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2024 MADE Bike Show / 旅を終えて

8/22 ポートランド、オレゴン 晴れ。日本からやってきたわたしたちにとっては、快晴ながら少し肌寒さもある、ノースウエストっぽい気候の中、去年に引き続き MADE に出展者として、また昨今のアメリカ市場の動向を観測するために Circles / SimWorks チームとして今年も5名でポートランドにやってきた。いや、実際には Circles Tokyo クルーも含めての7名。

先陣の池山はわたしたちよりも2日早く現地に入り、MADE の SimWorks ブースに展示するためのバイクの組み付けを開始していた。今年は昨年得た手ごたえを胸に、満を持して昨年の倍になる区画/ブースを得て、合計で4台の自転車と、MADE に合わせて用意した新製品や特別企画品なども含めたラインナップを展示する大掛かりな出展ブースを企画していた。

MADEには残念ながら参加できなかったChris King御大ですが、前日の業界パーティーでは久しぶりにその顔を見せてくれ、今秋発売予定のSimWorks Coffee Collectionに興味を持ってくれ、手渡すことができたのは今回の旅での素敵な思い出の一つ。

加えて、今年の秋には SimWorks USA の新たな挑戦として、アメリカ ポートランドにあるクリスキング社自社工場内にお借りしている敷地面積を増やし、SimWorks USA のショールームを開設、稼働するため準備までもが含まれていた。

一言で言うとカオス、短期間にやる事が多すぎる。 でもやるしかない。今までも、そしてこれからもこの調子でやっていくしかないとわたしは分かっていた。

神は細部に宿ると信じているが、この一枚にはとにかく情報が多すぎて笑えるのはわたしだけか?

とにかくまずは頭の中で状況を整理整頓、現在を大まかに把握し、質問と会話を繰り返す、これしか方法は無いのだから。 ブース管理担当は現地に駐在する澤田が常時、各地で行なっているポップアップを基礎に、大きなったブースエリアを彼女なりに考えた、日本的かつポップな要素を組み込んだユニークなブースが出来上がり、終始多くのサイクリストが滞留していてくれたのは成功と言えるだろう。

なんとか上手くまとまったのだけども、やっぱり限度が必要、詰め込み過ぎは注意!

現在のアメリカは長期に渡る好景気下にあるのは皆さんもご存知の通り。実際にポートランドの街を歩き、眺めると、新車の大型ピックアップトラック、最新の電気自動車、そしてマンションの建築が今まで以上に見る事ができる。 少し悲観的な話になるが、ということはわたしたちが存在している自転車コミュニティにとってはあまり芳しくはない状況が長期に渡って続いているということを理解しなければいけないのだけども。 

今回の旅でお気に入りした、サンドイッチ店 CHEESE MEAT BREAD、アメリカのサンドイッチの深さは底知れない。

そのような状況を知りつつ、わたしは今回の旅の中で多くの人たちと様々なテーマについて、業界について、社会について、エレクションについて、遊びについてなどの会話した。

自転車業界内といっても、それぞれの立場の異なる人たちが、どのように今の現状を捉えて、そして未来を見つめているかを聞く絶好のチャンスなので、ましてや今回の MADE では、フレームビルダーだけではなく、数多くのコンポーネントメーカーの参加もあり、SimWorks とは製造する内容、モノは違えども、サードパーティーであることに違いはないので、今の状況をどのように捉えているのかなどを、参考的にみんなに聞いておきたい気持ちがあったのだった。

左のレトロテックは見た瞬間泣けた。なぜって? ラックはリック製、レトロテックとハンターのコラボっていうのもあるけど、リックらしい感性のラックたちはやっぱ流石だなって思う。

多くのフレームビルダーは MADE でのプレゼンテーションに熱い思いを抱き、会場での受注にまでは至らなくとも、未来のための投資と、そして何よりも横のつながりを求めに来ていることはその会話の節々に見え隠れする。そして、製造時における技術的な問題の解決や、同じ種族の仲間同士での相談が各所で繰り広げられているのも、少し小耳に挟むだけでもやっぱり面白い。どうしても手作りの製品であるがゆえ、その完成までに時間がかかってしまうために、大きなブースを2年に1度みたいなフレームビルダーも今後は多くなってきそうな感じもした。

今回はシマノ、カンパ、スラムの3大コンポーネントグループカンパニーの参加もあり、特にシマノブースでは無料のコーヒーを朝から提供してくれると言ったコミュニティサービスもあった。そしてそのコーヒーは旧友が経営するELEVETOR COFFEE、すべてが繋がっている感じ。

わたしが自転車を本気で始めた時、アメリカで最初に手に入れた自転車は何度も過去のブログで伝えているように、シュイン製のポリッシュ仕上げがとても素敵な、完成車のMTBだったのだけども、それ以降の個人史で完成車をそもそも手に入れようと思ったことは、その最初の一回のみ、(たまにディスカウントされる完成車体をパーツ取り用としてちょくちょく買ってはいた)そのほとんどの時間を、自分の頭で考え、パーツ構成をした、いわゆる0組車体というものに跨っていた。 簡単に言ってしまえば、若かりし田中は天の邪鬼に度がすぎて、人とは違うものに全速力で憧れていたのだろう。

しかしながらこれが功を奏し、自転車を深く知るためにおける必要不可欠な考え方、そのロジックを割と早い段階で知ることになったのだった。 加えて、誰の手でどのようにそもそもの核となるフレームと言われるパーツを作ってもらうのか、これは極めて重要な質問になり、それが SimWorks の根源にもなっているし、究極的には決して変わらないわたしの哲学にもなっているのは事実である。

今年のSimWorksリミテッドエディションカラー、シャンパンゴールドもおかげさまで発売と同時に完売、皆様ありがとうございました。

話は戻るが MADE にはそのような、わたしと同じ考えをいろいろなやり方、方法で学んできたサイクリストが集まってくる祭典だとも感じている。 そしてそこにまだ辿り着けない人たちもやはり多くいるのも確かである。 そして、今は業界も浮き沈みで言えば少し沈んでいる、完成車体の在庫はまだまだ多く残っているのだろう、コロナ禍で半狂乱的に踊り狂った人たちは大ダメージを受けている。その流れは残念ながら来年くらいまで続くのだろけど、裏を返すと、多くのサイクリングビギナーにとっては買い手市場は続くので、“最新”という夢物語を気にしない理解のある人たちにとっては、とても良いマーケット環境が続くのだろう。 また頭を動かしながら、しっかりと手脚も動く生粋のサイクリストにとって今こそが最良、最短で夢の自転車を手に入れることができることを理解しておくべきだとも思う。

やり切るという大切さを教えてくれるTOMIIは素敵、コラボも近日中に発表できるかと思う。

ここ10年くらい、特にコロナの影響を受けた近年で多くの物事が変わったのは確かだと思うのだけども、決して変わらない物事も多くあると思う。実際に人の心が大きく揺らされること、踊らされてしまうものなどは、不変不動を根本とした物事が多いのではないだろうか。そしてそれらの変わらない価値に対峙して、いかに新しい物事を必要量だけ加えてあげる事ができるのか、その行動自体を感性、センスと呼び、それを感じ取れた人たちは、時に美しく、そして優しく、またはイケてるとも感じるのだろうとも思う。

自転車の最大の魅力は正しく道具であるってこと、そしてその道具はいつでもどこでもその能力を発揮する、それは決してスキーにはない魅力。

わたしもサークルズを初めて今年で18年目に突入し、初期の頃に出会ったビルダーの多くも少なからず歳を重ねてきている。 何かに少し疲れてしまいトーチを置いた人も、逆に置いていたけど持ち出した人も、また老いてもますます盛んな人もいる。 さらにはそのような先人たちの生き様を見習って、夢をさらに加速する若い人たちもそこには多くいる。 どんなやり方でも、どんな感性を用いても、同じ立ち位置、近い哲学、そして何よりも自転車を愛し、その存在を正しく認めているだけできっと仲間になれるのだろう。

ニックと彼のシルクアート。 アートコレクティブはまた再開したい企画でもある。わたしの夢は自転車愛好家の鳥山先生にコラボをお願いすることだったのだけども、それは達成できなかったのが悔やまれる。

つながる方法はいくらでもあり、その気持ちを何よりも丁寧に受け止めたいために Circles なり SimWorks として活動しているのだから。 去年も書いたのだけども、わたしたちと出会ってくれた世界中のサイクリストたちに今一度心より感謝します。そして全ての MADE 参加者にも心より感謝しています。 そしてわたしが持っている精一杯の愛とアイデアを愛すべき皆さんにこれからも届けたいと努力することをここに誓いたいのです。

9/13 日本、名古屋 晴れ。
本当に今年も出会ってくれてありがとう。

Circles & Co, 田中

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kyutai
田中 慎也

空転する思いと考えを自転出来るところまで押し上げてみた2006年。自転し始めたその空間は更なる求心力を持ちより多く、より高くへと僕を運んでいくのだろうか。多くの仲間に支えられ、助けられて回り続ける回転はローリングストーンズの様に生き長らえることができるのならば素直にとても嬉しいのです。既成概念をぶっ飛ばしてあなただけの自転力に置き換えてくれるのなら僕は何時でも一緒に漕ぎ進めていきたいと思っているのだから。
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