早いもので今年ももう残りが40日を切りました。 ウインターシーズンの風物詩ともいえるシクロクロスのレースが今年も始まり、山里では虫たちとの遭遇も少なくなって林間ライドもしやすく、路面凍結前の峠道では多くのサイクリストとすれ違います。 今年は特にエル・ニーニョ現象の影響からか暖冬基調にあり、自転車乗りにとって最高のシーズンではないかと思います。
おかげさまで今年の12月1日をもちましてサークルズは12回目の誕生日を迎えることになりました。 これはひとえに私たちサークルズというコミュニティーをサポートをしていただいている多くのお客様ならびにスタッフ、協力工場、メーカーの皆様のおかげだと思っております。
心より感謝しております。
今年は大きな起点、分岐となる出来事が多くあり、この場所をお借りして少しご紹介をしたいと思います。
何よりも一番大きかったことと言えば海外にもう一つの拠点を作るという、いまこうやって言葉にするとかなり壮大(無謀?)な構想を現実化して実可動に至るまでを達成できたということです。 今までの先人たちが培ってきた技術と伝統、そして私たちが経験してきた物事を自転車パーツとそれらに付随する製品に落とし込み生み出しているシムワークス製品を求めてくれる海外からの声の高まりに対して、いかに我々の本質を正しく伝えあげ、そしてカスタマーに対して最良かつリーズナブル (REASONABLE / 文字通り決して安いという意味ではないです)な製品提供できるかを考えて出てきた選択肢はそう多くはありませんでした。 また海外赴任を強く求める女性社員と、やれないことはないのだというチームの強い意志がしっかりと共鳴したのはただの偶然とも思えず、本当に自転車に乗ったからこそ出会えた仲間たちと仕事をしていてよかったなと率直に思いました。
我々が作り出しているシムワークスならびにRALの製品は日本国内にある工場で作られることが必要不可欠です。 その最大の長所とは人類の進化の基本と同じくコミュニケーションにほかならないのですが、同じ日本人同士においても、いかに多くの共通言語をお互いに語り合う事ができるのかがキーだと思っており、同じ好きなことを仕事にしている人間同士であるということも一つの重要な共通言語となりえます。 その多くの共通性を持つ仲でコミュニケートを積み重ねていくことこそが、決定や行動をすばやくし、阿吽の呼吸すらを生みだし、またボタンの掛け違いを限りなく減らしてくれるのだと思っています。
この私たちが理想とする動きをより強固にするために、シムワークスがオリジナルフレームの製造依頼をしている、同県内にありますShin・服部製作所へ数名のスタッフを送り込み、製造現場との密着性をより高めることにも繋がりました。 代表である服部氏の自転車に対する熱い思いや彼がフレームビルダーとして開業するまでのその動きとはまさに惚れ惚れするものなのですが、(詳しくはおしゃべりな彼にその思想を聞いてみてください。)サークルズとこの地方の現場環境を知り、物事の捉え方、考え方も共通点が多く、そしてやはり同県内にあるという地の利は私たちにとって多くのものをもたらしてくれます。
すこし話は少しがそれてしまいますが、愛知県は多くの山々、そして海にも面し、日本国内においても有数のプレイフィールドに囲まれた地域だと思っています。 また自転車が純粋に楽しいアクティビティであり、かつ健康的などの側面も捉えられ始め、多くの地方自治体が地方創生活動においてとても有効であると考え始めた過疎地域の人々は加速的に協力度を増しています。 実際に我々が力を入れている豊田市の山間部、稲武地区においては地域企業の人材確保のために連携し、私たちもマンパワーを送りこんで今まさにプレイグラウンド(バイクトレイル)を切り開いている最中なのですが、根本のアイデアとはどうしたら未来ある若者たちが山間部への移住を決意し、そこで仕事と趣味の両立を軸に、かつ生活の安定をも無理なく図ることができるかというものでした。
死にゆく山々としてみんな半ば諦めかけていた実情だったのですが、こよなく自転車を愛する趣味人がこの地でのびのびと生活ができるであろうかと考え尽くし、産み出した答えがINABU BASE PROJECTであり遊びと生活の一元化を声高に唱えてくれました。 まるでそれは常に最良の波を求める力強きサーファーや雪山に移住し新たなコミュニティーを創造しているスノーボーダーたちのように感じました。 そして実際に多くの若き人材がすでに稲武地区への移住を決め、来年度からは実質的な可動も始まろうとしている現状を見ていると、まさしく新たな時代が始まるのだなと感無量になります。
そんな同地域で共に生きる服部くんとの製造活動は私たちが主としてきた販売活動やデザイン業務のみでは知りうることができない本当に大切な宝物になりつつあります。 ここで得た経験を私を含む全てのスタッフが正しく理解した上でより密なコミュニケートが始まると、さらに多くの人たちが誰が、なぜ、どうやって、どこでモノを作り出しているかということにも、そのプライスタグ以上に興味を持ってもらえるのではないかと思ってもいます。
さらにはRIDEALIVE(以下ライドアライブ)も今年はついに海を渡り、アメリカ オレゴン州 ベンドと北海道のニセコにおいては初めての試みでもあった女性限定のガールズ ライドアライブも開催することができました。 遊び上手なアメリカ人たちのことはともかく、北海道で開催したライドアライブでは準備から実行までをすべて女性たちのみで行い、本当に多くの女性サイクリストが全国から集ってきてくれたという事実はこれからの日本のみならず世界が向かうべき姿と照らし合わされましたし、真の希望の芽生えとなりました。
私自身、常日頃思うことがあります。 それは今までもこれからもそうなのだと信じていますが、日本は世界に誇れる自転車王国だということです。 その中でも一番胸を張って言えることとはアクティビティとしての自転車活用や世界に轟くその製造力ではなく、いかに多くの日本人が毎日のように自転車を使って生活をしているかという事実に尽きます。 その多くの使用者とはまさしく女性であり、毎日の買い物から子どもたちの送り迎え、登校から出社までどれほど多くの人たちが自転車を活用して生活しているということにほかなりません。 自転車の便利さを肌で知り、使い切っているその女性たちがもし日常以外の場所で自転車を用いて、楽しみ始めたらと想像するだけで胸が踊るのです。
そして私たちは毎日のようにママチャリの修理を頼まれるのですが、サークルズに入社するとまずママチャリ専用ピットでの訓練が始まります。 その現場で私たちの哲学や思想、そして向かうべき理想を学ばせたいと思っているからです。 その中でもいちばん大切なこととはやるべきこととしたいことを明確に見極め、それをどうやって自分の力で達成していくかということです。 日本という社会において自転車と呼ばれる道具の主な使われ方を新人スタッフにはしっかりと感じ、考えてもらい、その先にある夢への実現を自身の力で育んでもらいたいと思っており、その日常の繰り返しから学び続け、手足を動かし続け、決して止めない力のことを自転力と呼んでいるのです。
その各々が携えた自転力を今年はサークルズというチームのみんなが駆使することによって先ほど上げた結果へと導かれたのではないかと感慨深く思うのですが、まだまだサークルズとしての夢は大きく、そして先は長く、また世界一のサイクリング大国を創造していくためにも、日本中のみなさまのご協力を引き続きお願いしたいと思っております。
長文を最後までありがとうございました。
そしてサークルズは自転車を信じています。
株式会社 Circles
代表 田中慎也