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モノを作る意味、物を語る意味があるとするならば。

昨年、SimWorks USAが企画をして、極少量をアメリカにて生産、おかげさまで好評を得たフレームセットのHigh Plain Driffterというモダンクランカーフレームがあります。 (お目の高い数名の日本在住サイクリストの手にもすでに渡っているかとおもいます。)

このプロジェクトの発端は、SimWorks USAのジェネラルマネージャーである Steven Smith が長年彼の頭の中に温めていた夢だったのでした。 その物話については先日公開された SimWorksのブログ / A Portrait of an Artist as a Young Man. にて詳しく書かれていますので、またお時間のあるときにでも読んでくれたらとても嬉しいです。

話は変わりますが、ここからはとても個人的な話になります。
私がサークルズを始める随分前から、そしてこのブログを書いている正に今も、モノを作る意味と物を語る意味をずっと探し続けています。 残念ながら皆様に胸を張ってお答えできるような答えは、この文章を書き出した今はまだ見いだせていません。 しかしながらStevenの文章を読んだときになんとなくその答えのヒントを見つけることが出来た気がしました。 なので筆を走らせながら自分の頭を整理していければと思っています。

この話の足がかりになると良いのですが、「人はなぜ仕事をしないといけないのでしょうか?」 という中学生に問いかけるような質問をみなさまも見かけることがあると思います。

おとな? になってしまった私たちにとっては、極論、まぁ生きるためになるのですが、おとなになった今だからこそ、更にその問いかけを進め、「どうしてその仕事を選び、どのような思いでその仕事に従事していますか?」 そしてさらにシンプルに「今の自分は幸せなのだろうか?」 くらいまで重ねて問いかけてみます。

少し年をとった私は、このような悩みを若かりし青春時代にどのくらいの深さまで掘り込んでいたのだろうか考えてみたりもします。 そしてその時代に自分自身への答えが出ていたのだろうか、少しでも妥協や諦めがなかったのだろうか、様々な思いがめぐります。 では今一度問いかけてみます、自分はモノを作る意味、物を語る意味を見出せたのかと。 もしかしたら、こんな背中がこそばゆくなるような問いかけに、諦めずに向き合うことこそが、たぶんモノを作る意味であり、物を語る意味でもあるのではないだろうかと勝手に思うわけです。

今世紀に入り、情報化がハイスピードで進むにつれ、当っている、間違っているは置いておき、多くの情報がわりと簡単に手に入るようになりました。 そしてモノを買う側も売る側も、その有効性を認識し、情報によって、より効率的にそしてわかりやすい形で提案、提供しようと日々社会活動を行います。 決してそれらが良いとか悪いということを話したいわけではありません。 ただモノを作ることや物を語ることは、技術が進みどこまでも情報の処理が増えたり、早くなったとしても、実際にそうそう簡単には説明できない事だらけであるということが真実ではないかと思います。

だからこその “程々な” マスプロダクションの製造という定義は近年面白いのだろうなと私は考えていたりもします。 ハンドメイドのフレーム、ハンドル、他業種で言えばスーツやシャツ、ガレージメーカーと呼ばれるアウトドアメーカー、私たちも含め、多くのスモールメーカーの目的とは、自分たちができる範囲で、伝わる範囲で作ったり、語ったりすることは少ない分母だからこその濃い物事となり、創造者、製造者、そして消費者にとって、とても気持ちの良いことだなと感じるからかもしれません。 これらスモールメーカーは大量に生産ができませんので、決して大きな儲けを産み出すことはできないかもしれませんが、豊かな仲間と “パンを分け与える” ことぐらいはできるのではないかと私は信じています。(ちなみにカンパニーとは、弊社のベーカリー部門であるPFM が得意としているパンの一種、カンパーニュと同じ語源にあるようです。)

趣味の世界とはとても狭く、独りよがりになりがちです。 世界を含めたパイを見てもやはり狭く、狭いがゆえに情報は偏りがちになってしまうことが一般的だと思っています。 そんな小さな世界ですら、マジョリティとマイノリティが存在したりするので不思議でもあります。 私たちサークルズはそんな事実を理解したうえで、自分たちが存在する小さな世界の素晴らしさを、モノを作ったり、物を語ったりしてより多くの仲間と気持ちを共有したいと思っていますが、この世界の全員に理解されようとは思っていませんし、もし仮にそんな世界ならばきっとすごく気持ちが悪いはずです。 それは我々の世界だけではなく、一番人口が多いとされる趣味、釣りなどにおいても同じことだと言えるでしょう。

とどのつまり、好きなこと、やるべきことをちゃんと身につけることが、生きるために必ず必要であるということが私の答えであり、経験を重ねることによって学び、そして遊びや仕事の中で自分と社会にとって大切なことを見つけ、またそれを繰り返す、そんな自分にとって大切な物事を “自分になる” ところにまで持って行けたなら、きっと私が書いているこのくだらない物語にすら意味が出てくるかもしれません。

長くなりましたが、この小さな世界の、僕たちの大切な仲間が心を込め、自らの経験に基づいて作った、タフで少し重くなってしまうことが多いですが、とても直感的に使いやすく、しっかりとクールなフレーム、ハンドル、カバンやクロージングなどの製品をみなさんにご紹介できることが私たちの喜びなのです。 

ぜひアメリカ国内にて手作業で1本ずつ丁寧に製造されている、 SimWorks by DOOM High Plain Drifter Bar をお見お知りくださいませ。

SimWorks by DOOM
High Plain Drifter Bar

【SPEC】
Material : CrMo Steel
Width : 800mm
Rise : 80mm
Back Sweep : 13deg.
Up Sweep : 4deg.
Center diam. : 22.2mm with 31.8mm shim
Bar diam. : 22.2mm
Material : Crmo Steel
Finish : ニッケルメッキ & ビードブラストショットフィニッシュ
Option : SimWorks meets Doom コラボレーションロゴ
Made by Keaton Haire of DOOM BARS in Albuquerque, New Mexico.

High Plains Drifter バーは、DOOM BARS と SimWorks のチームワークによって開発された新しいハンドメイドハンドルバーです。 バランスを第一に考え設計がされているので、どなたにとってもニュートラルで心地の良いハンドリング感覚を味わってもらえるはずです。 その見た目からライズとバックスイープのスタイルはカジュアルなクルーザータイプにみえるでしょうが、アグレッシブなライディングをも完璧にこなせるようにと味付けをしてあるので、トレイルフィールドでもご堪能いただければ感無量なのです。

最後にですが、アルミやクロモリのチュービングを正確に曲げるという作業はとても難しいです。 最近では技術の急速な発達で、大きな世界の人達はいとも簡単にグニグニと曲げてしまうらしいのですが… 私たちが住む、小さな世界においては、世界に誇る日東ですら、我々の問いかけにはいつも頭を抱えながら、出来る、出来ないの禅問答を繰り返してくれています。 簡単に言ってしまえば、小さな世界の住人はオールドスクールなヒップホップなのかもしれませんが、安全というプライオリティを人力で担保しながら、出来る範囲でベストを尽くす、ということなのです。 DOOM BARSのKeatonも同じ気持ちでハンドルバーを作っていますし、私たちのDoppoフレーム同じです。

もしこの小さな世界であなたの好みに寄り添うことが出来、それらを使って、心より楽しんでくれれば、私たちもモノを作ったり、物を語ったりしていることが何らかの意味となるのかもしれません。 そしてそんな物語をブースやお店に来て、伝えてくれる “仲間” に出会えることこそが私たちがモノを作り、物を語る意味だということを、文章を書きながら正しく見いだすことができました。

それでもまだまだ道半ば。今後とも末長くこの探求を続けていきます。

最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

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kyutai
田中 慎也

空転する思いと考えを自転出来るところまで押し上げてみた2006年。自転し始めたその空間は更なる求心力を持ちより多く、より高くへと僕を運んでいくのだろうか。多くの仲間に支えられ、助けられて回り続ける回転はローリングストーンズの様に生き長らえることができるのならば素直にとても嬉しいのです。既成概念をぶっ飛ばしてあなただけの自転力に置き換えてくれるのなら僕は何時でも一緒に漕ぎ進めていきたいと思っているのだから。
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