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BIKE to Arcade – 魅力的なお店が街をつくる

那智勝浦の漁港の向かいには、半島ひとつが丸ごとホテルになっている「ホテル浦島」という観光ホテルがある。その名の通り、浦島太郎を彷彿とさせる亀の形の船に乗ってアクセスする仕組みになっている。

今回のArcadeの景色は本当に竜宮城の幻だったかのような不思議な感覚が残っている。普段はマグロが並ぶ漁港に瞬く間に立ち上がった商店街。日本各地と和歌山全県から選りすぐりのお店が集まり、本当に大勢の人が訪れて美味しい食事に舌鼓を打ち、様々な出店を巡る。どの出店ブースも熱量高く、コミュニケーションに真剣で、そんな集まりが会場の熱気を作り上げていた。そして開催翌日の早朝にはまたマグロが並ぶいつもの風景に戻っていた。

BIKE to Arcade

サークルズではBIKE to Arcadeとしてライドツアーと、サイクルクロークの駐輪サービスを実施。自転車で走る事はその土地を身体的に理解しようとする事。まずは走ってみたかった。

気持ちよく晴れた土曜日は、サイクルトレインを使って新宮まで移動し、裏道や熊野古道を繋いで会場まで戻るライドツアーを実施。地元自転車店ホイールアクションさんのお客様が多かったけど、普段走っている場所でも、いつ誰と何を目的に走るかで、得られる体験はかなり違ったものになるので、とても楽しかったと好評だった。

二日目は雨。屋根のある野外マーケットは変わらず大盛況だったけど、さすがにライドは中止。本来は串本スタートで古座川周辺を少し回ってこようと考えていた。なぜかというと、司馬遼太郎の街道をゆくシリーズ8巻「熊野・古座街道」に影響されているから。

司馬遼太郎は古座川を旅する時に、少し前までこの地域に残っていた「若衆組」を思い起こしている。若衆組というのは、日本の古い習俗(社会制度)であり、農村の若者が身分や貧富の差を越えて横につながり、祭礼や災害対応などの力仕事を担当し、夜這いなどを通じて婚姻や出産を導く仕組みである。

誰が街をつくるのか

「次世代が暮らしたいと思える理想の街をつくろう」というのがArcadeのコンセプトである。

シャッターが下りているお店が並ぶ商店街は地方衰退の象徴的に捉えられる事が多いが、あえてアーケードという名前で魅力的な専門店の集合を生み出そうとするマーケットは、古い世代の慣習に縛られない若衆が仕切る祭礼の現代版のように思える。

試走の時に話をうかがった市場関係者の方も、このマーケットの試みを「こうやって新しい事をやってくれる若者がいて、人がたくさん来てくれるのは凄いし、嬉しい。」と、理解と協力を惜しむ事がなかったのも凄く良かった。紀南地域は方言に敬語が無いほど縦割り社会の縛りが少なく、新しい事を成すのに適しているのかもしれない。

3年ごとに移動するマーケットイベント”アーケード”は来年もう一度那智勝浦で開催される。アクセスは大変だけれども、そこには桃源郷と地方の新しい街の風景がある。ぜひまたみんなで行きましょう。自転車で。

Arcade RADIO episode.7 での話

アーケードに関連して、そのキーマンに話してもらうポッドキャストシリーズ「Arcade RADIO」。自分もホイールアクション店主の西村さんと「自転車と街」というテーマで話しました。自転車は全てを解決する!という自転車原理主義的な話で恐縮ですが、ぜひ聞いてみてください。また、その他のゲストの話も、地方の面白さや生き残り方について非常に示唆に富んだ内容なので一緒にチェックしてみてください。

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武井良祐

もんじゃです。CirclesやSimWorksのWEBまわりを担当しています。その他にバイクロアを開催したり、駐輪サービスCYCLE CLOAKなど色々やっています。祭りや建築、温泉、山、イベントなど面白い目的地を目指してライドに行くのが好きです。
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