
人の欲望が尽きることはない。
ロード、マウンテン、グラベルと、おおよそ全てと言えるスポーツバイクに跨り、それぞれにフィットしたフィールドを走り回り、時にはその垣根を越えて、その時乗っていた自転車で突き進むことも厭わない。
そして、それらのバイクはクロモリであったり、チタンであったりと素材も様々です。
今は乗っていませんが、カーボンのロードバイクにも乗っていたことがあります。
そんな彼は一人旅も好きで、連休となれば自転車を持って様々な土地へ赴き、気になった道があればどんどんと走っていきます。
一人だからこそできる、そんな自由な走り方がつくづく好きなのだと思います。
とはいえ、一人で走ることばかりが好きなわけでもありません。
友人やその他の人たちと走りに行くこともとても好きで、時には自分よりもずっと速い人と一緒に走ることもあります。
そうすると、少なからず心の内には速さへの欲求も出てきます。
もちろんレースをしたいということではありませんし、とにかく速く走りたいというわけでもありません。
ただ、自分より速い人と一緒に走れば、もう少し速く走れたらなと思うのは自然なことだと思いますし、これだけ色々な自転車に乗ってきたからこそ、今までとは少し違う方向へ振った自転車に乗ってみたいという気持ちも出てきます。
自転車と向き合っている時間も長いので、次はどんなバイクに乗ってみたいのかなんてことを想像する機会も多い。
そんな中で、SEVEN以外のチタンバイクにも乗ってみたい。
これまでそこまで追求してこなかった機材も、最高のものを使用してみたい。
そして、せっかくロードバイクを作るのであれば、今までよりも少し「速く走る」というところにも目を向けてみたい。
そんな気持ちが高まってオーダーしたのがDESALVO CUSTOM CYCLESです。
オーナー自身で所持したことはなくとも、そのクロモリフレームには試乗したことがあり、とても好感触だった様子。
「良く走る!」
という印象を強く持っていたようです。
実際、素材も違えば今回作るものとは仕様も違うので、その時に乗った自転車と同じものになるわけではありません。
でも、次に乗ってみたいと思わせるには、それくらいの理由で十分だったりもします。
そして、このフレームをオーダーしたのが2025年のMADE前だったというのも、なんとも言えないタイミングでした。
実はその年のMADEでお披露目となったのが、DESALVO CUSTOM CYCLESとLAND SHARKによるコラボレーション、SWEDISH MEATBALL。
それ以前からDESALVOのフレームビルダーMikeと、LAND SHARKのフレームビルダーでありペインターのJohnの間ではそれらしい動きもあったのですが、ちゃんとひとつのプロジェクトとして動き始めたのがこのタイミングでした。
実は、このフレームは最初からSWEDISH MEATBALLとしてオーダーしたわけではありませんでした。
あくまでDESALVOのチタンロードとしてオーダーを進めていました。
そんな中、Mikeから「こんなスペシャルなペイントに興味があるなら、できるよ?」という話が舞い込んできて、「だったらお願いしちゃいましょうか!」という流れがありました。
これはもう、巡り合わせとしか言えません。
話を進めている途中でこういうことが起きて、当初想像していなかった方向へ進んでいくのも、カスタムバイクの面白いところなのだと思います。
そして出来上がったのが、この一台。
Circlesからのオーダーは初となる、SWEDISH MEATBALLです。


では、そもそもSWEDISH MEATBALLとは何なのでしょうか。
簡単に言ってしまえば、Mike DeSalvoがフレームを作り、LAND SHARKのJohn Slawtaがペイントをする。
所謂、二人のフレームビルダーによるコラボレーションなのですが、それだけだと少し説明が足りません。
LAND SHARKと聞いて、懐かしいと思う人もいるかもしれません。
John Slawtaが1980年代にスタートしたLAND SHARKは、スチールフレームを作り、そこにJohn自身が独創的なペイントを施すことで知られてきたブランドです。

とにかく派手という言葉だけでは少し違う気もしますが、一目見ればLAND SHARKだと分かるような、華やかで繊細な色使いやグラフィック。


なかなか出会う機会も少ないとは思いますが、前職のオーナーがスチールロードに乗っていたので、個人的には馴染み深かったりもします。
ただ、現在のLAND SHARKは少し違っていて、今もフレームビルダーとして自転車を作り続けていますが、LAND SHARKとして製作しているのはカーボンフレームで、それを自分でペイントしています。

一方のMike DeSalvoは、オレゴン州アシュランドに工房を構え、長年スチールやチタンのカスタムフレームを作り続けてきたビルダー。
ロード、グラベル、マウンテンと、ジャンルを問わず様々な自転車を手掛けており、その高い製作技術はもちろん、DESALVOのバイクは何より「良く走る」ということで評判が良い。
もちろん「良く走る」というのも随分と曖昧な言葉で、人によってその意味するところも違うのですが、実際に乗った人からそういう言葉が出てくることが多い。
今回のオーナーも、以前DESALVOのクロモリに試乗した時に感じたのが、まさにその「良く走る」という感覚でした。
そんなMikeがスチールやチタンでフレームを作り、そこにJohnがLAND SHARKとしてペイントをする。
それがSWEDISH MEATBALLです。

と言われても、まだ少しモヤモヤします。
いったいSWEDISH MEATBALLとはなんなのでしょう。
何か深い意味がありそうですが、そうでもないらしい。
二人でコラボレーションの名前を考えている中で、Johnから「Swedish Meatballsはどう?」という話が出て、二人で笑って、そのまま決まったそうです。
どうやらSwedish Meatballsはそのままの意味で、スウェーデン式のミートボール。
ミートボールにクリーミーなグレイビーソース、マッシュポテトに甘酸っぱいコケモモのジャムが添えられているものだそう。
そう聞くと食べてみたくもなってきますが、特に答えには近づいていない気がします。
もしかしたら2人の大好物なのでしょうか。
まあ、答えは出てきません。
ちなみに、ロゴに使われているフォントも左右で違います。


これも二人がどちらのフォントにするか決められなかったから、それなら両方使ってしまおう、となったものらしいです。
よく見ると、フォーク裏にも違うフォントのロゴがあしらわれています。
遊び心が満載です。
自転車そのものについては二人とも長いキャリアを持つ職人で、もちろん真剣に作っています。
そんな遊び心も含めてSWEDISH MEATBALLなのです。
そんな経緯でお願いすることになった今回のペイント。
こちらからの指定は一切していません。
色の指定や、柄の指定も。「こんな感じにしてほしい」という参考になるものを送ったわけでもありません。
全てお任せです。


カスタムバイクをオーダーする時には、フレームのジオメトリーから乗り方、パーツの色まで、細かいところをひとつひとつ決めていきます。
ただ、一番見た目を左右するであろうペイントだけ何も決めない。
少し変わった話でもありますが、SWEDISH MEATBALLをオーダーする際は、それが一番の答えです。
その一方で、パーツアッセンブルについては色々と考えました。
そもそも今回のバイクには、「これまでそこまで追求してこなかった機材も、最高のものを使ってみたい。」というリクエストがありました。


メインコンポーネントはSHIMANO DURA-ACE R9200 Di2。クランクは50-34T、カセットは11-34T。
速く走るためのロードバイクではありますが、速い人と走る時だけ乗る自転車にしたいわけではありません。
彼が普段するようなライドでも乗るし、一人で走ることもあります。
その辺りを考えて、この組み合わせに落ち着きました。



ヘッドセット、ボトムブラケット、前後ハブ、そしてシートポストクランプにはCHRIS KING。カラーはMidnightで揃えました。

ホイールはCHRIS KING R45DにASTRAL CYCLING Luna Carbon Rim。
完成されたカーボンホイールを選ぶという方法も当然ありましたが、ここは手組みにしました。

そしてステムにはSTEVE POTTS BICYCLESのTitanium Stem。
Mike DeSalvoが作ったチタンフレームに、Steve Pottsのチタンステムを。
そこにJohn Slawtaのペイントが入り、CHRIS KINGやASTRAL CYCLINGといったパーツがアッセンブルされます。

コンポーネントはSHIMANO、フォークやハンドル、シートポストにはENVEを選びました。
何かひとつのルールを決めて、それに沿って組み上げたというよりも、今回このバイクで使ってみたいものをひとつひとつ選んでいったら、結果としてこうなったという方が近いです。
そんな今回のアッセンブルがこちら。

BIKE SPECS
| PART | BRAND / MODEL |
|---|---|
| Frame | DESALVO Ti Disc Road |
| Fork | ENVE / Carbon Disc Road |
| Paint | LAND SHARK / John Slawta |
| Headset | CHRIS KING InSet 8 / Midnight |
| Handlebar | ENVE Road Compact Drop 42/44 |
| Stem | STEVE POTTS BICYCLES Titanium Stem 100mm / 7° |
| Seatpost | ENVE 2-Bolt Seatpost 27.2mm |
| Saddle | SELLE ITALIA SLR Advan L3 |
| Hub | CHRIS KING R45D Centerlock 24H / Midnight |
| Rim | ASTRAL CYCLING Luna Carbon 700C / 24H |
| Spoke | DT SWISS Competition Black |
| Tire | GOODYEAR Eagle F1 R Tubeless Complete |
| Crank | SHIMANO DURA-ACE FC-R9200 170mm / 50-34T |
| Bottom Bracket | CHRIS KING ThreadFit 24 Midnight |
| Component | SHIMANO DURA-ACE R9200 Di2 / Hydraulic Disc |
| Cassette | SHIMANO DURA-ACE CS-R9200 11-34T |
| Pedal | SHIMANO PD-R9100 |
こうして出来上がった一台を改めて見ていると、最初からここを目指していたわけではなかったというのが、なんだか面白いです。
ひとつ何かを求めたら、そこからまた次の何かが出てきて、気がつけばこうなっていました。
まあ、自転車に乗っていると、そんなことばかりなのかもしれません。
一人で知らない土地を走れば、また行ってみたい場所が出てくる。
誰かと走れば、もう少し速く走りたいと思う。
色々な自転車に乗れば、今度は違う素材の自転車にも乗ってみたくなる。
良いパーツを知れば、それも使ってみたくなる。
そうやって考えていくと、やっぱり人の欲望が尽きることはありません。
むしろ、それがなくなってしまったら少し寂しい気もします。
このSWEDISH MEATBALLに乗ったことで、また何か違う欲望が出てくるのかもしれません。
それが何なのかは、今のところ僕にも分かりません。
でも、きっとまた何か出てくるのだろうなと思っています。

ちなみに、サークルズでもこのスペシャルなSWEDISH MEATBALLプロジェクトのフレームをお願いしていますので乞うご期待ください。
もちろん、カスタムオーダーのご相談もCircles Tailoredで承っております。