マウンテンバイクの分野において、昨今では26インチに加え27.5インチや29インチと様々なホイールサイズが存在し、また、プラス規格と呼ばれる太さ3インチ前後にも及ぶセミファットなタイヤなども次々と生まれ、かつてスタンダードと言われていた26インチが今となっては、トレンドからは遠く、とうの昔にスタンダードから転げ落ちてしまったかのよう捉えられています。
果たして、26インチは時代遅れなのでしょうか?
答えは、NO。
少なくとも、ここサークルズでは。
例えばサーリー/ロングホールトラッカーや、ディスクトラッカーは26インチ、そしてアラヤ/マディーフォックスや、スペシャライズド/スタンプジャンパーなど、今でも26インチのいわゆる使い切っている系のバイクの修理やメンテナンスの相談はとどまることがありません。
それはもちろん、松原にあるカルチャークラブでも同じように言えること。
そんな中で、シムワークスの定番タイヤであるTHE HOMAGE / ジ・オマージュ に新しく26インチのラインナップが加わりました。
遡ること90年台、オフロード自転車の楽しみはますますもって熱を帯び、アトランタオリンピック(1996)ではいよいよマウンテンバイク・クロスカントリーレースが正式種目に採用され、名実共にアクティビティのスタンダードへと躍進を果たしました。 オリンピックの種目となったことで、ロードレースの世界からクロスカントリーに転向する選手も増え、クロスカントリーのレースにおいて、タイトなセクションが続く下りのような、抜きどころが少ない箇所での性能より、加速性能、トップスピードが問われるパートでパフォーマンスの高いタイヤが求められました。
そんなレースのハイスピード化に対応するために、パナレーサーが開発したタイヤこそが「マッハSS」であり、何を隠そうオマージュタイヤのベースとなったものです。 純然たるレース用として開発されたマッハSSでしたが、その走りの軽さを追求したトレッドパターンがオフロードだけでなく、そこに至るまでのオンロードアプローチでもバイクの気持ちよさを失わない実力があることが認識されるようになると、路面状況を問わずにライドのパスを広げることのできる「楽しいタイヤ」として注目されるようになりました。
正にオールテラインなタイヤの実現は、もともとツーリングが得意なパナレーサーならではのエポックメイキングだったわけです。 そして、この遺伝子は現代のグラベルキング・シリーズへと受け継がれ、シムワークスのジ・オマージュタイヤへと派生しました。
こうして生まれたオマージュタイヤは、世界各地で、路面を問わず自転車に乗って遊びまくっているサイクリストたちのハートを掴んだのですが、その中でも特にアメリカから本当にたくさんのリクエストを受けました。
「26インチは作らないのか?」と。
そう。26インチが時代遅れだとされている現代においても、まだまだ使い続けている人たちはいるのです。 そうして、オリジナルであるマッハ SSの金型を使用し、26×1.95”という当時のスタイルでの現代に蘇りました。
実際、アメリカ西海岸では、多くのサイクリストが26インチの古いマウンテンバイクをコミューターやツーリングバイクのツールとして使っています。
昨年の夏にはポートランドに3ヶ月ほど滞在していたのですが、実に多くの往年のスチールフレームのマウンテンバイクが、リラックスしたハンドルや、お気に入りのバスケットやフェンダーをインストールされ、日々の足として、また週末にツーリングに行くためのファンツールとして活用されている光景に驚いたと同時に、26インチサイズのオマージュのリクエストが多いことにとても納得がいきました。
オンロードからその先のダートまで、路面を問わずに遊びきれるタイヤは当時のままに、そこにシムワークス流のエッセンスを落とし込み、ブラック/スキンサイドと、グリーン/スキンサイドの2色で展開されています。
早速お店に並べて販売を始め、その翌日にすぐこのタイヤを取り付けさせていただく機会があったのですが、そのバイクは昔から乗っていたマウンテンバイクをコミューターとして活用しているバイク。 実にうちらしいなと思ったのです。
ここ日本でも、まだまだ26インチのバイクを大切に使い続けている人は多く、実際こういったバイクのオーバーホールやメンテナンスのご相談が後を絶ちません。
自転車にまつわる最先端の技術や規格は日々進化を続けていますが、やはり僕らの考え方の根底には、ポイポイと使い捨てるのではなく、時には修理をしたり、正しく手を入れながら長く、正しく使い続けていきたいという思いがあります。
そうやって大事に乗り続けていらっしゃる方は、きっと名古屋だけでなく日本中そして世界中に多くいるはずです。 そういったみなさんの声から生まれたのが、このジ・オマージュ 26なのです。