[SEVEN] セブンのチタニウム技術&製造方法論 その1

Seven Cyclesのチタンフレーム製造におけるアプローチ
Seven Cyclesが行うチタンフレーム製造は、その製品と同様に非常にユニークで革新的です。この記事では、全5回に分けて、Sevenが誇るチタン技術と製造方法論について詳しく解説していきます。
フレームビルディングにおけるSevenの哲学
Sevenが理想の自転車を生み出すために、絶対に欠かせないと考えているのが以下の3つの要素です。
1. 素材の選択
Sevenでは、特にチタンをフレーム素材として重視しています。
2. カスタマイゼーション
独自のフィッティングメソッドを用いたカスタム設計。ライダーの体格や用途に合わせた細やかなヒアリングと「カスタムキット」によって、1台1台がパーソナライズされます。
3. Sevenプロセスメソッド
フレームを「一人ひとりのライダーに完全にフィットさせること」を目的に、シングルピースフロー生産方式を導入しています。これは、製造工程を1台ずつ個別に進める方法で、バッチ処理(まとめて加工)とは異なり、工程間の待ち時間が減り、品質管理が行き届くという大きな利点があります。
これらのうち1つや2つだけを取り入れても、それなりに優れたフレームは作れます。しかしSevenでは、この3つすべてを欠かすことなく組み合わせることで、世界で唯一のハイエンドなオーダーメイドフレームを実現しているのです。
25年超にわたる経験と影響力
Sevenの開発チームは、20年以上にわたりチタンフレームの設計と製造を専門としてきました。その経験と知見は、業界内で徐々に影響力を高めてきました。世界的なレーサーのバイクを手がけ、国内外の選手権で幾度となく勝利を収めてきた実績が、Sevenの技術力の証です。
そこでSevenでは、チタンバイクがどのようにデザインされ、どう製造されているのかを多くの人に知ってもらうために、このシリーズ記事を制作しました。チタンバイクに興味を持ち、より深く理解し、自転車生活のなかで役立てていただけたら幸いです。
Sevenとチタンの歩み|年表で振り返る進化の軌跡
Sevenの創業者であり代表でもあるロブ・ヴァンダーマークは、チタンフレームの設計において世界で最も長く取り組んできた人物の一人です。彼のもとで活動するSeven開発チームもまた、世界有数の経験を持つチタンフレームのスペシャリスト集団です。
1997年の創業以来、チタンバイクにおける革新的な技術と真摯なモノづくりで、多くのサイクリストに唯一無二のバイクを届けてきました。ここでは、そんなSevenの歩みを年表形式でご紹介します。
1997年
- Seven Cycles 創業
- カスタムフィッティングを革新する「Custom Kit™」「クライアントインタビューシステム」を導入
- 独自のフィッティング技術「Seven Fit Methodology™(SFM)」を展開
- ライダー個別設計のチューブセットを開発(業界初)
- チタン×カーボンのロードバイク「Odonata」を発表
- 業界初のS字シートステーを採用
- チタン製フルサスペンションバイク「Pendere」製作
1998年
- 累計1,000台目のカスタムフレームを製作
- ワータータウンの新工場へ移転し、敷地面積を7倍に拡張
- 「Five Elements of Customization™」でカスタムの新基準を定義
- 技術補足資料にて「21世紀のチタン入門書」を発表
1999年
- 世界最大のカスタムフレームビルダーへ
- 『Digital Darwinism』にてDellと並ぶ生産革新企業として紹介
- Team Seven(Mary McConneloug)、マスターズ世界選手権優勝
- 欧州にてカーボンシートチューブを用いたMTBを発表
2000年
- 業界初:フレーム設計に最適化された5Eカーボンフォークをリリース
- Team Seven、マスターズ世界選手権2度目の優勝
- カーボンシートステー、シートチューブ、トップチューブを備えたシクロクロスバイク開発
2001年
- Paul Turnerと提携し、初のカスタマイズ可能なフルサスペンションバイクを発表
- Wired誌の「Most Wired Ride」賞にノミネート
- MITでチタンとエンジニアリングに関する講演を実施
- スチールおよびチタンのMTBタンデム「Sola 007」「007 SL」を展開
- 初の分割式トラベルバイクを発表
2002年
- 「Ultra-Butted™ Titanium」チューブセットを発表
- 4度目の施設拡張(3,500sq.ft増設)
- Team Seven、米国代表チームに選出
2003年
- Daimler-Chrysler主催「機能美アート展」(ジュネーブモーターショー)に選出
- パフォーマンス向上パーツラインを立ち上げ
- カスタマイズ可能なフルサスMTBモデルを発表
- 全米選手権にてTeam Sevenが優勝
- カーボン+チタンの「Elium Titanium」、カーボン+スチールの「Elium Steel」登場
2004年
- 塗装施設を社内化、大規模スプレーブースへ投資
- チューブのバテッド加工も社内化し、品質管理を100%体制へ
- Mary McConnelougがアテネ五輪代表に選出
- フィッティング10,000人突破
- オリンピック仕様「Sola」を発表
- レース用カーボンチューブを導入し、剛性オプションの多様化を実現
2005年
- 革新的なフルカーボンモデル「Diamas」を発表:ラグ構造に依存しない設計を実現
- Team Sevenが全米選手権2度目の優勝、パンアメリカンで金・銅メダルを獲得
- MTB向けレース用カーボンチューブ「IMX」登場
- 軽量化と耐久性を両立した「5E XL」フォークを発表
2006年
- 「A6 Carbon Technology™」でカーボンの自由な形状とカスタマイズを両立
- 5度目の施設拡張(40%増)
- Audi AmericaのQ7ローンチキャンペーンに採用
- TEDカンファレンス展示に選出
- フルカーボンモデル「Diamas」「V-II」「Triad」シリーズ発表
2007年
- 独自の社内疲労耐久試験システムを開発・実施
- 初のベルトドライブSevenを製作
- フレームメーカーから「完成車メーカー」へ移行を開始
2008年
- チューブベンダーを導入し、フォーク&スタンドオーバークリアランスを最適化
- 初の650Bモデルを設計
- チタン製シートポストを発売
- Mary McConnelougが全米XC選手権優勝、北京五輪で7位入賞(米国最高位)
2009年
- 通勤用「Tiberius Bar」登場
- カスタムラック製作を開始
- 「Elium SLX」他モデルにインテグレーテッドシートポストをオプション化
- BB30オプション導入。Diamas SLシリーズで大幅軽量化と高耐久性を両立
2010年
- ユーティリティバイクライン「Traveler」を開始
- 電子パーツ対応の内装ケーブルフレームを開発
- 「Berlin Bike」を制作(統合型ライト&バー付きベルト駆動仕様)
2011年
- フレームに44mmヘッドチューブオプション追加
- 「Axiom SL」がBicycling誌でドリームバイクに選出
- Central Asia横断「Cycling Silk Expedition」をExpatでサポート
2012年
- 新モデル「622」「Mudhoney PRO」登場(チタン+カーボン)
- 1インチチェーンステーを採用し、剛性強化
2013年
- 「Evergreen」発表:グラベル対応チタンモデル
- 142×12スルーアクスルがオプションに追加
2014年
- 「622m SLX」発表:カーボン+チタンMTB
- トラベルバイク「Airheart」シリーズ開始
- Mo Bruno RoyがCXシングルスピード世界選手権で優勝
- 初のグラベルタンデム「Evergreen Tandem」製作
2015年
- グラベル専用フォーク「Max 45」設計
- MTB新モデル「Sola PRO」登場
2016年
- ファットバイク「Treeline」発表
- ミディアムリーチロード「RedSky」登場
- Chris King 40周年記念バイクを製作
2017年
- 20周年を記念し軽量化プログラム「XX」始動
- グラベル用フォーク「Matador」登場
- 独自設計のスルーアクスル型フラットマウントドロップアウトを導入
- T47ボトムブラケットをオプション化
2018年
- 「PureRoad」テーパードフォークシリーズ開始(ショート&ミディアムリーチ)
- ディスクモデル向け「Dropped」「Chopped」チェーンステイを導入
- 3面曲げ「Moto」シートステイオプション登場
- 世界唯一のファットバイクタンデム「Treeline 007 SL」を製作
2019年
- 「Xシリーズ」軽量化プログラムをリムブレーキモデルにも拡大
- MTBのBBシェルを73mm規格に統一
- デュアルサスペンション新プラットフォーム「Balance Control System」搭載モデル「Mobius SL」「KellCat SL」を発表
グローバルな挑戦と品質への執着
30年にわたり、Sevenのチームはイギリス、イタリア、ロシア、台湾、中国など、世界各地の主要なチタン関連企業や自転車都市を訪問してきました。
各地のチタン素材を調査・評価し、アメリカ国内の大手・中小の供給業者と連携しながら、チューブ加工のためのフライス盤の導入、品質証明・試験・基準策定にも膨大な時間と労力を費やしてきました。
こうして培ってきた技術的知識と経験は、すべてのフレーム製造にフィードバックされているのです。Sevenのバイクには、世界中で蓄積された“実地と実績”が詰まっています。