
自転車のパーツたちを見渡してみると、不思議なことに気づきませんか?
フレームの形はどんなジャンルであっても、だいたい三角形に落ち着いています。
ホイールはやっぱり丸いし、ペダルは踏むやすい形状、サドルも「座る」という役割から大きく外れることはありません。
ですが、ハンドルバーだけはどうでしょうか?
真っ直ぐなもの、
手前に小さく曲がったもの、大きく曲がったもの、
下に垂れたもの、上に上がるもの、左右に大きく広がったもの。
角度も、幅も、持つ位置も、驚くほどに多様です。
なぜ、ハンドルだけがこんなにも自由設計なのでしょうか。

人間は、同じ形をしていない
その答えは、とてもシンプルなところにあるのだと僕は思っています。
それは人間の身体は、ひとつとして同じではないからです。
身長や体重だけでなく、
肩幅、腕の長さ、
手首の可動域、背骨の柔らかさ。
前屈が得意な人もいれば、首を起こした姿勢が楽な人もいます。
たとえ同じ体格に見えても、
「楽だと感じる姿勢」は、ほとんど一致しません。
もし人間の身体が規格品だったなら、ハンドルバーも一本で済んでいたはずです。

ハンドルは、自転車を操るためだけじゃない
ハンドルバーは、ただ自転車を左右に操作するためのレバーではありません。自転車に乗っている時間の中でもっとも長く、もっとも直接的に身体と触れている場所です。
足はペダルを回し、目は前を見て、体はバランスを取る。

そのすべてをつなぐ“接点”が、ハンドルということなのです。
だからほんの数ミリの角度やわずかな曲がり、数センチの幅の違いが驚くほど大きな「快・不快」を生みます。
ハンドルバーの形は、操作性よりも先に、乗り心地のために進化してきたのだと僕は思います。


使い方が違えば、身体の使い方も変わる
速く走りたい人と、長く走りたい人。
荷物を運びたい人と、街を流したい人。
当然、身体の使い方は変わります。

前傾姿勢で空気抵抗を減らしたり、長時間走るなら複数の握り位置があるドロップハンドルだし、安定感を重視するなら幅のあるフラットバーがおすすめです。
景色を楽しみたいなら、自然と視線が上がるようなシェープを持ったプロムナードバー。
ハンドルの曲がりとは、「どんな走りをしたいか」という個人の意思表現だとも言えるかもしれません。


曲がりは、失敗の痕跡でもある
ここで、少し視点を変えてみます。
もし完璧なハンドルバーのスタイルが最初から存在していたら、これほど種類が増えることはなかったはずです。

手首が痛くなった。
肩が凝った。
長距離がつらかった。
思ったより力が入らなかった。
そうした「合わなかった」という経験が、
少しずつ形を変え、角度を変え、新しいハンドルシェープを生み出してきました。

つまりハンドルバーは、成功例の集合ではなく、
失敗を修正し続けてきた歴史なのです。


だから「正解」は存在しない
店頭で、よく聞かれる質問があります。
「どのハンドルが一番いいですか?」
正直に言うと、その問いに、ひとつの正解はありません。

あるのは、
今の身体。
今の使い方。
今の生活。
それに対して、
“今ちょうどいい”形があるだけなのです。
そしてその「ちょうどよさ」は、時間とともに、必ず変わっていきます。

だから、僕らはこんなにハンドルを並べている
ハンドルバーは自転車のパーツの中で、いちばん人間に近くいちばん移ろいやすい存在です。


迷うのは、悪いことではありません。
むしろ、それだけ自分のことやバイクのことをちゃんと考えているということだと思います。
だからこそ、サークルズではたくさんの形のハンドルを店に並べています。
曲がりの違いは、個性の違い。
選ぶという行為そのものが、自分の乗り方を見つけるプロセスなのだと思います。

自転車は、走る道具である前に、付き合い続ける道具です。
その最前線にあるハンドルバーが、これほど自由である理由はやっぱり人間が自由だからなのかもしれませんね。
ぜひ店頭の壁いっぱいに並べられた中からあなたが「心地よい」と思えるピッタリのハンドルを見つけてみませんか?
いつでも皆様からのお悩み、ご相談をお待ちしています。
