
例年に比べて季節の進行がどんどん遅いような気がしますが、それでもちょっとずつ空気が澄んできて、秋を感じつつ、冬の足音が聞こえてきそうな気候になってきました。この季節の夕暮れのあのなんとも言えない綺麗な空のグラデーションってつい夢中になって見入ってしまいますよね。
そうそう、13日に地球に再接近した紫金山・アトラス彗星、運が良ければこの週末にかけて夕方の西の空で捉えることができるかもしれないので、みなさんぜひチェックしてみてください。名古屋はちょっと週末の天気が不安ですが、見れたらいいなぁ。
ということで、前回のRETROTECに引き続き、少し間が空いてしまいましたがMADEのバイクチェックとまいります。
リムブレーキグラベルバイク

サークルズでもすっかりお馴染みの WILDE / ワイルド も昨年同様ブースを構えていました。
マーケット全体を見渡せば、ディスクブレーキ / スルーアクスル / 電動コンポーネントといった機材の進化は凄まじいですが、そういった進化を追うことだけが全てじゃないというのは、サークルズが日々提案しているバイクもそうであるように、ここMADEの会場でもそういった意志を感じられるショーバイクが多かったように思います。
そんな中でも一際目立っていたと言えるのがこのWILDEの Sugar Foot / シュガーフット というモデル。ラグスタイルでリムブレーキ仕様のグラベルバイクというちょっと変わったバイク。

現在はRambler / Rambler SL / Supertramp といった台湾製プロダクションに対しても精力的にアプローチしているWILDEですが、そもそものスタートは、オーナーのジェフのコンセプトをローカルビルダー(今はなきウィスコンシン州のWaterford Precision Cycles)のもとで具現化するという形で始まったブランドです。
そんなWILDE、実は今年早々にWILDEの新しいワークショップをミネアポリスに構え、上述のEarthshipを作っていたWaterfordに在籍していたブラッドを専属のフレームビルダーとして迎えたのですが、これにより、USA製のプロダクションモデルは全てインハウスでの製造が可能になり、このSugar Footも新しいワークショップでハンドビルドされたのでした。
懐古的だけど、先進的





フレームはコロンバスのチューブをメインチュービングとしており、なんといっても目を惹くのは、PACENTI / パセンティ のオリジナルクラウン、そしてRICHARD SACHS / リチャードザックス のラグを用いたクラシックなフレームディテール。






アッセンブルするパーツも初代XTRトリプルコンポとカンチブレーキそしてバーエンドシフターと、このあたりは自他共に認める業界屈指のバイクギークなジェフらしさが詰まったアッセンブル。
見た目はクラシックさ全開なんですが、その実バイクはかなりアグレッシブなグラベルレーサージオメトリーになっており、タイヤ最大でフロントが27.5×2.4″、リアが27.5×2.2″を呑み込むモダングラベルバイクに引けをとらない仕様。
クラシックなスタイルは大事にしたいけど、だからといって走りの質を落としたくはない。ラックを取り付けてランドナースタイルとするのではなく、ハンドルバーバッグやフレームバッグと最低限の荷物だけ携えて、純粋にライドを楽しむことができるのがこのSugar Footです。
スレッドタイプのヘッドセットの新しい選択肢


実はこのバイクに装着されている1インチのヘッドセット、WILDEが現在新しく開発を進めているものなんです。
スレッド式のヘッドセットで末長く使い続けることを考えると、やはりCHRIS KINGがその候補に上がってくると思うのですが、現在CHRIS KINGが1インチで展開しているのは GripNut と呼ばれるタイプのみで、その昔は2Nutと言われるモデルもラインナップされており、それぞれに特徴があるのですが、ヘッドスペーサーやケーブルハンガーを取り付けたい場合には後者が必要になってきます。
しかし2Nutがディスコンとなってしまった現在、ガタの出にくい高性能なヘッドセットでその要求を満たすものがないと感じていたジェフは、CANE CREEKとタッグを組んで、オリジナルのヘッドセットを作ったんです。
こういった小回りが効かせられるのはWILDEの強みであり、バイクギークなジェフだからこそ、流行り廃り関係なく必要だと思うものを作りきってしまうこの姿勢にあっぱれですね。

CANE CREEKのフラッグシップモデルである110シリーズをベースにしたWILDE完全オリジナルのヘッドセット。こちらは近々日本にも入荷してくる予定なので楽しみにしていてください。





他のディテールをじっくり見ると、ジェフの秘蔵パーツをふんだんに使いながら、SimWorks by NISSENのケーブルや、SimWorks by HOSHIの真鍮ニップルといったスモールパーツも取り入れてくれています。

クラシックスタイルを踏襲しながらも、ちゃんと走って楽しめるバイクっていうのが、ジェフらしい味付けのバイク。こちらは今年の冬から来年の春にかけてバッチ生産の予定で、日本への入荷予定はありませんが、気になる方はお手伝いできますのでお気軽にお問い合わせください。
ちなみにまだ少し先の話ですが、WILDEは台湾プロダクションでも色々と新しい計画を目論んでいるので、これからも目が離せませんよ!