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【BIKE of the WEEK】RETROTEC CYCLES 700c Tourer

MADE Bike Showをメインとした18日間のアメリカ滞在より無事戻ってまいりました。終わってみればと言うよりも、滞在中も毎日があっという間に過ぎていく感覚が強く、それだけ充実した滞在だったのだと思います。いやはや本当に怒涛の日々でした。ショー本番を控えた滞在前半戦は特に(笑)。

ということで、前回のBLACK CAT BICYCLESに引き続きMADEでお披露目された素敵なバイクをご紹介。今回はRETROTECから素敵な一台を!

カリフォルニア州ナパというワインの産地としても有名な土地に拠点を置く RETROTEC CYCLES 。元々は由緒正しいカスタムビーチクルーザーメーカーだったRETROTECというブランドを、ビルダーのカーティスが前オーナーから引き継いで、当時の出立のままカスタムオーダークオリティーのスポーツバイクとして昇華させたのが始まりです。

(RETROTECについては、ぜひこちらの記事もご一読ください。)

先述のクルーザースタイルを踏襲したラウンドトップスタイルは一度見たら忘れることはない、RETROTECのアイコンとも言えるスタイル。レースからファンライドまで自転車のありとあらゆる楽しみ方を熟知しているカーティスが作るバイクは、その見た目からは想像できないほどよく進み、一度跨るとその虜になってしまう人が多いのです。

そんなRETROTECをカーティスが始めてなんと今年で30周年を迎えます。(上の写真にある30周年デザインのTシャツは近々入荷予定ですのでお楽しみに!)

30年もフレームビルディングを続けていることは本当に尊敬すべきこと。実はMADE Bike Showが終わった後にビルダーたちとバイクパッキングでオーバーナイトキャンプをしてきたのですが、今年で55歳になるカーティスは、それを感じさせないほど相変わらず元気で、走っても本当に速い。というかサイクリストとしての強さがあるなとひしひしと感じました。

そんなカーティスが今回のショーで展示していたバイクの中でも一際存在感を放っていたのが今回紹介するバイクです。

写真で見ると650Bホイール?と思ってしまうかもしれません。フレームサイズが大きいが故に錯覚を起こしてしまいますが、700x50cというボリュームあるタイヤをアッセンブルしたツアラー的解釈のバイク。

カーティス御用達のペインター・Dark Matter Finishingによる3色塗り分けの素敵なペイントに目が行きがちですが、カスタムリアラックをはじめとした細かなディテールにこそ、RETROTECイズムが随所に見られるバイクです。

オンロードを意識した日本的なツアラーというよりは、オフロードを楽しむことを念頭に入れたダートツアラー的解釈のバイクですが、旅を豊かにするためにも積載力は必要不可欠。そんな中でパニアの装着を想定したリアラックは、700cホイールのカーブに綺麗に寄り添うようにシートステイと接合し、必要最低限のシンプルな構造ながら強度的にも安心してツーリングできるようカーティスの工夫が詰まったまさに芸術品の域。

しかも、シートステイとラックを繋ぐためのアイレットはステーの裏側に隠れて装備され、表から見るとそのクリーンな一体感に驚きます。このバイクを構成する上でリアラックは決して後付けのパーツではなく、フレームと一体となって成立するもの。だからこそ美しく取り付けたいというカーティスの心意気が詰まったディテールです。とはいえシチュエーションによっては取り外して純粋にライドを楽しむことだってできる。これこそまさにカスタムオーダーだからこそ実現できることです。

オーバーサイズのヘッドチューブからオリジナルのセグメントフォークの流れも美しく、各部のフィレット仕上げも涎もの。この手のバイクにドロッパーポストを入れるところはダートツアラーだからこその発想で素敵だなと思います。ツーリング中に不意に訪れたダートの下りも、これであれば安心ですね。

ペダルにはSimWorks Taco Pedalを、ハンドルは同じく Mowmow Barをチョイスしてくれています。シフターはあえてサムシフターにしていたり、コンポーネントはグラベル意識のGRXを使いながら、ブレーキは悪路や積載時の制動力を求めてXTRを使っていたりと、カーティスのセンスが光るパーツ構成も個人的には見逃せません。

ツーリングを楽しみつつ、その日の目的地に着いたら荷物を外して周辺の悪路を散策したり、普段はラックを外してライドを楽しんだりと、色んな楽しみ方ができる豊かなバイク。将来的にバイクを一台にしろと問われれば、僕はこんなバイクを選びたいかもなぁと思えるような素敵な一台でした。

30年のキャリアが物語る確かな技術はもちろんなのですが、何よりカーティス自身が持つその素晴らしい人柄に触れると、彼にバイクをお願いしたいと思う人も多いはずです。実はうちのボスからカーティスへは今回これまた楽しみなプロダクションのリクエストを投げておりますので、こちらもぜひお楽しみに。もちろんカスタムオーダーは常時受け付けておりますので、カーティスの作るバイクに惹かれたそこのあなた、是非お気軽にご相談くださいね。

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Ikeyama Toyoshige
池山 豊繁

Circles / SimWorks / CWD 学生の頃のメッセンジャー・サークルズでのアルバイトを経て、今に至る。 サークルズスタッフ最年少を公言していたが、今ではニュージェネレーションも加わり古参の存在。 でも身長は最小です(#163cmですがなにか)。 CXレース経験もありますが、今はのんびり瀬戸のグラベルを走ったりするのが専らで、過去の面影はどこへやら。自転車で釣り場にアプローチするBikeToFishingのスタイル研究にも余念がない。
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