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上野明日美のRidin’Birds走ってきましたブログ


 
まるで鳥になって山を飛び越えているかのような、そんな感覚で自転車に跨っている時間がそこにはあった。

9月23、24日の2日間で西伊豆を舞台に開催された、simworks主催のRidin’ Birds Passhunting FLYINGHILL
これは一言でいうと「伊豆の山・食・海を満喫する自転車×キャンプイベント」。だけどその内容はもっと深くて、“自転車でツーリングしつつ、キャンプも堪能したい。でもキャンプ道具は持っていないし、キャンプ道具を積む装備も自転車についていない。でも普段の日常とは違う、非日常的な場所を走ってみたい、一度くらいはキツいと言われているルートに挑戦してみたい、、、。”

そんな「〜してみたい、でも」って思っている人の背中を押してくれる、自分にとっての挑戦を最高のかたちでサポートしてくれるのがRidin’Birdsだと私は思っている。

というのも、ここで泊まるキャンプサイトはテントは設営済みで必要物は寝袋のみ、朝昼夕の3食だって専属のシェフがそれぞれ腕をふるって用意してくれる。しかも宿泊に必要な荷物はすべてスタッフが預かり運んでくれるので、一番挑戦したいライドには自分の身ひとつで挑むことができるからだ。

『ライドがキツいのは望むトコ。でもそれ以外のアレヤコレヤは気軽に楽しみたい。』

このRidin’Birdsは今回が2回目なのだが、3年前に行った第1回目を特集したアウトドア雑誌『HUNT』にこの一文が載っており、私はがっちり心を掴まれた。自分の思いがぴったりだったからである。この特集記事を初めて読んだのは今年の2月頃だったが、すごくおもしろく魅力的な内容が詰まっていて、読んでいるだけでわくわくした。HUNTはアーリーバーズの本棚に置いてあるので、ぜひ手にとって読んでみてほしい。
 

 
あれからあっというまに半年以上が過ぎて、夢のようなイベントだと思ったRidin’Birdsに、私も自分のAll Cityを持ってスタッフとして同行し、DAY1、DAY2ともに参加者の皆さんとみっちりペダルを回させてもらいました。7月に行われたRAL浜松編で新城〜浜松間の峠を越えてからちょうど2ヶ月が経ち、私にとっては2回目となるライドイベント。
 
走ることはもちろんだけど、今回は2日目の補給食の担当を任されたこともあり、前回のRALの時とはまた違った緊張とともに伊豆へ向かった。
 


 
 

<全力疾走のDAY1>

 
雨予報だった天気も夜中のうちに雨雲は消え去り、前日入りしていたキャンプ場で明るい夜明け空を迎えた当日の朝はホッとした。
 
集合場所の下田駅に今回の参加者が続々と集まったところでDAY1のライドは始まり、最初のポイントで下田名所の竜宮窟までは全員並んでのんびりと海沿いを走る。やっぱり伊豆の道はいい。とにかく海が綺麗で、その青さに目を奪われる。
 


 
 
竜宮窟を過ぎたあたりから早いスピードでガンガン走って行きたい組と自分のペースで走って行きたい組の2つに分かれて急坂の待つ山の中へランチポイントを目指し入っていくのだが、私は後方組に入ってスタート。ここでの一番の思い出は、サークルズスタッフのシゲさんに引いてもらってランチポイントまでの急坂を全力疾走したことだ。
 
1番後ろを走っていた私がランチポイント到着予定時刻の14時に間に合っていなかったため、他のスタッフが車で自転車ごと回収しに向かっているという事態をシゲさんに伝えられたのだが、私がそれを拒否しどうにか最後まで自走させてほしいと懇願したからだ。
イベント自体のタイムスケジュールにも差し支えるのでかなりのわがままであることはわかっていたが、名古屋に帰ったときに「途中で回収されました」、なんて絶対に言えないと思いシゲさんに前を走ってもらうようお願いした。結果、それまでの倍くらいのスピードでラストスパートの急坂に臨むことになったのだ。時間指定があるにも関わらず伊豆の景色と道のりをのんびりと楽しみ過ぎてしまっていたという、ただの自業自得である。
 
その急坂を登っている時間はシゲさんの背中を追いかけてペダルをまわし続けることにただただ必死で、かなり苦しかったが絶対に走り切りたい、という思いがなんとか足を動かし続けた。今の私に出せる全力スピードで坂を登り続けた結果、前を走っていた後方組の後ろ姿が見えるところまで距離を縮めることができて、みんなと一緒にランチポイントにたどり着いた。そこでは事情を知っていたみんなが笑顔で出迎えてくれて、その瞬間に辛かった全力疾走はいい思い出に変わった。
 


 
 
今回のランチポイントは山道からさらに自転車を降りて押さないといけないほどの急斜面を上ったところにある別荘で、そこからは伊豆の海を見下ろすことができるのでとてもいいロケーションとなっている。
そこでは下田のハンバーガースタンド、EDY BURGER STANDさんが鉄板からジュウジュウとパティの焼ける音と香ばしい匂いを漂わせながらランチのハンバーガーを準備していてくれた。
また今回の宿泊場所であるキャンプサイトREN VILLAGEのスタッフであり、このRidin’Birdsにもあらゆる面から全力で協力をしてくださった茶屋さんもコーヒーと自家製シロップを使ったジンジャーエールとコーヒーを用意して待っていてくれた。
ストローについたRidin’Birdsのタグもとても可愛い。タグも自家製ジンジャーシロップも、実はこの日はMTBコースに参加していた茶屋さんの奥さんであるみなみさんのお手製。こういう小さな気遣いがとても嬉しかった。
 
 


 

ジンジャーエールでカラッカラに乾いた喉を潤し、EDY BURGERさんがひとつひとつ丁寧に焼いてくれるハンバーガーの列に並び、手渡されたチーズバーガーに用意されたピクルスやフライドオニオン、トマトなどのトッピングや数種類のソースやディップで自分好みのハンバーガーをつくる。

今日一番の難所を乗り越えたみんなで頬張るハンバーガーはとても美味しかった。
 
 


   
 

<秘密基地で過ごす伊豆の夜>

お腹を満たしたあとはもうひとっ走りして温泉へ。汗を流してさっぱりしたところで1日目の最終目的地、田子漁港へ向かう。
なぜ漁港かというと、今回のキャンプサイトREN VILLAGEは自転車で行けない半島の先っぽにあるからだ。そう、そこまでは漁港から船で渡らねばならないのだ。もちろん自分たちの相棒、自転車も一緒に乗せて。

船で数分揺られると、暗闇に橙色のあかりがポツポツと灯っているREN VILLAGEが見えてくる。このシチュエーションだけでもドキドキするのに、もっと凄いのはこれから到着するこの場所には私たちしかいない、ということだ。
REN VILLAGEは1日1組限定というのが特徴で、それゆえ予約がなかなか取れない人気のキャンプサイトなのである。まるで自分たちの秘密基地みたいな、そんな感覚。山から降りてきてもまだまだ続くこの冒険感がたまらない。
 
 


  
 
このREN VILLAGEで過ごした夜のひとときも本当に最高だった。

前回のRidin’BirdsやRAL浜松編の時と同様に、EARLYBIRDS BREAKFASTのケイタさんが今回も最高のディナーを振舞ってくれた。伊豆の食材を使った肉料理や魚料理をはじめ、色とりどりの野菜料理。テーブルに美しく並べられたタルティーヌ。こんな綺麗なテーブルを囲んで始まった宴が良過ぎたのは言うまでもなくて、そこには美味しいと楽しいの笑顔が溢れていた。そしてここには自分たちしかいないため、自分たちだけの空間をつくることができるのがまたいい。

持ち込んだDJ機器から流れてくる音楽に浸る人たちもいれば、焚き火を囲みながらお酒を片手に語り合う人たち。初めましての顔ぶれもたくさんいるのに、そこではもうみんな仲間だった。
 
 

 
 

<挑戦のDAY2>

最高の夜が明けて、迎えたDAY2の朝もまた最高だった。

テントを一歩出ると、昨夜は波の音と揺れている水面しか見えなかった海が爽やかな水色を映して一面に広がっていた。海の朝と夜の顔がまったく違い、その両方に出会えるところもまたいい。

そして朝こそ、EARLY BIRDS BREAKFASTの朝食を食べないと始まらない。PFMの食パンとコッペパンを使ったホットサンドとホットドッグ、バリスタみゆきさんが丁寧に淹れるPFMブレンドは朝ごはんの時間をさらに美味しいものにしてくれた。

朝食のあとは海を眺めたりカヤックに乗ってみたり浜辺を歩いたり、それぞれが思い思いに秘密基地での時間を過ごしたら名残惜しくもREN VILLAGEとはお別れの時間。DAY2のライドをスタートするため船に乗り込み再び漁港へと戻る。
 
 


  
 
このRidin’Birdsで挑戦という意味では一番のメインルートが、DAY2の「仁科峠」だ。
10kmの激坂が延々続く峠道で、しかも900mアップ。走る前はよく分かっていなかったこれらの数字も、走り終わった今ではいかにとんでもなかったかがよくわかる。「あれが今から登る仁科峠だよ」と目の前に壁のようにそびえ立つ山を指して教えてもらっても、「え、そもそもあれ登れるものなの?」という感じ。そんな疑いの目を持ちながら山道に入っていったけど、この仁科峠は私にとって一番の挑戦だったから「絶対に足をつかない」って決めていた。

徐々に傾斜が上がってきて、10%、12%っていう標識が出てきた時は特にキツい坂道、ということがわかってきたけど、中盤あたりで14%なんていう数字に出くわした時はさすがに信じがたかった。今までに味わったことのない、車では体感できないような傾斜に体も頭もびっくりしていたが、降りないって決めていたから無心でペダルを踏んでいくしかなかった。少しずつ進んでいくと少しずつ山がひらけてきて、ついに標高900メートルのところにある西天城高原牧場に辿り着いた。

そこからの景色は空と海が交わっているように見えるくらいで、それが今自分がこんな高いところにいる、こんなところまで自転車で登ってきたのだと実感させた。興奮が冷めぬままみんなで食べたご褒美のソフトクリームは、あっというまに口の中に消えた。
 
 


 
 
今回のRidin’Birdsで私が挑戦したことは2つあった。
1つ目は先ほどの仁科峠を登りきること、2つ目は私がつくったバナナブレッドを補給食としてみんなに提供すること、だ。
アーリーバーズで働くまでお菓子作りは初心者だった私だが、この半年間PFMのパティシエであるカズさんにPFMの仕込みを通してお菓子作りの基礎や知識を教えてもらっていた。アーリーバーズでも自分の焼いたお菓子を置きたいな、と思うようになったことがきっかけで、カズさんにバナナブレッドのレシピを伝授してもらい自分なりにアレンジをして練習をするようになっていた。そんなときに補給食のチャンスをもらい、即答でつくりたい!と言いRidinBirdsに向けたバナナブレッド作りが始まったのである。オーブンとにらめっこしながら焼き加減や中身の素材を考え、試作を繰り返し、補給食らしくエネルギー変換が早いハチミツとくるみをたっぷり使ったハニーバナナブレッドができあがった。

  

 
 
DAY2の2ヶ所目の休憩ポイントで私の補給食は提供されることになっており、そこに到着したみんながどんどん手を伸ばし、美味しい!と言って笑顔で食べてくれた。
絶対に美味しいバナナブレッドをつくって、少しでもいい時間に繋げたい、そう思っていたからみんなの「美味しい」や「ありがとう」の一言がとても嬉しかったし、自分のつくったもので誰かが笑顔になってくれたことに感動した。私にとって忘れられない休憩ポイントのひとときだった。
 
 

 
 
このハニーバナナブレッド、今ではアーリーバーズに置いてある焼き菓子の仲間入りをしているのでぜひお試しくださいっ。
 
 

 
 

<挑んだ先に>

この2日間で走った距離はトータル124km、登った標高は3319m。

数字って挑む前は逃げたくなることもあるけど、強気になって挑んだあとはすごく自信になるものだと思った。挑戦した先に見える景色は、本当に素晴らしい。仁科峠から伊豆スカイラインを駆け抜けているときは、まるで空を飛んでいるような、山を飛び越えているような感覚で、それはまさにFLYING HILLだった。

仁科峠の頂上は霧かかっていてそこから澄み渡る絶景を拝むことはできなかったのだが、その神秘的な空気の中を走り抜けていくのもまたよかったと思う。山も海も空も、毎日みせる顔が変わる。そのとき出会えた自然たちを大切に思って受け入れていけたら、どんな時間だって楽しむことができるのだと思えた。
 
 
 


 
 
そしてこんな時間を一緒につくることができた参加者のみなさんとスタッフに感謝の気持ちでいっぱい。険しい道のりのライド中も、汗を流しながら達成感を分かち合った時間も、笑顔で食事とお酒を囲んだ秘密基地での時間も、1人じゃ乗り越えることができなかったし味わうこともできなかった。

Ridin’Birdsを通じて、こうやってたくさんの人と知り合い、また再会を果たすこともできた。この出会いと過ごした時間が次にどう繋がっていくか、繋げていけるかが今から楽しみだ。
 
 


 
 
こうして伊豆を巡る大冒険は瞬く間に終盤を迎え、最終ゴール地点の丸天に向かう途中で遭遇した夕日の美しさは息をのむほどで、冒険の締めくくりには素晴らしすぎた。これはきっと2日間頑張ったチームRidin’Birdsへ、伊豆からのご褒美だ。真っ赤に染まっていく空と海に見惚れながら、やっぱり冒険には出た方がいいし、挑戦はした方がいいと思った。たとえそれが小さくても、大きくても。私もこの2日間で少しは逞しくなれたはずだし、できるようになったことも増えた。そんな伊豆はこれからの私にとって特別で、また来たいと思えるところになったしそんな場所が増えて嬉しく思う。
 
 


   
   
無事に全員でゴールを果たした丸天で食べる海鮮料理は、美味しすぎてついつい食べすぎてしまった。最後の最後まで、それはいい夜だった。
 
 

Ridin’Birds Passhunting
FLYINGHILL IZU ’17

http://sim-works.com/rbph17
  
 

Text by 上野明日美
Photo by Eri Tanaka / Shige / Shinya Tanaka / Manami / Rie Sawada

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