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RIDEALIVE2019 四国/無我の境地

秋の色も深まりつつある頃、僕たちは日本の中でもなかなか行き辛い土地に足を踏み入れた。
今回のRIDEALIVEの開催地である四国地方である。
特に僕の地元、高知は陸路で行くにはなかなか大変な場所だ。

名古屋からの四国までは「もちろん自転車。」と言いたいところだが、今回は四国でのライドがメインディッシュなので、小牧から離発着するFDA(フジドリームエアラインズ)を利用して高知に飛び込んだ。

RIDEALIVE 四国

僕が表現したかったRIDEALIVEは土地から土地を繋ぐ旅。
一日100km以上の長い距離を走り、地形や景色の変化を楽しむ事。

漕げば漕ぐ程削ぎ落とされ、ソリッドになってくる感覚の中で、自分の息や鼓動、チェーンの噛み合う音やタイヤと地面の摩擦、風や気温、生き物の存在感や滔々と流れると流れる川の音などを感じたかったのだ。


今回二日間で走り抜けたルートはこちら。

徳島市内にあるSHIOKAZE STOREさんをスタートし、河口の川幅は2km以上ある一級河川「吉野川」沿に高知へと走るルート。

途中には名峰「剣山」や、日本有数のウルトラディスタンスレース、ジャパニーズオデッセイでもチェックポイントになった「京柱峠」のピークを越え、高知城下へと向かうハードルートだ。

四国山脈を横切る今回の旅をしっかりとレポートさせていただきますのでしばしお付き合いください。


DAY1:剣山のピークへ

集合時間は朝8:30。
徳島に前入りしていた僕は、今回の旅仲間と食べた夕食のチャーハンで満たされたままの腹を抱えながら集合場所であるShiokaze Storeへと向かった。

チャーハンは今回アンバサダーとしてお世話になるShiokaze Storeのゴリさんおすすめのチャーハン屋で、なんの気なしにラーメンとチャーハンを頼んだら痛い目にあった。美味しかったけど。

蓄えたエネルギー的には問題無いが、正直久しぶりに登り続ける今回のルートにかなりビビり倒し、本当に走りきれるのだろうかと不安な気持ちを持ちつつスタートした。

今回参加してくれた仲間たちもそれぞれ少し不安そうな表情に見える。

しかしもう引き返す事はできない。我々の200kmにも及ぶRIDEALIVEが始まったのである。

まずは徳島市内をローカルライダー、ゴリさんが華麗にアテンドしてくれる。
街中を走るのが嫌いという人の方が多いと思うが、街中を華麗に走っていく事のできる人ほど信頼の置けるライダーな気がするのは僕の自転車のルーツが街中にあるからだろうか。

ここで今回のアンバサダーの紹介を。

松本 祐輝さん 通称:ゴリさん

僕が高知の高校生だった時に自転車屋で出会ったゴリさん。
その当時のゴリさんは現在の僕ぐらいの年齢だろうか。
近所のお店に初めて自分自身で自転車を買いに行った時に、たまたま居合わせたのがゴリさん(スタッフでは無い)で、彼の「コレでいいじゃん〜」で僕のファーストバイクが決まったのである。
その時は彼はピストバイクに乗って街中を自由に遊んでいたのだが、今は幅も広がり、ロードやMTB、そしてCXと多種多様な自転車でたくさんの道を遊び続けている。


そこそこ大きな道を走り抜け、河川敷の一本道を穏やかな流れの吉野川を遡上していくように気持ちよく走り続ける。
この日は風もなく、スタート時の不安は無かったかのように穏やかな最初の40kmを走り過ぎた。

少し早いが11時過ぎごろに昼食としてうどんを食べる。
好みのうどんと天ぷらやおにぎりなどを選ぶ。
四国でうどん屋に入ると大体この”セルフ”スタイルだ。

早めに昼食をとったのは理由がある。
この先に飲食店はおろか、補給物を手に入れる場所が一切無いのである。
次に何かを購入できるのは今日のゴールである剣山山頂なのだ。

スタートからなだらかな河川敷沿に走り、昼食を食べた僕たちの緩んだ気持ちに”ここからゴールまでは登り区間か”と不安が再び襲いかかってきた。
この不安を流し込む様にセブンコーヒーをみんなでゴクリと飲んだ。


今回の登坂は剣山に源流のある穴吹川に沿って始まる。
穴吹川は吉野川の支流として一級河川の扱いを受けている。

じわじわと登っているのだが不安を抱いていた様子とは違い、気づけばみんなで談笑しながら走っていける緩やかな登り。昼過ぎの心地の良い日差しも重なり気持ちの良いテンポでペダルを踏み続けた。

見える景色は四国山脈と穴吹川により作られた渓谷。
澄み過ぎたぐらい美しい川が傍らを流れていく。
大胆に削り取られた渓谷は、暴れ川として四国三郎の異名を持つ吉野川の支流だけあって迫力がある。

淡々と登り続けること3時間。
少しづつ陽が傾き始めた頃に残り20kmまでやってきた。
なんとか陽が落ちる前にたどり着けそうだなと車輪を転がしていたのだが気になっていたのは何か強烈なパンチのある登坂がまだ来ていないという事。

剣山は四国でも二番目に高く、標高は2000m近い。
その下にある登山道の入り口が標高1400m程といえども、これまでの登りは緩すぎる。

そう、現在地の標高は400m、残り20km程で一気に1000mを駆け上らなくてはならないのだ。
わかってはいたけれども、軽く絶望した。


この後半の登りで初めてグループが別れてしまう。
登り坂が苦手な仲間を支えながら走るグループと、そんな余裕はなく、ただただ必死にペダルを踏み続けるグループ。

僕は後者のグループで後ろから追いついてくるであろう仲間を信じながら必死に走り続ける。
夕日が落ちる前にゴールにつきたいという焦燥感にも駆られながら。

太陽は剣山に沈んでいく形となるので、日の入りが早く感じた。

この状況にテンションの上がった一人がグングン登っていく。
あっという間に見えなくなった彼を追うように僕も必死に登る。
個人的に本当に登りは苦手で嫌悪感さえ覚えるのだけれども、ずっと前をいく人、少し前を走る人。そして後ろから必死に登ってきている仲間たちがいると思うとなんだか自分一人で走っている気がしなくて楽しかった。

誰も見えない一人のシーンもあったけど、ふと顔をあげると夕暮れの山が眼前に広がっていて、辛い登りの途中にも「もっとこの空間にいたい。」と思ったりした。
この感覚が間違いなく自転車の魅力のひとつだ。

そんな事を考えながら走っているとずっと前を走っていたはずの仲間が立ち止まって待っていて、合流して走り始めると九十九折りの下から仲間の声が聞こえてきた。

そしてまたみんなで頂上を目指す。
やっぱり自転車面白い。
頂上まであと5km。

この区間も登りごたえのある5km。ずっと前を走っていた彼が倒れた。
両足を攣り地面に倒れ込んでしまったのだ。

なんとか立ち上がり怪我も無く最後まで走りきった彼は最高だった。

陽が落ちるのとほぼ同時にたどり着いた僕たちは貪るようにご飯をいただき、ビールを飲み干し、次の日に備えて就寝した。


DAY2:高知城へのラストスパート

昨日の疲れを若干感じながら、剣山から見える朝焼けを目当てに少し早めに起き出した。

朝焼けと共に昨日走ってきたであろう道を想像する。
幾重にも重なる山影に、ずいぶん登ったんだなと改めて実感する。

剣山はニホンカモシカの生息地で、登り進めている間にも何頭かに出会うことができた。この朝焼けの中にもたくさんの鳥の鳴き声が聞こえ、とても生命力に満ち溢れた山であることがうかがえた。

自転車は車と違ってとても静かで遅いからか、カーブの先にキジが突然現れたりする。多くの生き物と出会うことができるのも自転車の魅力なのかもしれない。

二日目は1日目と違い、概ね下りのルートである。
1日目よりも距離的には長くなるのだが、下り基調ということもあり走行時間は少なめの予定だ。

今回は国道439号をメインルートとし、途中で高知市内へと伸びる別の国道へルートを切替る。

この酷道”与作”と呼ばれる国道439号はモーターバイカーにとってはとてもシンボリックなルートらしい。狭く大きくうねるようなルートが剣山から四万十川まで続いている。

その途中にはツタ植物の蔓でできた橋、蔓橋(かずらばし)に立ち寄りその蔦の軋みに震えたりし、はたまた途中にあるかかしの里のシュールさに驚いたりと祖谷(いや)地域を楽しんだ。

この地域は壇ノ浦の戦いで敗れた平家の落武者が安徳天皇を連れてたどり着いたとされ、「平家の里」とも呼ばれている。
もし、歴史に興味のある方がいらっしゃるのであれば是非訪れていただきたい徳島県の秘境だ。

祖谷を抜けると二日目のピークである京柱峠へと向かう。
この峠道は数々の雨や台風により試走の段階では迂回路を使用しないと辿りつけ無かったのだが、幸運事に正規の道が修繕も終わり通ることができた。

林業の里だけあり、道路の両脇に立ち並ぶ荘厳な杉木立の中を走ることができた。
酷道と言われるだけありなかなかのヒルクライムであったのだが、前日の経験もあるためか皆そろっての登坂となり、とても楽しめるルートとなった。

登りの最後の後半は崩落した道を修繕しているので頂上までとても綺麗な舗装路の上を走ることができる。
酷道とは…と思ってしまうこと間違いなしだ。

クネクネと山道を登りきると、とても見晴らしの良い京柱峠に出る。
徳島側を見れば今まで走った道を、高知側を見ればこれから走っていく道を一望できる。
今回は少しモヤが出てしまっていたが、それでも抜群の開放感で気持ちよかった。

この京柱峠は国道439号の最高地点という事もあり、来訪者が多い。
何年か前まではここにうどん屋があったそうで、今でもその基礎部分だけは残っている。用意してもらっていたお弁当を食べていると、三連休ということもあり自転車や車で登ってくる人が多かった。

さぁ、ここからは下り一本調子!
一気に高知市内へと雪崩れ込んでいくだけ。
上りと違って下り好きたちがグングン先へ走っていく。
写真をとっていたらもういない。追いつくのに精一杯。
気付けば峠を降り終え、南国市へ。

車や電車の往来が多くなってくると旅の終わりを感じる。

四国の半分程を走ったこの旅は、大半が四国山脈の中を走り、おおよそ3500mの獲得標高、総距離200kmと今までのRIDEALIVEから見るとなかなか険しい行程だったのではないだろうか。

途中には塩の道や平家の落人伝説などがあり、その険しさを感じる地名なども多く見られた。昔は徒歩や馬や牛と共にあの山間部に分け入っていたのかと思うと気が遠くなるが、それを自分の体を使って走った事で、より強く実感できる。

そんな事を思いながら、同級生の家に遊びに行くのに使った道などを通って高知市内へ。
路面電車と走りながら高知城へと向かっていく。
よさこい踊りではメインステージともなる高知城の正面に通る大通、追手筋に入ると毎週日曜日に行われている日曜市が開催されていた。
このマーケットはこの追手筋で行われている街路市で、300年以上の伝統がある。あいにく店じまいが進んでいる最中だったので賑わいは少なかったが気分は堪能できた。

そんな日曜市も見ながら、ゴールでもある高知城に歩いて到着。
ゴールの記念撮影を。

その後は、それぞれの宿に荷物を置いて、高知のうまいもんを食いに集合。

まずはたたきのうまい居酒屋さん、どんこへ。

人数が少なかった事もあり人気の小さな居酒屋さんへと入ることが出来たのは美味しい誤算。 どの料理もとても美味しく、今回走り抜けてきた道を楽しく締めくくるには充分過ぎるくらいであった。

乾いた喉をするすると流ていくビールのうまさたるや。
タフなライドは辛いけど、そこに仲間がいれば、見た事、感じた事、同じ時間、空間を共有出来る。仲間と走った事で生まれたグルーヴが心地良く、箸もグラスも良く動いた。

最も過酷なライドアライブ、大団円!


ゴリさんからのコメント

サークルズスタッフでありピスト時代から知っている後輩のユウヤから今回の話を貰ったのが今年の7月頃。 徳島から高知まで走りたいんですよ。里帰りっす。軽いノリでサラッとキツい事言ってくる彼に本当に大丈夫かなと不安を感じました。

9月にルートが決まってからは開催日まであまり時間がないので、休日を全て使い1日がかりで徳島と高知の県境にある京柱峠までのルートを何回も試走し通行止め箇所や危険な場所が無いかをチェック。 今回のルートで本当に大丈夫なのか、またルート上注意する箇所などは無いのかなど、僕以外からの視点で客観的に判断をして欲しかったのでお客様やユウスケにも試走を付き合って頂くこともありました。(お客様、ユウスケ、協力して頂きありがとうございました。)

僕が知っているRALとは違った今回のライド。参加する皆さんがトラブル無くまたリタイアもなく走りきって貰える様にと最大限の準備をしたつもりでしたが、四国八十八か所参りという四国内の寺を回るという行為だけで修行になるそういうキツさを持っている土地柄、そして今ままでのRIDEALIVEとは違い単純に走るだけでキツいルート。RAL初のリタイアもあるかもと相当ビビっていました。 最終日ゴールの高知城についた時は心底安堵しました。大きなトラブルも無く今回のRALを無事終われて本当に良かったです。

今あの日を振り返ってみて思うことはキツいかったけど面白かった。ただそれだけです。 自転車を楽しむ方法って色々とあると思うのですが僕らシオカゼストアはその一つに苦しい事を超えた向こう側を体験するって事があると思っていて今回のRALの内容と僕達のマインドが一致するライドイベントでした。 ユウヤが考えたRALを手助けできそれを形にできたこと、そして参加された皆さんと共有できた事をとても嬉しく思います。 また徳島の地に皆さんが遊びに来てくれる事を楽しみにしています。

Shiokaze Storeさんのブログも是非読んでください!!


今回のRIDEALIVE 四国にぴったりの言葉がある。
高知のあちこちで目にする言葉で、強く、しっかりとしなさい!という意味のある言葉。
この200kmを走ったRIDEALIVEは決して易しい物では無かったはず。
しかし、辛い登り坂を何度も越えてきてからこそ感じれる達成感はひとしおだ。
ちょっと辛そうだなと思うライドでも、ぜひ挑戦して欲しいと思う。たとえ、途中で引き返したとしても走ってやろうと踏み出した事が大切だ。

そんな思いで高知について見えた言葉がこの言葉、

たっすいがはいかん!


TODAY’S RIDER

RIDEALIVE2019 四国/無我の境地YUYA【CIRCLES】

-BIKE SPECS-

FrameAll-CityMacho King “15
HeadSetChrisKingInset 7
WheelChris King x VelocityR45D x Aileron
TireTERAVAILRampart 700 x 38c
StemSimWorks by NITTORhonda
Main GroupShimanoUltegra 6800
Handle BagOuter ShellDrawcord Handlebar Bag
Seat BagOuter ShellExpedition Seatbag
HelmetSmithForefront
ShoesQuoc PhamGrantourer

TEXT by Yuya / PHOTO by Yuya,タケノウチ