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BIKE to あばれ祭り

#BIKEto祭 として全国あちこちの祭へライドして観に行く事が多いのだけれど、どこにどんな祭りがあるのか体系的に調べないようにしている。ニュースや新聞で目に飛び込んできたり、人づてに見聞きして、面白そう!って思ったものをカレンダーにメモする。よく分からないものに出会ったり発見したりするのが楽しいのだ。

そんなメモを続けていると、なんかこの辺にやばい祭り多くないか?ってエリアが見えてくる事がある。その一つが能登半島。

7月5-6日開催とメモした「あばれ祭り」をググってみたところ、今年も開催するために準備中とあって目を疑った。能登地震で大きな被害が出ている地域だからだ。

おそらくそれどころではない状況なのは想像に難くない。それでも開催するというなら何としても観たい。祭りは心意気だ。
能登半島の復興のためにできるのは、まず邪魔しない範囲で現地まで行く事だと考え、ライドの計画を立て始めた。


富山県側の能登半島の付け根である高岡からライドをスタート。走り出してすぐ、道路のヒビや段差、家に貼られた「危険」の張り紙が、普通の風景にグリッジのように差し込まれてくる違和感に気づく。

海沿いを北上していくとだんだんその歪みが大きくなり始めた。道路の継ぎ目には全て新しいアスファルトが敷かれていて、段差ができた事を物語っていた。走行に支障はなかったけれど、建物の方はまだ手付かずのところが多くみられた。同じ地域でもカーブひとつ曲がると全ての建物が倒壊している場所などがあり、地盤の性質によってかなり揺れ方が違うんだろうなと想像できた。


能登半島を走っていて凄く印象的だったのは、ハウスメーカーの建売の住宅がほとんど無かった事。黒い「能登瓦」の屋根、下見板張りの壁、白い漆喰の民家が並ぶ景色は、統一感があってとても美しい。同じデザインではなく、ディティールに差異があり、使い方に合わせて個別に建てられている。石山修武が伊豆で再現したかった景色や、司馬遼太郎が絶賛した湖東の街並みが、ここ能登の集落では当たり前のように存在していた。輪島の方の街は文化遺産になっているそうな。

その美しい風景も、震災で多くの屋根にビニールシートがかかり、瓦が落ちたり、家々が倒壊していた。能登瓦の重さのせいで倒壊したとして地元の瓦屋が後悔を滲ませるような記事を読んで胸が痛んだ。命と財産に関わるので軽率な事は言えないけれど、この素晴らしい家並みが失われるのは本当に惜しい。なんとかならないもだろうか…


海沿いを走り、適当な公園(空き地?)で野宿をしながら北上する。和倉温泉の総湯も営業していたし、宇出津の銭湯も特別営業していて有り難かった。

目指すのは能登町の宇出津(うしつ)で開催される「あばれ祭り」。イカ釣り漁船などが並ぶ漁港の街に入ると、港湾エリアの道路は液状化現象で大きくうねり、堤防は割れて海水が入ってきていた。建物の被害は他の地区よりましに見えるけれど、壁や屋根が剥がれたり傾いたりして廃屋になっている建物も目立っていた。

しかし、すでに始まっている祭で街は活気いっぱい。太鼓と笛の音があちこちから聞こえてきた。

能登半島にはキリコという灯籠を担ぐ祭が200近くもあるとされている。あばれ祭りが特徴的なのは、それにプラスして、神輿を投げたりぶつけたり焼いたりして破壊しながら神社に奉納する行事があること。もともとは疫病が流行った時に京都八坂神社から破天荒な牛頭天王を勧請したことから始まったとか。困難に打ち勝つための祭りという事では現在にもその想いが引き継がれているように思う。

印象的だったのは、街の規模に対して地元の人たちの参加が相当に多かった事。担ぎ手が数十人に及ぶキリコだけでも40近くが出ていて、地方のいち港町のレベルではないほど大規模だった。当然熱量も高い。

それぞれ担ぎ方にもスタイルがあり、タバコやお酒を片手に担ぐ人もいれば、ずっと全力で担ぎ続けてコブができてる人もいる。この地域の人々にとって祭りが社会と身体に組み込まれている感じが強烈だった。みんなめちゃくちゃかっこいい。

キリコとは別に奉納される2つの神輿を担ぐことができるのは十数人の選抜されたメンバーであり、直前にそれを決めるのは各神輿のリーダーのようだ。俺を選んでくれ!という若手の直訴もアツかった。最近はこういうガチ体育会的な縦割りは忌み嫌われるけれど、全ての社会が洗練された都会的感覚に染まる必要は無いと思う。

トランス状態になって痛みや熱さをもろともせずに神輿を運び、破壊する渡御は本当に凄かった。観てるこっちが先に挫けそうになる。

https://www.instagram.com/p/C9fGF8AyCdr/

今回は宿代を節約する代わりに食費はケチらないようにと思って大体寿司と刺身ばっかり食べていた。特にアオリイカの沖漬けが美味しかったなあと思って走っていると巨大なイカに出くわした。

その先の恋路ヶ浜、珠洲市辺りはさらに震災の影響が大きかった。東日本の時は発生から2ヶ月後に現地に入ったけれど、その時はもうかなりの数のボランティアが瓦礫の撤去を進めていたのだが、ここは半年以上経ってもまだほとんど手付かずである。

珠洲から輪島の方へ行ってみようとペダルを漕いだけれども、どのルートも途中で崩落していて通行止め。道路は復旧しているだろうと楽観してたけど甘くなかった。現地にもそんな案内を出している余裕もなさそうなので、国交省のHPでチェックする必要がある。

気温35℃。強烈な向かい風の中で数十km走ってきたけど、目の前の崖が大規模に崩落して道がなくなっている場所でしばし立ちすくみ、来た道を引き返したのだった。

寄付させていただいた、あばれ祭りの鳥居再生クラウドファンディングからのお知らせでシェアされていた動画も素晴らしかったのでぜひ観てください。


あばれ祭り公式HP
https://abarematsuri.jp/


TODAY’S RIDER

Monjya

BIKE
FrameZUNOWZ-1
TireSimWorks by PanaracerVolummy Tire
Touring BagPorcelain RocketEl Gilberto / ALBERT / Nigel
 WEAR
Pants山と道5-POCKETS SHORTS
Rain Wear山と道UL All-weather Hoody
Topsmonokusaracingmonokusa tanktop
CapWelldoneJet Cap
ShoesQUOCNight
SandalBedrock SandalsCairn Pro II
 CAMP
TentOutdoor ResearchHelium Bivy
Pad山と道Minimalist Pad (5mm)
Sleeping goodsNangaMINIMARHYTHM

ライド装備についてのメモ

1日約100km/ほぼオンロード走行で2泊3日のキャンプ泊。天気予報は雨か曇り、気温18-35℃を想定。

観たいところが多く、距離を走りたい場合はやはりULのバイクパッキング装備が役に立つ。荷物は全部自転車に積み、身体にはカメラと補給食や貴重品のみにすると肉体的疲労も少ない。

梅雨でにわか雨の可能性も高かったけど、防水のサドル&フロントバッグはカメラの避難先としても重宝する。Porcelain Rocketはバイクパッキングのスタイルを確立したブランドでもはや伝説的だけれど、何とか復活してくれないだろうか…

ウェアはいつもの夏ライドスタイル。山と道の5-Pocket Shortsは本当にライドに最適。タンクトップは肩のストレスがなくて通気性が良く、荷物としても軽量で小さい。これも自転車乗りにもっと使われるべき。ウェルダンのツバが長いキャップも日焼けや雨水対策になって良い。長距離乗るためにソールが柔らかめのQUOC Nightと、歩く時のBedrockは今回のように走って歩く場合には必須である。

キャンプというか、ほぼ野宿的な宿泊装備。キャンプ場の情報が少なく、走る距離も不明なために野宿スタイルがちょうど良かった。快適とまではいかないけれど寝るには十分である。