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CHRIS KING ARD44 Wheelsetをレビューしてみたら、クリスキング社を語ることになってしまった件

“ Made In USA” という魅惑の響きを持った Chris King の最新作、ARD44 ホイールを買ってみたのでいち早くレビューしてみようと思います。多分日本語で書かれた記事では史上初。

もちろんハブはポートランドの Chris King 製、リムはユタ州で FusionFiber®︎ ってカーボン素材で製造。(実際Made in USAのカーボンリムのほぼ全てはこの工場で作られているみたい)

なんだか個人的にChris Kingは大好物で、以前彼らが自社製造していた Cielo は2台持ってるし、なんやかんや所有しているヘッドセット、ハブもほとんどがChris King。

そりゃあ他のブランドにも興味はあるけど、自分で買うってなると思想に共感する会社のものを買いたい!ってなっちゃうんですよね。

“ Chris King ”という思想

この動画を見ていただければわかると思いますが、Chris Kingは、人の営みが生み出してしまう環境へのインパクト、食事、従業員の存在、原料やエネルギー、製造コストや自国で生産することについて、とても示唆に富んだことを教えてくれます。(もう随分昔、キング本人が日本に来たことがあるのですよ。)

「精度」や「軽量性」という一般的にバイクインダストリーで考えられている「高品質」と、Chris King社が考える「高品質」へのコンセプトは他とはちょっとだけ違うかもしれません。

いささか乱暴に彼らの考える「高品質」を定義してしまうと

「美しい仕上げで壊れにくく、限りなく永く使え、環境へのインパクトが最小限であること。そして壊れても直せること」

タナカ・シンヤードのFIrst King

これを全てクリアした製品を「高品質」と定義している。

資本主義が加速させる大量生産、大量消費に挑戦しようとしているのです。(それも70年代から!)

だからほとんどの製品が分解できる、リプレイスパーツが豊富で保証も手厚い。

ただユーザーフレンドリーなだけでなく、彼らのサーヴィスや保証はこういう思想から生まれてくるんです。

ビジネスを「名声を得て、儲けること」ではなく、ビジネスで「社会的責任、環境へのインパクト」に挑戦していくというバイクインダストリーの patagonia のような会社なんですよね。(実際、彼らはB Corp認証の通った環境、社会への公益性重視ガチ勢

CK社はベアリングの精度や、アルマイトの美しさで語られがちなんですけど、こういう部分やライドフィーリングの良さもしっかり日本で紹介したいし、紹介されるべきだし、この考え方に共感した人にもChris Kingを使って欲しいなって思います。

美しさには理由があり、壊れにくいことにも理由があり、直せることにも理由があるのだ。

せっかくだから、こういう企業姿勢があるってことを知って欲しい。僕も最初はかっこいい!って感じで使ってたけど、この企業姿勢にめちゃくちゃ共感して、もっと Chris King が好きになったし、このカーボンホイールを買おうって決めたのだ。

つまり、ただのドヤるための高級パーツじゃないんだぜってこと。

ARD44 Wheelset は重くて高い?

前段がめちゃくちゃ長くなっちゃったんですが、まだまだ前段は続きます。さっきから話している事が、このカーボンホイールには重要なコンセプト。

ARD44 Wheelset はホイール前後でTTL1,525g。

カーボンホイールというジャンルでは決して軽くはない。今は軽さを求めれば 1,200g 台のホイールなんてザラにあるし、正直もう少し投資すれば ENVE という「カーボンホイールといえば ENVE」という代名詞ブランドに手が届くプライス。

それでもなぜ、あなたがCKのカーボンホイールを手にする理由があるのか?

それは FusionFiber®︎ という素材が「熱可塑性(ねつかそせい)カーボンファイバー」という、従来のカーボン製品とは異なったコンセプトで作られているという点。

熱可塑性とは、身近なものでイメージすると分かりやすいです。
ここではチョコレートとホットケーキを例に両者の違いを説明します。
熱可塑性樹脂がチョコレート、熱硬化性樹脂がホットケーキとします。

チョコレートは常温で固体ですが、加熱すると液体化します。
しかし、その液体化したチョコレートを冷やしていくと再び固体化します。
温度変化によって液体化したり、固体化したりする。これが熱可塑性樹脂の特徴です。

対して、ホットケーキは焼く前は液状ですが、フライパンで加熱すると固体化します。
そして、その後加熱しようが冷却しようが元の液状へと戻ることはありません。
加熱により固体化し、その後の温度変化による形状変化をしにくい。これが熱硬化性樹脂の特徴です。

https://www.yumoto.jp/material-onepoint/thermoplastic-thermosetting

つまり、リムの形状になってしまったカーボンファイバーが、熱を加えることで、リサイクル可能な状態に生まれ変わらせることができること。

なぜ CK が FusionFiber®︎ を採用し、リムを開発しようとしたのか?もうお分かりですね?

さっきから話しているように、この部分に Chris King が資本主義、大量生産 / 大量消費的なバイクインダストリーに対して挑戦する姿勢が感じられます。(実際のところ、近年他メーカーでもFusionFiber®︎はリム素材として使用されていて、今後大きな潮流になる気配)

彼らは“ Reasonable(リーズナブル)なプライス ” という単語をよく使いますが、ただ価格が安いということではなく、長い目で見た時に「 “ Reason-able ”= 理由がある」のです。

そのために生涯保証のワランティーが付与され、使い続けることによってコストパフォーマンスを発揮してきます。

価格だけを見ると 429,000円と高価に見えますが、ワランティーを利用しながら10年使用すると考えましょう。1年にかかるコストは 42,900円。ひと月あたり 3,575円 です。(1日あたり119円!ちなみに E○VE社 の日本国内ワランティーは5年間。)

ハブの堅牢性とメンテナンス性は世界が認めるもので、使い続ける事ができるのは保証されています。(ぶっちゃけ飽きたら組み替えることもできて、その後の汎用性も高い。)これが高いか安いかはその方の価値基準にもよりますが、こういう部分が彼らがオファーする「リーズナブルプライス=理由がある価格」です。

1994 ~ 1995 年の一年間だけ製造されていた初期型の Classic ハブ(レッド)はいまだ現役

刹那的な軽さも魅力的ですが、その製品に時間軸を置いてみた時の評価みたいなものも、プロダクションにおいて本当はとても必要なことなんですよね。

僕は「何かを買うことは、その作り手に投資 / 投票 すること」だと思っているので、この動きに自分も参加した気持ちがしていて、このホイールセットを精神的な面でも気に入っています。

乗ってみたレビュー

とはいえ、乗らないことにはこの製品の本当の良さはわからないでしょう。

アリバのケイタくんと共同で開催している WONDER HOPPER の試走と兼ねて。

同色のデカールなんで、主張のない超控えめなルックス。カーボンの繊維感があるテクスチャがいい感じ。

ハブは新色 Midnight で。ステルス感ある。

タイヤは TERAVAIL Rampart Light & Supple の700×43c で。道東のツーリングで半端なく調子良かった熱い信頼のあるタイヤ。

今回はオンロードメインで、オフロード / グラベル の割合は10%以下のルートです。

台風一過でジャブジャブな路面、ギャップ、落ちた枝、石など、路面はシビアな状況でしたが、驚かされたのはそのスムースさ。

走り出しのスピードの乗り方は非常に軽くて路面のインフォメーションが少なく、突き上げが超ソフト.

道東ツーリングは同じタイヤで Velocity Aileron × Chris King Hub だったのですが、乗り心地が全く異質。

CK Hubの特徴である “Angry Bee(怒った蜂)” サウンドも大人しくなった気がします。(いや、実際なった)

FusionFiber®︎ 素材が持つ振動吸収性によるものが多いのか、多少のギャップや落ち枝も苦もなく進む事ができました。

実際彼らのサイトではこう語られています。

ARD44 は、平地、登り、コーナーで全力のスピードを求める本格的なサイクリスト向けに設計されています。平坦な舗装路から荒れたグラベルロードまで幅広い路面で威力を発揮するエアロホイールです。

私たちがリムに使用する革新的な熱可塑性カーボンファイバーであるFusionFiber®の使用を開始したとき、ロードノイズを吸収し、安定した状態を保つその能力は、それが超高性能ホイール構築の一部になる可能性があることを示唆していました。

私たちが ARD44 を作るのは、ロードホイールとして最高のものであると考えているからであり、より遠くへ、より長く、より速く走りたいと思わせるようなアイデア、製品です。 

CK社 HPより

そしてダンシング時の左右にバイクを振った時の軽快さ。フレーム変えるよりインパクトありそうな感触がありました。

あと、最初は空気圧を高圧で乗ってたのですが、途中から少し低圧気味にしてみたら、乗り心地がよりスムースに。このホイールはチューブレス+低圧で乗るのがマジでおすすめ。

大袈裟に例えると、絨毯の上を走っているような感覚に陥ります。

どこまでも走っていけそうな感覚。

今年買ってよかったもの暫定一位。

ちょっとベタ褒めしすぎましたし、CKファンとしてちょっと偏っていることも否めないレビューですが、個人的な意見として聞いていただければ幸いです。

Chris Kingホイールは現在受注制で受け付けていますので、こちらをご覧ください。

ご質問などはサークルズへお気軽にご相談くださいね。

試乗してみたいって方はぜひサークルズへ〜!僕ので試乗してみましょう!

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kimura
木村 まさし

Circles /SimWorks /CWD /文化中毒者 イカれちまった人生をやり直しに名古屋へきました。Circlesを他の誰にも似ていないものにするのがお仕事です。自転車はもちろん、服や写真、読書や映画、音楽など、歴史や文化と知性があるものが好きです。
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