。

これらは、自転車業界、そしてサークルズのような小売業、そして卸売のビジネスにも直接影響を及ぼす可能性があることだと考えています。

日米関係において、インフラ整備は経済成長の大きな柱とも言えるのですが、現在のアメリカでは老朽化した道路や橋の補修、大規模な鉄道網の整備が目下大きな課題となっており、日本もまた同じく、先日の埼玉の陥没事故にも見受けられるように、インフラの改修とともに、都市部での交通インフラの改善が求められているのではないでしょうか。

そのような問題の中で、わたしたち自転車人が自転車を活用した新しい都市づくりに対して、どのように積極参加を進められるかが、自転車の未来の焦点になるのでしょう。

関税が自転車市場に与える影響

一方で、トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」の方針を改めて強調し、輸入品に対する関税の引き上げを示唆しました。これは、自転車業界にとっても無視できない問題です。現在、アメリカでは多くの自転車パーツがアジアから輸入されていますが、関税が上がれば価格が上昇し、市場全体に影響を及ぼします。そして日本の自転車産業の現実とは、輸入文化産業に成り下がってしまっていることも明白な事実です。

SimWorksをはじめ、日本のブランドがアメリカ市場で競争力を維持するには、先日のブログにも述べたように単なる価格競争ではなく「付加価値のある製品づくり」が求められます。関税の変動によってコストが増えても、製品の品質やブランドのストーリーをしっかり伝えることができれば、競争力を保つことは可能です。逆に、日本がアメリカからの輸入品に関税をかけることになれば、クリスキングのようなブランドの価格が上がり、日本国内での需要にも影響を与えることになるでしょう。

インフラ整備と自転車の可能性

関税の問題と並行して、先に挙げたインフラ投資の動向も重要ではないでしょうか。アメリカでは、ポートランドのような中規模都市での自転車専用レーンの整備が進んでおり、日本の都市もこの動きに学ぶべき点が多いと感じます。特に、関西圏では大阪・関西万博を控え、都市の交通システムの見直しが進んでいます。ここに自転車インフラを組み込むことで、より持続可能な都市づくりが可能になるのではないでしょうか。ここはお膝元であるシマノ社が奮起し、しっかりと面倒を見てくれると信じております。

そして東京、大阪や京都では、すでに観光客向けレンタサイクルの普及が急激に拡大していますが、日常の移動手段としての自転車利用に対しては果たして十分にサポートがされているのでしょうか。実情は、自転車通勤禁止が当たり前に企業内で規則化されていたり、街中の駐輪場の整備不足などの問題も挙げられます。今後はいち早く自転車専用道路の整備の着工、公共交通機関とのスムースな連携によって自転車の再活用が進み、通勤・通学、日常の移動手段としてもより有効になるでしょう。こうした都市計画が進めば、日本国内での自転車市場も拡大し、関税の影響を受けにくい内需型のビジネスモデルの発生を促すことも可能ではないでしょうか。

球体の視点から

サークルズというか、私個人的な視点としてですが、自転車文化の発展が経済や政治政策の動きと密接に結びついていることを常に意識しています。関税が上がれば市場は変化しますし、インフラが整えば自転車の需要も変わります。こうした変化に対応しながら、より多くの人に「自転車がもたらす価値」を伝えていくことがわたしたち自転車人の役割だとも考えています。

今回の日米首脳会談が、すぐに自転車業界に大きな影響を与えるわけではありません。しかし、長期的に見れば、貿易や都市計画の変化が自転車の未来に関わってくるのは間違いないでしょう。今後も、自転車が都市インフラの一部として正しく認識してもらえるように、サークルズとしてできることを常々考えていきたいと思います。

それではまた来週お目にかかりたいと思います。

アバター画像

kyutai
田中 慎也

空転する思いと考えを自転出来るところまで押し上げてみた2006年。自転し始めたその空間は更なる求心力を持ちより多く、より高くへと僕を運んでいくのだろうか。多くの仲間に支えられ、助けられて回り続ける回転はローリングストーンズの様に生き長らえることができるのならば素直にとても嬉しいのです。既成概念をぶっ飛ばしてあなただけの自転力に置き換えてくれるのなら僕は何時でも一緒に漕ぎ進めていきたいと思っているのだから。
田中 慎也の記事一覧