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Velocity, Made in USAであることの意味

The Radavistより引用

多種多様な製品で溢れているこの世の中で、他者のレビューに影響を受けず、本当に自分が「良いモノ」であると思えるものに出会うのは、意外と難しいものです。

そして「良いモノ」であるという基準は、一見絶対的に見えますが、実はいろいろな側面があるということを私たちはモノから学びました。

モノが好きで、色々なモノを買い、使い、時に壊し、それを直して使い続けながら学んでいったのです。(それは自転車だけでなく、洋服や、カメラ、楽器や家具、絨毯…などライフスタイルで目にする、手に取るモノ全般に興味関心が広がっていってしまう、私たちのような人種の業なのかもしれませんが)

日常で毎日使用するモノは必ずしもハイスペックが「良いモノ」ではないということや、毎日使うからこそ色や柄の好みだけでなく、耐久性の面において堅牢性を求めたり。安さよりも知っている人や信頼できる人たちから買ったほうが結果長く使い続けることになることを知ったり、結局のところ最新のものよりもクラシックなマテリアルが何十年もの歳月に耐えうるモノだったりすることを。

私たちは必ずしも「ハイスペック」を求めていません。それは「軽い」より「丈夫である」ことや「直せる」ことが日常生活ではメリットになる事があることを Chiris King やアメリカンワークウェアから学びましたし、クラシックなマテリアルがなぜ何十年もの月日が経っても「美しい」と言われるのか?を NITTO 製品やヴィンテージの世界から学んだからです。

私たちが持つ価値観において、本当に良いと思うモノを取り扱いし続けたいと思っています。今回はそんな価値観で取り扱いをし続けているVelocityというブランドを The Radavist のアーティクルの翻訳を絡めながら、改めて紹介しようと思います。

(もちろん、あなたにはあなたのモノサシで「良いモノ」を見定めていただきたいですし、そういう多様な価値観に溢れた世界であり続けていて欲しいと心から願っています。)

From USA , Made in USA.

サークルズが独自に輸入して販売しているリムがあります。

Velocityというブランドなのですが、ご存じでしょうか?
ご存じであれば嬉しいのですが、私たちがこのリムをなぜ取り扱っているのか?それには少しだけ理由があります。

(そしてVelocityはサークルズの卸部門であるCWDから全国の契約販売店さまへ流通させていただいています)

モノづくりへのクオリティ、センス、プライスレンジなど、取り扱うための最低限の条件はもちろんありますが、彼らの製品を仕入れ続けたいと特に思わせるのは「Made In USA」であることです。

それは一昔前にあったような、アメリカ製への憧れやブランド力ということではありません。

自分達の主要なマーケットで自国生産をしているという事実。それが私たちを惹きつけ、リスペクトすべきブラントであると考えているのです。(設立当初はオーストラリアでしたが)1991年に始まったアメリカでのリム生産を、彼ら継続しており、今後もアメリカ生産を続けていくでしょう。

The Radavistより引用

自国の生産物を自国で消費できる。日本に住んでいると分かりにくいのですが、これは凄いことなのです。
例えば、自動車。TOYOTA、HONDA、NISSAN、MAZDA、SUBARU、SUZUKI…挙げればキリがないほど日本で生産しているメーカーがあります。しかし世界のほとんどの国では、自国内に数社しかないか外資の傘下にあるか、あるいは全くない国もあります。

つまり、自国で生産された自動車に乗ることができない国は意外なほどたくさんあるのです。
また自分が製造している製品が輸出品ばかりで、自国では消費することができない高額なものを製造している国もたくさんあります。

私たちはまだ日本製の製品が購入できる環境にあります。そんな国に住んでいる人が感じにくいくらい、実はグローバリゼーションは進んでいて、工業製品においては自国生産品を自分たちで消費するということの方が珍しくなってしまったのです。

そういった前提でアメリカという大きなバイシクルマーケットのある国(一説には日本マーケットの10倍あると言われています)において、「自国生産」をしているブランドが一体いくつあるでしょうか?

これは自転車産業だけの話ではありませんが、その昔多くのブランドはアメリカ(自国)で製品を製造していました。しかし、レイバーコストや原料の高騰により、海外生産に移っていったブランドがほとんどです。そして自国内での生産設備は無くなってしまい、もう一度やり直すことも難しいというのが現在の状況です。

そんな中、私たちがリスペクトしているアメリカのバイシクルカルチャーの中で、自分たちの情熱を注ぎ続け、製品を自国で生産しているということ。この事実に私たちが取り扱い続けたいと思えるモチベーションの一つがあります。このサイクルを回しづつける仲間でありたいと願っていますし、この価値観を日本のマーケットにも紹介したい。そんな気持ちでVelocityを取り扱っています。

実はアメリカに住む人々が我々の供給している NITTO 製品 や HONJO 製品をリスペクトしてくれるのは、クラシックなマテリアルを使い続け、自国内でモノを生産し続けている。マーケットのある場所で自分たちが使うものを作り続けている。この事実が一つの要因でもあります。

アメリカのマーケットを見ていると、日本マーケットにおいて NITTO さんや HONJO さんは、ほとんど奇跡と言ってもいいくらいのことをやっていらっしゃると言っていいでしょう。そう、Velocityが、Chris Kingがこの事実の尊さを改めて私たちに教えてくれたと言えます。

蛇足ですが、アメリカの事例が教えてくれるように、NITTO さん、HONJO さんはじめ、SimWorks のモノづくりの出発点は全てこのモチベーションから始まっています。

上記の話はあくまで数多ある価値観の話であり、ナショナリズムを掲揚したり、海外生産の製品を卑下する意味はもちろんありません。一つの価値観として、皆さんに知っていただきたいと思っていることです。

Manufacturing with Passion

前置きが長くなりましたが、この文章を書きたいと思ったモチベーションが、The Radavistで掲載されていたあるアーティクルでした。このアーティクルが私たちのモチベーションに限りなく近く、代弁してくれているものと思っておりますので、翻訳とともにご覧いただければ幸いです。(引用符、写真は全て The Radavist より引用)

情熱のあるモノづくり。ベロシティUSAのグランドラピッズのホイール工場

Manufacturing with Passion: Velocity USA’s Grand Rapids Wheel Factory

BY: JOSH WEINBERG & JILL MARTINDALE
OCTOBER 18, 2021

この夏、私の故郷であるミシガン州グランドラピッズを訪れた際、精巧でカラフルな成形アルミニウムを製造しているベロシティUSAに立ち寄りました。

エンデュランスレースの愛好家であり、冬の気候をこよなく愛するジル・マルティンデールさんが、時間を割いて製造現場を案内してくれました。

私は長い間Velocityのファンで(20年前のDeep V をまだ持っています)、Jillと一緒に工場内を歩き回り、それぞれのリムとホイールを作る精密な工程を観察し、それを実現する人々に会ってとても感激しました。

During a visit to my hometown of Grand Rapids, MI this past summer I stopped in at Velocity USA, purveyors of finely shaped and colorful formed aluminum. Jill Martindale – resident endurance racing aficionado and winter weather lover – graciously took time out of her day to show me around their manufacturing facility. I’ve been a fan of Velocity for quite a while (still have a 20ish-year-old set of Deep Vs kicking around) and was very geeked out roaming around the factory with Jill, observing the precision processes that go into creating each rim and wheel build, and meeting the folks that make it all happen.

工場は巨大なコの字型をしており、原料のアルミニウムはコの字の端にある出荷ドックから受け取られ、時計回りに工場フロア内の様々な工程を経て、リムまたはホイールセットとして箱に詰められ、反対側にある別のドックから出荷される仕組みです。

The facility is laid out pragmatically in a giant U-shape that operates something like this: raw aluminum is received through a shipping dock on one end of the U, goes through various processes around the factory floor in a clockwise direction, and then is boxed up either as a finished rim or complete wheel/wheelset to be shipped out via another dock on the opposite side of the U. Jill’s tour included detailed descriptions of each aspect of the wheel manufacturing operation, in addition to the history of the company and how they ended up in Grand Rapids.

しかし、この施設で最も印象的だったのは、皆が満足し、楽しそうにしていることでした。

今まで行った職場の中で最も明るく楽しい職場のひとつで、みんなのジョークや面白い話で笑いすぎて写真がブレてしまったほどです。

これは、社員とリーダーが作り上げた環境が、製品、サポートするアスリート、そしてブランド全体のストーリーに現れている証拠だと思います。

取材後、私はジルに、ヴェロシティの製造工程に関する重要なポイントをいくつか送ってくれるよう頼み、私のルポルタージュに抜けがないようにした。その結果、見事なまでに完成度の高い社史ができあがりました。

The aspect of the facility that most stood out to me, though, was how satisfied and happy everyone seemed. It was one of the most upbeat and fun workplaces I’ve been to; everyone’s jokes and funny stories caused me to take quite a few blurry photos from laughing so much. For me, this is a testament to the environment created by the employees and leadership, which comes across in the products they make, athletes they support, and overall brand story. Following my visit, I asked Jill to send me some of the important points about Velocity’s manufacturing processes to ensure I didn’t leave anything out of my reportage. In return, she ended up sharing a fully-baked and wonderfully written company history.

(この続きはジル・マルティンデールが書いています。)

ベロシティUSAは、1989年にトム・ブラックがオーストラリアのブリスベン郊外でスタートさせました。

最初の製品は「ベロケージ」と呼ばれる調節可能なアルミニウム製水筒用ケージで、トムの兄、ジョン・ブラックがアメリカで販売を開始しました。

1991年には初のアルミ製リム「Aero」を発表し、カスタムホイールビルダー向けに、サイズ、穴あけ、カラーを問わずリムを大量生産できることで有名になりました。

1998年にはフルビルドホイールの提供を開始し、2011年にはミシガン州グランドラピッズにホイール部門を設立し、ユニークで特殊なニーズに対応したカスタムハンドビルドホイールを製造できるようになりました。

The remainder of this story is written by Jill Martindale

Velocity USA was started in 1989 by Tom Black outside of Brisbane, Australia. Our first product was an adjustable aluminum water bottle cage called the ‘Velocage’, and Tom’s brother, John Black, began selling the cages in the United States. In 1991 we introduced our first aluminum rim, the Aero, and we made a name for ourselves by being able to produce any quantity of rims in any size, drilling, or color for the custom wheel builder. In 1998, we began to offer fully built wheels and in 2011 we created the Wheel Department in Grand Rapids, Michigan, so that we could produce custom hand-built wheels for unique and specific needs.

2012年、トムはオーストラリアの工場をフロリダに移し、米国で唯一のアルミリムメーカーとなりました。

フロリダでリムを製造し、ミシガンに出荷してホイールに組み込んだり、他の卸売業者、ディーラー、ホイールビルダー、フレームビルダー、または一般消費者にディストリビュートしていました。

2016年、私たちはジョン・ブラックを癌との闘いで失い、30年以上連れ添った妻のリンダが会社の共同経営者として後を継ぎました。トムとリンダは工場を統合し、すべてをミシガン州の自社工場で行うようにしました。私たちはアリゾナからアルミニウムの押出材を調達し、ロール、ドリル、アルマイト、ビルド、ディストリビューション、すべてをここグランドラピッズの工場から行っています

In 2012, Tom moved the Australian factory to Florida, and we became one of the only aluminum rim manufacturers in the United States. We made the rims in Florida and shipped them to Michigan to be built into wheels or distributed out to other wholesalers, dealers, wheel builders, frame builders, or the general public. In 2016 we lost John Black to his battle with cancer, and his wife of over 30 years, Linda, took over as co-owner of the company. Tom and Linda consolidated factories, so that everything was done in house, in Michigan. We source our aluminum extrusion from Arizona and roll, drill, anodize, build or distribute, all from our factory here in Grand Rapids!

プロファイルデザイン社から送られてきた長い帯状の押出材は、ここで手作業で(機械を使って)円形のコイルに巻かれ、個々のリムにカットされます。

リムの内側の空洞に合わせて完璧に成形された別の押出材の塊と接合剤を使って、リム同士をスリーブでつなぎ合わせます。接合部を熱処理して接着剤を固め、リムをドリルに移動させます。リムは切粉を除去され、工場内のタンクでアルマイト処理されます。

The long strips of extrusion come from Profile Design and once they’re here they get rolled by hand (with a machine) into a circular coil and then cut into individual rims. We use another chunk of extrusion, perfectly shaped to match the inner cavity of the rim, and a bonding agent to sleeve join the rims together. The join is treated with heat to set the bonding agent and the rims are then moved to the drill. The rims are cleaned of swarf and then anodized in our tanks here in the factory.

ポリッシュしたリムは地元の研磨業者に出し、パウダーコーティングした白いリムも地元の会社に出しています。

その後、リムは旋盤で加工され、必要に応じてリムブレーキに使用できるようになり、デカールが貼られ、組み立てまたは出荷の準備が整います。私たちは、ペニーファーシングのリムを製造したり、他の会社と協力して小さなパーツをアルマイト加工する喜びを味わってきました。

標準のブラック、シルバー、ポリッシュ、ホワイトのリムに加え、8色のカスタムカラーを提供していますので、あなたのライドにちょっとした盛り付けのようなものだったり、センスを加えることができますよ。

We send the polished rims out to a polisher and we send our powder coated white rims out to a local company in town as well. Then the rims are machined with a lathe to be used with rim brakes if needed, decaled, and ready to build or ship. We have had the pleasure of manufacturing penny farthing rims and working with other companies to anodize small parts for their own use. We offer eight custom colors in addition to our standard black, silver, polished, or white rims, so that you can add a little garnish and flair to your ride!

ベロシティUSAには17人の社員がおり、全員がサイクリングと自転車コミュニティに情熱を持っています。私たちは常に、さまざまなタイプのライディングを網羅する多様なリムを製造することで、私たちの製品が際立っていると感じています。

リカンベント、モビリティ、グラベル、ロード、マウンテン、カーゴ、E-bikeなど、大柄なライダー向けのホイールを製造しています。現在18種類のリムを製造しており、サイズは16インチから29インチまで(たまにペニーファージングリムを含む)、幅は19cからプラスサイズのタイヤまで対応し、様々なハブオプションに対応したドリル加工が施されています。

There are 17 employees here at Velocity USA and we are all passionate about cycling and our bike community. We have always felt that our products stand out because of the variety of rims that we are able to manufacture that encompass all of the different types of riding. We build wheels for larger riders, for recumbents, mobility companies, gravel, road, mountain, cargo and E-bikes. Currently we produce 18 different rims in sizes ranging from 16″ to 29″ (including the occasional penny farthing rim) in widths which allow 19c to plus size tires, and in a magnitude of drillings for different hub options.

ライダーの体重やタイヤサイズに応じたスポーク本数やリムの推奨を行うため、「キルドーザー」と呼ばれる機械で模擬負荷テストを行い、最も効率的で性能重視の最強のビルドを可能にしています。

また、他の自転車部品メーカーと協力し、米国製の完全なホイールオプションを提供したり、お客様の特定のニーズに応えたりもしています。

We test our rims under simulated loads on a machine that we call the “Kill dozer” so that we can recommend specific spoke counts or rims based on a rider’s weight and tire size, to allow for the most efficient, performance-oriented and strongest build. We also work with other bicycle component manufacturers to offer complete US-built wheel options or to cater to our customer’s specific needs.

以上。

このエントリを最後まで読んでくれた方には何かしら感じるものがあったのではないかと勝手に思っております。Circlesでは、Velocityの全ラインナップを実際手に取ってご覧になれますので、ぜひ店頭にいらしてください。お話ししましょう。

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木村 まさし

Circles /SimWorks /CWD /文化中毒者 イカれちまった人生をやり直しに名古屋へきました。Circlesを他の誰にも似ていないものにするのがお仕事です。自転車はもちろん、服や写真、読書や映画、音楽など、歴史や文化と知性があるものが好きです。
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