実家は青森で津軽海峡に面した海岸線沿いに家があり、扉を開けばそこは海だ。
決して綺麗な海岸ではなかったし、どこかしこから流れ着くゴミが結構たくさんあるような場所だった。僕がまだ中学生の時、突然祖父が奮い立ちゴミを集めては燃やすということの繰り返しをし始めた。記憶が曖昧だけど2年はほぼ毎日のようにそれを繰り返していた。気づけば海岸はきれいな砂浜へと変わり、ある日知らない家族がその砂浜でバーベーキューをしているのを見てとても感動したことを覚えている。最後まで海のゴミのことを気にかけていた。
全く泳げない僕としては、今は山で自転車で遊ぶ方が好きなのだけど間違いなく「海」での生活の方が体には馴染んでいる。
実家は下宿屋を営んでいる。高校生の下宿生を受け入れ、毎日朝晩と10人前後の食事を作っている家族を見て育った環境だった。それは今でも続いている。
海辺に暮らし、たくさんの家族と過ごす日々は青森を離れた今でもとても貴重な時間だったと思い起こすことは少なくない。
今では海岸沿いも整備され、すべてコンクリートで埋められてしまったが、帰るたびにのんびり海辺を眺めているのが好きだ。
前置きは長くなったがそんな「水辺」と「食」と「自転車」がテーマとなった静岡編のRIDEALIVEだから僕は一層やる気になった。
「水辺の夏休み」には美味しいご飯が一番大事だ。自転車に乗ることも大好きであるが、それと同じくらいご飯を作って振る舞うのも大好きだ。自転車に跨りはしなかったが、僕なりの「RAL」な2日間をまとめてみた。
自転車に一生懸命乗って一夏のチャレンジをしてきたみんながお腹いっぱいになるようにたらふくご飯を用意してあげるのが僕の使命だ。
浜名湖一周、SUPやカヌーのアクティビティからのライド、新城からの峠を越えてきてのライド。3つのコースに分かれたおよそ35人ほどのライダーたちの思い出の食事にするために準備は入念だ。
お店からそのままキッチンを持って行き、アーリーバーズさながらの現場を作った。
気温も35度前後と猛暑日なった1日。食材への配慮をしっかりしながら、みんなが集まってくる時間までしっかり準備をした。
お皿はアーリーバーズで普段使っているカラフルなお皿を持って行き、取り皿となるお皿は「TOKONAME STORE」さんにご協力頂き、テーブルを彩るお花はもちろん「アトリエみちくさ」さんにお願いをした。
外での食事にだって、僕らなりのこだわりを詰め込んだ。
ライドをしているみんなを待つ間も僕らも遊ぶことに専念をした。今回のキャンプ場「タリカーナ」は浜名湖畔に位置する村櫛町に2017年春に開設したばかりのまだ新しい場所。オーナーであるシンさんが一年ほどをけてほぼ一人でじっくりとこだわって作ってきた場所だ。シャワー室を作ったり、コンテナを改造してBARにしたり、電気も自分で引っ張ってきたり、とにかくほぼ自分でやっている。その一つ一つの作業を聞くだけでも、どれだけ愛情を持ってこの場所を作ったかを知ることができるし、すぐに大好きになった。
この日だけに設置した飛び込み台は最高の遊び道具だった。そこで何度も水の中へ飛び込んだ。
浜名湖は湖といえども、ほぼ海水であり塩分が効いている。何年ぶりかの海水を味わったことで、昔実家の裏の海に潜ったりしたことがフラッシュバックした。嗅覚や味覚で「あの頃」を思い出させる感覚って結構好きだ。
ライドからゴールしてきたみんなも日焼けして火照った体を冷ますためにどんどん飛び込んでいった。その光景はとっても夏だった。
そして僕は夜ご飯の準備だ。
目一杯遊んできて、お腹を空いているみんながまだかまだかと乾杯の時を待つ。準備が着々と進み、料理がある程度出揃い、この1日をみんなで称え合い乾杯した。
色とりどりのお皿に盛り付けられたお料理は瞬く間に無くなっていき、次の料理もどんどん出していった。
「おいしい」という言葉だけはどんなに騒がしくても耳の中に飛び込んでくる。その度に僕は嬉しくなり、次の料理にも力が入った。この感覚がめちゃくちゃ楽しい。だからやめられなくなるんだと常々思う。
「もうお腹いっぱいだ」という言葉も聞こえ始め、ホッと一息つきみんなと改めて乾杯した。名古屋近郊、浜松近郊から集まってきた参加者達も少しづつ打ち解けあい次の日のライドの話や、地元の話、オススメのライドスポットなんかの会話が聞こえる。焚き火を囲み、少しだけ花火をして、また海に飛び込むやつがいたりとまさに「水辺の夏休み」の夜だった。
夜も更けていくと各自テントへ潜り込み夢の中へ消えていった。
寝たら朝はすぐに来る。蒸し暑く決して寝心地の良い夜ではなかったがみんな目覚めは良さそうだった。テントを片付けたり、歯磨きをしたり、朝6時にはほとんどが起き上がってきた。僕らもコーヒーの準備を進めた。ガレージコーヒーカンパニーのあきよし君がホンジュラスに実際行った時に出会ったコーヒー豆を焙煎してくれた。それをアリバのあっちゃんと西パンが美味しく丁寧に抽出した。
朝ごはんは「ホットサンド」だ。ホットサンドってのはとても不思議で、何を挟んで食べても何だかだいたい美味い。それに我らがPINE FIELDS MARKET特製の食パンを使うんだから美味しいに拍車がかかる。
僕は夜ご飯の準備に夢中で、具材を持ってくるのをすっかり忘れていた。なのでみんなから具材を少しづつおすそ分けしてもらいながらオリジナルを作った。これはこれで楽しかったし、むしろ忘れて良かったとさえ思ってしまった。笑
肉じゃが、グリーンカレー、ハム、チーズ、コンビーフとかちょっとづつ。普段料理をやらない人だったこれなら簡単に作れるし、ホットサンドって誰でも楽しめて素晴らしい。店でもメニューにしたいなって思った。
お腹いっぱいに食べたら、みんなはまた冒険に出発していった。夜の集合場所「naru蕎麦」へしばしのお別れ。またたくさんの出会いや発見を探しにみんながワクワクした顔で出発する光景はとてもキラキラしていた。
浜松駅からほど近いところにある名店「naru蕎麦」。今回にイベントを浜松でやると決めた瞬間に決めていた場所であり、僕自身の憧れの素晴らしいお店だ。店主のゴリさんを始めたくさんのスタッフの協力のもと貸切として利用できたことで、すでに2日間の良いフィナーレのイメージは出来上がっていた。間違いなく浜松のこれまでも、これからもフードカルチャーの発信地だし、本物な場所だ。
お店のどこを切り取っても店主ゴリさんのこだわりが詰まっていてかっこいい。この日のために準備してくれたお料理が何より圧巻だったのは写真を見てのとおりだ。お料理の並べ方や見せ方、そして味はもう本当に格別だ。
最後は打ちたての蕎麦を名物の胡桃だれですすって食べる。これが本当に絶品だからまだ未経験の人は急いで行った方がいい。
ゴリさんや奥さん、スタッフの気配りや楽しませてくれようとしてれくる姿勢に感動しながらひたすら食べた。
そして2日間の冒険を終えた参加者はみんな打ち解けあっていた。名古屋近郊の人はまた必ず浜松に遊びに来たいって言ってくれたし、浜松近郊の人もまた同じように名古屋に遊びに行くって言ってくれた。そういう声が聞けた僕たちは本当に嬉しい気持ちになった。今回のRIDEALIVE静岡編の大事なテーマはまさにそこにあった。自転車を通じて人と出会ったり、面白いところに行けたりなど「目的」を果たすための「手段」でありたいと4人がそう思っていた。自転車で2日間の旅に出ることはまさにこうしてたくさんの人や町や店に出会い、面白い事ができる手段であると思う。
人生を豊かにするための道具である「自転車」をたくさんの人に伝えるような仕事を選んだ僕ら4人はとても達成感に包まれ、たくさんの人の笑顔の中で夢のような2日間を送ることができて幸せでした。それは参加者のみんなも同じだったはずだ。
僕が小さい頃から慣れ親しんだ海辺での暮らしと浜名湖でのこの景色になんだかとてもシンクロし、とても郷愁的な気持ちになった。小さい頃に感じたあの夏の思い出が蘇るようななんだかとても懐かしい2日間だった。今回は自転車に乗らずに、参加者のみんなの食のサポートとして携わらせて頂きました。自転車という一つの道具を通して素晴らしい空間を共に過ごせることは本当に貴重な経験だった。次来る時は自転車に乗って僕もみんなと同じようにこの街を颯爽と走りたい。
その時はまた新たな素敵なヒトと場所に出会えるような気がする。
僕らのまだ知らない浜松の良さがたくさんある。
すべての関係者各位、スタッフのみんな、参加者の皆様本当にありがとうございました。
また遊びましょう。
TODAY’S RIDER
ゆーた
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TEXT by 大平恵太 / PHOTO by 田中江理 / 加茂響