【BIKE of the WEEK】SEVEN CYCLES Mantaray SL

今一番乗りたい自転車は？と聞かれたら、僕は迷わずSEVEN CYCLESと答えるだろう。そのくらい大きなインパクトがこの自転車にはあった。

Circles Tokyoの展示車の中でも独特な鈍い光を伴って、一際存在感を放ち鎮座している車体が印象に残っている方も多いであろう。

自転車はもちろん、車も含めて多種多様な乗り物を経験したまさに「物」好きなオーナーの琴線に触れたのは、MantarayのフルカスタムフレームであるMantaray SLだった。

SEVEN CYCLESの技術が詰まったフレーム

耐食性に優れる素材だからこそできる無塗装が何よりのチタンの証。SEVENでは3%のアルミニウム、2.5%のバナジウム、そして94.5%のピュアチタンで構成される3-2.5チタンチューブ、とりわけその中でもエアロスペースグレードのチューブが用いられている。

SLグレードに関しては、このチタンチューブをさらにオーダー内容やライダーの体型に合わせてアウトバテットを施したのちに溶接される。

加工が難しいチタンでこんなフレームを作れるの？という形のMantarayだが、SLグレードになるとオーナーの希望を叶えるためリア三角の造形はさらに複雑さを増す。ドライブサイドとブレーキサイドでアシンメトリーとなる造形は、タイヤやチェーンリングのクリアランスはもちろん、ディスクブレーキによってフレームにかかる力まで計算された上で最適化されたチュービングで、その曲げの美しさは工芸品と言っても大袈裟ではない。

さらに驚きなのがその精度。手が止まることなくパーツがフレームに取り付けられ、拍子抜けするほどスムーズにアッセンブルが完了する。多くのパイプが集まり溶接の熱によってどうしても歪みが発生するBB部分だが、SEVENはBBシェルの溶接をしたあとにBBスレッドを削り出すので、下処理の必要がないと思うほど手でスルスルと入っていく。そしてそれによるクランクの収まりの良さと回転の滑らかさのおかげでフレームの歪みがないことを実感する。

CHRIS KING GRD23 Splashを中心に据えたアッセンブル

一昨年のMADE SHOWでCHRIS KINGから発表され、世界限定50セットのGRD23 Splash setがハブを始め心臓部たるベアリング部分にインストール。鈍く光るチタンの無機質さにマットブロンズと飛び散るターコイズのスプラッシュといった躍動感のある有機物的な要素が入ることで輝きが増す。

Mantarayの設計思想である高剛性でスピードが出せる、かつスムーズで乗り心地が良いといった特徴に、GRD23の乗り心地のしなやかさはこれ以上ない組み合わせでは無いだろうか。

ドライブトレインも抜かりは無い。恐らく国内初となるUDH仕様のドロップアウトを備えたSEVENのフレームに収められるのは、SRAM Red XPLR AXSでついに登場した13速。チェックで試乗した際は短い時間ではあったものの、一体成形されたスプロケットの剛性の高さを感じた。

しかし何よりも驚いたのはその変速スピード。私自身も1世代前のForce eTapを使っているが、新型は変速ボタンを押して離す頃には変速が完了しているというような感覚。Mantarayの加速感を邪魔することなくパシっとスムーズに行われる変速は踏むのをやめることをゆるさないと言われているようだ。UDHならではのディレイラーハンガー周辺の剛性も、ソリッドなシフト感覚に確実に一役買っているだろう。

またスプロケとディレイラーとの位置関係がバイクを問わずに一定な設計となっており変速調整が不要なことも大きな特徴だ。

クランクはフレームと同じ3-2.5チタンで作られているCANE CREEKのee Wing。軽さと耐久性のバランスを重視したチョイス。CHRIS KING Splash Setに合わせて有機物的な座面とカーボンレールを持つBROOKS C13とENVEのカーボンシートポストを組み合わせている。

コックピット周りはTHOMSONで組み合わせ、レーシングバイクというよりも、普段使いの延長にあるファンライドのためのバイクというメッセージが伝わってくる贅沢なアッセンブルとなっている。

日常使いからヒルクライムレース、はたまたParis-Brest-Parisまで自転車の使い方は十人十色。カスタムハンドメイドバイクはその微妙なニュアンスまで聞き取り形にしてくれる最高のプロダクトではないだろうか？とりわけSEVEN CYCLESはその圧倒的なチタンの加工技術と精度をもとに、必ず理想のバイクを形にしてくれることは間違いない。しかもどれも一生物というおまけ付きである。

ご興味のある方は、ぜひあなたの最高のライド体験談と一緒にお気軽にご相談ください。