この記事では、5月9日-10日に行う以下のイベントの主役である TOMII CYCLES のナオさんの工房を訪れた時の様子をお届けします。
Austin, Texas
今年の2月に訪れたアメリカ、テキサス州オースティンはもう夏だった。

気温は30度超えて、半袖が気持ちいい。その前の週にいたポートランドは冬だったから、体と脳が全然追いつかない。アメリカのデカさを感じる。
オースティンは3年前にTOMII CYCLESの富井ナオさんに「遊びに来てよ!」と言われてから、ずっと訪れたかった街だ。

SimWorksのThe Long Road South Tourでニューオーリンズ、オースティンでPOPUPを開催することになり、ついに念願のオースティンを訪れることになったのだ。5000km越えのロードトリップだったので、この話は別で書きたいのだけれど。

オースティンはほんとにいい街で、大好きになった。ナオさんに街を案内してもらったり、工房でいろんな話をさせてもらった。(オースティンの街案内は、また改めて書きます)

新潟出身のナオさんは、この街に住んで、ハンドメイドビルダーを生業としている。アーティスト・職人としてアメリカで飯食ってるのはほんとに尊敬する。

そんな彼のワークショップに訪問する機会があったので、あれこれ話しながら撮影しました。彼のバックグラウンドやインタビューと共に、工房の様子をお届けします。
Nao Tomii という人物
彼のキャリアはマサチューセッツ州、ボストンでファインアートを学ぶことから始まった。
その後、彫刻や立体造形の職につき、溶接を学ぶ先で自転車に出会って、バイクフレーム製造にたどり着く。

その時代や場所を知っている人ならピンとくるかもしれないが、マサチューセッツはMTB界の伝説的フレームの一つ、THE FAT CHANCEが生まれた場所。その土壌から様々なハンドメイドバイクブランドが生まれて行ったことで有名な場所である。

この地場が彼のバイクフレーム製造に大きく影響を与えている。元THE FAT CHANCEの卒業生たちにバイクの溶接技術を学んだそうだ。

「あの時は何人ものビルダーに教えてもらったよ。一人だけに学ぶってスタイルがあんまりピンとこなくて『あ、この人のここを学びたい』っていう部分を吸収していくスタイルだった。おかげで、色々な工房に行ったし、たくさんのことを学べたね」

この経験が彼のシグネイチャーモデルの名前を “Fat Canvas” って名付けた本当の理由なのかなって思ってる。(本人に確認してないけど)

「俺のパブリックイメージだと、ロードとグラベルバイクしか作らないって思われてる気がするんだけど、そんなことなくて、MTBだってなんだって作るんだけどね。でもFat Canvasをメインにしてるからなのかな」
彼のフレームの仕上がりは美しく、滑らかなバイクのフォルムを描き出す。

「やっぱ、如何に綺麗なラインを作ることにはこだわりはあるよね。スムースなラインをつくるために、Tigとロウ付けするバランスとかは、結構考えてる方だと思う」

「あんまり無駄なものは付けたくなくて。できるだけアイレットの数も減らしたいし。使わないものが付いてるって、美しくないでしょ?自分(乗り手)が必要な最小限の要素で構成した方が絶対美しくなるからさ」

この考え方が、彼のフレームビルドの肝になっている気がする。

構成要素を限りなく削ぎ落としたフレームだからこそ、彼の技巧がより際立つ。

「やらなくてもいいのかもしれないけど、やっちゃうんだよね笑 やりたくなっちゃう。これはもう自分の生き甲斐なのかもしれない。」

汎用の部品にさえ、手を加えるのがすごいところ。
「一人のお客さんにやって、別の人にやらないってことになると手を抜いているように思われちゃうでしょ?笑 それは嫌だから、全部やっちゃうんだよね」

この姿勢が彼を特異なフレームビルダーにしている要素である。

「でもさ、オースティンって、暑いでしょう?ずっとクリエイティブ系の仕事をやってるけど、本当は寒いところの方が向いてると思うんだよね。寒い方が頭が働くしさ。有名な大学とかも寒い地方にあることが多いじゃん?以前はボストンに住んでたけど、あそこは冬天気が悪いから家に籠るのがいいんだよね。だからすごい仕事が捗るんだ。」

確かにこの街は年中温暖だ。ナオさんの工房は自宅のガレージだけど、シャッターを開放して作業している。

「あと、こうも天気がいいと、遊んじゃうよね。年中毎日自転車乗れる環境だから、オースティンは。実際フレームビルダーも何人かいたけど、みんなほとんど辞めちゃうか引っ越しちゃったよね。」

とか言ってたけど、彼の “Build Fun Bikes” というスローガンはその環境から生まれている。

「やっぱ楽しみのために乗る乗り物を作ってるんだから、作ってる本人が楽しんでないとなって思ってる。だから、精神的なことかもしれないけど、ちゃんと自分が楽しんで自転車に乗ってるとか、遊び心をものづくりの中に入れたりさ、そういう部分がとても大事だし、それが自分の大切にしてるスタイルかもしれないね。」

この彼のスタイルが、個人的にかなり好みである。日本人的な美的感覚とアメリカ的な遊び心。そのフュージョンがTOMII CYCLEの好きなところだ。

「この場所と仕事はかなり厳しいのかもしれないけど、俺にはこの環境が合ってたな。めちゃくちゃクリエイティブにも影響を受けてる。サボテンやネイティブアメリカンのモチーフなんか、もろにサウスウエスト的でしょう?こんなにスタイルを変えさせられたテキサスには感謝したいし、だからこそ、ここでやり続けたいし、このモチーフをもっと深めたいと思ってる。」

フレームに限らず、スペーサー、トップキャップ、ベルなど、彼のこだわりの詰まり切ったスモールパーツは変態的に美しい(いい意味で)

ブラス(真鍮)から生み出されるそれらは、人の情熱と、遊び心をこんなに感じる製品はないし、もはやアートピースに近い。彼自身も “Bike Jewelry” と呼ぶこのスモールパーツ類は実物を見てもらったらわかるけど「モノ」としてバイクパーツとは思えない存在感がある。

そんなナオさんに、将来の夢を聞いてみた。
「死ぬ時に『やり切った!』って言いたいよね。フレームビルダーのまま死にたい。だって、フレームビルダーって大変じゃん?よくみんなに『大丈夫か?』って言われるもん。でもアメリカで、日本人の俺がフレームビルダーで成功したよって、死ぬ時に言えるのが自分の目標かな?」

こんな考えで、モノづくりをしている彼が、Circles Tailoredに来てくれます。
こんな人が作ったものが、Circles Tailoredで見られます。
Circlesでは、彼のカスタムフレームもオーダー受け付けていますので、ぜひ会って、話して、目で見て、触れてみてください。
POPUPイベントは5月9日(土)、10日(日)です。
【TOMII CYCLES POPUP】
日程:5月9日(土)、10日(日)
場所:Circles Tailored
時間:10:00~19:00
【Coffee Outside】
日程:5月10日(日)
場所:Circles Tailored集合
時間:9:00〜

ワークショップのその他様子はこのアルバムに入ってるので、ぜひみてみてください!