約四半世紀ぶりに蘇った、あるタイヤを紹介します。
四半世紀と書いたのには理由があります。
今でこそ、700c のFat tire は珍しい物ではありません。
四半世紀前の1988年に今日ご紹介するタイヤのプロトタイプが生まれました。
それが、Bruce Gordon 「Rock ‘n Road Tire」です。
タイヤのラベルを読んでみますと、
「This tire that started the 29er movement」
このタイヤは、29er (全ての事柄) の始まりです。
そうです、 1980年初頭のアメリカでは、既に700cでの
Off-Road bike (今の29er) たるものを作る動きがありました。
(そうです!あのヒゲのおじさんもそのひとり。)
しかし、今みたいに29erと呼べる言葉もありませんでしたので、
当時700c Fat tire は、Big Wheel という表現をしていました。
自転車は作れるが、いかんせんタイヤが無い。
そこで目をつけたのが、北欧 Finland 製のスノータイヤでした。
(Nokian製のHakkapeliittaというタイヤ)
そのFinlandのタイヤにインスパイヤされ、
この ” Rock ‘n Road Tire “が誕生するのです。
all condition tire for big wheeled Bikes!
しかし単純に考えれば、そのFinland製のタイヤを輸入すれば
もっと早い時期に700c のBig Wheel が、
世に広まったのではないでしょうか?
しかし、そこには当時のアメリカにおける、
国内の自転車メーカー保護の為に海外の自転車メーカー
(自転車、パーツ) に対して高い関税を課していたという背景があり、
輸入が非常に困難でした。
(どこが圧力をかけたかって? Sから始まり、Nで終わる、当時アメリカで最も大きい自転車カンパニーです)
そういった経緯もあり、このタイヤは、約四半世紀の間、
表舞台に出ることなく、一枚のスケッチのみが残されました。

上のタイヤデザインのオリジナルコピーは、
先日の「NAHBS」に飾られてあった物です。
(見にくいですが、タイヤサイズも700 x 40 となってますね)
これをデザインした人物は、
mtb 好きな方ならご存知の、
mtb界のレジェンドであり、Konaの創設者の一人でもあり、
現在自転車に関連するパーツなどのデザインを手がけている
彼は、Big Wheel (700c)で、たくさん空気が入る
ヴォリュームのあるタイヤ、それでいて、On/Off どちらでも走れる
All Condition なタイヤを既に考えていたのです。
僕らが、26inchのMtbを楽しんでいた頃、
Bruce Gordon氏をはじめとする、自転車の先人達は、
29erの礎となるBig Wheel という新たな試みをしていたのです。
幸運にもこのようなタイヤに出会い、
いろいろ考えることもできました。
このタイヤに限ったことではないですが、
我々販売店は、しっかりと、作り手のメッセージを伝えなければ
いけないこと。
そこを間違ってしまえば、せっかくの良い物でも、台無しにしてしまう。
これは決して自転車に限った話ではありません。
これを読んでくれて興味をもたれた方には、
このタイヤの誕生までの経緯を知ってもらいたかったですし、
彼がこのタイヤをどんな風に使ってもらいたいかを知ってもらいたいです。
このタイヤは、タグに書かれてる
” All terrain, All condition tire for Big wheeled Bikes “
私は、こう解釈します。
玄関を出て、ペダルを踏んだところから、冒険は始まります。
まず、車や人が行き来する街をすり抜け、
ちょっとがんばって、街から見える丘や山を登りそして下り、
再び、街に戻ってきて、家路につく。
どうでしょうか?
いちフレームビルダーの彼が、
Panaracerに依頼し、タイヤの型から起こし、
販売までするこのパワー、
忘れかけていた、
遊びの本質を思い出させてくれました。
まさに、今、多様化する自転車、そして、
時代が追いついた結果であると思います。

ありがとう。
Bruce おじさん。
最後に、
この動画 「A Brief History of the Rock ‘n Road」
を見てお別れしたいとおもいます。
あのFinland製のタイヤも出てきますよ。
==SAL==