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[SEVEN] セブンのチタニウム技術&製造方法論 その5

Seven DropOut

セブンのチタン技術と製造方法論|最終回

5回にわたりお届けしてきたSeven Cyclesのチタン技術と製造方法論も、今回が最終回です。ここまでお読みいただいた皆さまに、チタンという素材への理解が少しでも深まったのであれば、これ以上嬉しいことはありません。

それでは前回に引き続き、「チタン加工の概要|多角形チューブ編」からご紹介します。

多角形チューブについて

最近では、楕円形・四角形・六角形など、幾何学的に成形されたチューブを見かけることが増えてきました。見た目のインパクトや「剛性アップ」を謳った設計も多く存在します。

しかし実際には、これらの多角形チューブは、性能面で真円のチューブに劣るケースが多いのです。

多角形チューブ

剛性:形状による違い

真円のチューブは、ねじれ(トーション)や曲げ(フレックス)に対する力の分布が最も均一で、剛性バランスに優れた形状です。

  • 多角形チューブは、ねじれに弱くなりがち
  • 楕円形チューブは縦方向には強くても、横方向とねじれ剛性が低下

結果として、一定の重量内で最も安定した剛性を提供するのは円形チューブである、という事実は変わりません。

グレイン構造(結晶粒配向)への影響

チタンの「グレイン構造」とは、金属の結晶粒の配列状態のこと。これは**強度や粘り強さ(靱性)**を大きく左右します。

しかし、チューブ形状を無理に変形させることで、このグレイン構造が崩れ、疲労強度や剛性が損なわれる危険があります。

円形と楕円形チューブにおける剛性比較

切欠感度と信頼性

多角形チューブの多くは、マンドレル(芯金)を用いて成形されますが、その過程で内面に微細な傷が生じることがあります。これが「応力集中」を生み、破損の原因となるのです。

つまり、多角形チューブには明確な意図と理由がある場合のみ有効であり、単なる見た目や流行で真円を避けるのは本末転倒と言えるでしょう。

もちろん、多形状チューブが用途によっては役に立つこともあるのですが、そのような形状のチューブを使用する理由には明確な目的があってこそだと思います。 何の理由もなく円形チューブを使用しないことで基本性能を損なってしまうのは本末転倒といえるのはたしかですし、下記の表には、多角形チューブを3つのカテゴリーに分けた時の強さと弱さがそれぞれについて記述されているので参考にしてもらえばいいと思います。

多角形チューブの特性

表面処理技術について

アノダイジング(陽極酸化処理)

美しい色彩の酸化皮膜を形成する「アノダイジング」は、装飾目的としては魅力的です。しかし、チタンフレームには非常に不向きな処理でもあります。

  • 酸化皮膜は脆く、溶接部が劣化する
  • クラック(亀裂)が表面から内部へ広がる危険あり
  • 曲げ加工ができなくなり、強度も大きく損なわれる

Sevenでは、アノダイジングを全面的に禁止しています。今後この処理が施されたフレームに対しては、無期限保証の適用外とする方針です。

ショットピーニング

ショットピーニングとは、微細な金属球を高速で表面に打ちつけて応力を与える処理法です。これにより、チューブ表面に圧縮応力層が形成され、亀裂の発生を抑える効果があります。

しかし、自転車のように細く複雑な構造物に対しては、

  • 適正な**打撃角度(90度)**で処理するのが極めて困難
  • 実際は多くの球が斜めに当たり、表面にキズを残すだけになる

という問題があり、実用的な効果を発揮するのは難しいのが現状です。

ポリッシング(鏡面研磨)

ハイポリッシュ仕上げのチタンフレームは美しいものですが、

  • 加工中に削られる金属の量を制御するのが難しい
  • 特に溶接部は強度低下を招きやすい

という理由から、Sevenでは採用していません。

代わりに提供しているサテン仕上げのフレームは、

  • 手入れが簡単
  • 使用中のキズもスコッチブライト™(ベリーファイン)で自分でメンテ可能

という、見た目と実用性を両立した仕上げです。

a seven welder

溶接技術|Sevenの真髄

チタンは非常に繊細な金属であり、溶接時に酸素・窒素・炭化水素と反応すると著しく強度が低下してしまいます。そこでSevenでは:

  • 溶接前の徹底した洗浄と脱脂
  • 作業者は必ずコットングローブ着用
  • 独自に改良したTIG溶接トーチとレンズを使用
  • 陽圧パージシステムによるフレーム内部の不活性ガス充填

といった、高度なプロセスを標準化しています。

また、フレームの内側と外側を不活性ガスで保護することで、溶融金属が酸化・窒化するのを完全に防いでいます。

溶接システム
finishing seven bike

仕上げ作業

フレームの仕上げには、およそ丸一日を要します。

  1. 残留物やオイルの除去
  2. ナイロンホイールでの最終磨き(※ポリッシングではありません)
  3. スコッチブライト™(グレードA・ベリーファイン)での整え
  4. 特製ワックスのスプレーコーティング(指紋・油汚れ対策)

そして最後に:

  • ウォーターボトルマウント
  • レーザーカットのステンレスヘッドバッジ
  • シートトップやハードウェアの装着
  • 製作担当者全員のサインが入ったラミネートカード(ジオメトリー・シリアルナンバー付き)

これにて、あなただけの唯一無二のSevenフレームが完成します。

最後に

Seven Cyclesは、25年以上にわたりチタンフレームに真摯に向き合い、進化と挑戦を重ねてきました。今回のシリーズを通して、Sevenがどのような理念と技術で自転車を作り続けてきたのか、その一端でも感じていただけたら幸いです。

次は、あなたのSevenをつくる番ではないでしょうか。

Seven's Titanium Technology-and-Manufacturing Methodology