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RIDEALIVE Vol.1 Mie DAY-1

「来年はRIDEALIVEを複数に分けて開催しよう。」

去年末からうすらぼんやりとイメージしていた今年のライドアライブの構想、それは今まで遊んできた地元のフィールドからさらに足を伸ばし、様々な土地でその土地の遊びの天才たちと一緒に新たなフィールド・新たなアクティビティを求め、遊ぶ事と生きる事の創造を楽しむことだった。

そんな話が現実味を帯びてきたとき、自分の頭の中では既に1つの遊び方をイメージしていた。 三重県の鈴鹿山脈を中心とした豊かな山のフィールドに囲まれた環境で新しい動きを始めている、鈴鹿の水先案内人ことADAPT SUZUKA / アダプトスズカの中村キョーヘイ君に話をし、そのイメージを伝えた。

自転車に乗ることと、山歩きという遊びをクロスオーバーさせようという魂胆だ。

実際、彼はすでにそんな遊びを三重で実際にやっていた。 まだ年明けに自身のお店を開いたばかりだったにも関わらず、2つ返事で僕らの思いに答えてくれたのだ。 こうしてRIDEALIVE今年第1回目となる、三重を舞台にしたBike To Hike and,Bikeの計画が始まったのである。

そうと決まれば話は早い。 お互いに時間を見つけては現場へ足を運ぶ。 初めて下見のライドをした時にはまだ峠に雪が残っていた。 ライドだってハイキングだって、やはりどんなルートをとるかはとても重要なこと。 お互いの経験をもとに、地図上に最良の線を引き、点と点を結ぶ。 飲食についてもとても心強い方々のご協力を得られた。 もちろん山にも下見に行った。 実は自分自身初めてのハイキングとなった下見の竜ケ岳では、山頂にまだ雪がしっかりと付いており、視界も霞んで全く見通しの悪い状態だったので、本番まで絶景はお預けだ。と言い聞かせ、下山したのだった。

ライドもハイクも、少しハードかなと思うルートもあったのだが、困難を乗り越えた先の達成感が何にも変えがたい経験であるということを知っているからこそ、僕らは計画通りのルートを選択することに。 あとは本番晴れてくれることを願うのみだ。


こうして、迎えた当日、参加者が各々の期待と不安を胸にスタート地点である亀山駅へと集った。

地元三重から、そして豊明から自走で集合場所まで踏んできたツワモノ、お子さんをバーリーで引っ張ってご参加のご家族に加え、テキサスからバイクを持ってちょうど日本に旅行に来ていたスペシャルゲストまで、20人という少数グループながら実にバラエティ豊かな方々が集まったのである。

顔合わせをし行程を説明したら、早速出発だ。 1日目は亀山をスタートし、一度滋賀県側へと山を越え北上、鈴鹿スカイラインを三重県側へと降りていくルート。県下有数の茶処でもある亀山は、駅から少し走り出せば茶畑が目の前に広がる。国道1号での鈴鹿越えも案としてあったのだが、交通量が多いことを想定し、その北隣にある安楽峠を越える手筈だ。

安楽峠で安楽死

茶畑を抜けると、一気に山が近くに感じる、いよいよ一つ目の峠、安楽峠を越える。 ここを越える事をこの地域の人々は安楽越えと言うそうで、それを聞くと比較的イージーに越えられる峠なのかと想像されるが、実際はそんなに容易くはない。 フルパッキングしたバイクで急な坂を必死にペダリングして登る。 後でわかったことだが、この近くにある安楽という集落のから付いた名前であり、峠の険しさとは全く関係がなかったのだ。

峠の頂上はちょうど滋賀との県境。 一気に滋賀県側へと山を下ると、そこには山桜がまだこれから満開を迎えようとしている最中で、山にも本格的な春の訪れがやってきたのだと感じる。 車では何気なく通り過ぎてしまいそうだが、自転車だと道端に咲いている小さな花や、花の匂い、色んな発見とともに季節を感じることができる。

この日のメインディッシュ(?)を前に小休止。 ここから一気に鈴鹿スカイライン(武平峠)を越えていく。 琵琶湖へと流れ着く野洲川の支流、野洲川ダムはエメラルドグリーンの湖面と、山の緑がとても綺麗で、登りながら何度ペダルを止めて写真を撮っただろうか。

繋ぐバーリーという名の襷

上手くライトにパッキングしたバイクもあれば、王道のツアラースタイルの方も。 バイクはロード・クロス・ATB・シングルスピードとまさにジャンルレス。 バーリーを牽くお父さんはシングルスピードでチャレンジしてくれた。 結果的に厳しい部分もあり、途中からバーリーを牽くバイクを変え、みんなで交代しながらバーリーの中ですやすや眠るお子さんを引っ張っていく。 別にどんなバイクだって、どんなスタイルだって問わないのがライドアライブらしいじゃないか。

学生の頃、ピストに乗って鈴鹿を越えて京都まで行った事があるが、何かその時の胸が躍る気持ちと似た高揚した心持ちのなか、急遽バトンタッチしたシングルスピードに乗って峠を越えようとしている。 今回のライドアライブは僕にとっての原点回帰なのかもしれない。 鬼の形相でギア比2.8を踏み倒して峠を登った。

こうして約12kmの登りをやっつけて、ついに鈴鹿スカイラインを三重県側へ。 眼下には濃尾平野が広がる。 雲一つない快晴のおかげで名古屋の高層ビル群までくっきり見える。 景色に気を取られてしまいそうだが、しっかりと下りのラインに集中して丁寧にワインディングをなぞる。 降りれば待ちに待ったランチが待っているのだ。 予定より時間が押してしまったが、ランチをお願いしていた湯の山温泉の麓にあるカフェコブさんへと吸い込まれるようにダウンヒル。

動物性の素材を用いず、地元菰野町を中心に採れる新鮮な野菜を活かした食事を提供するカフェコブさんでは、この日のために特別に用意頂いたプレートとデザートに舌鼓を打つ。 古いロッジのような建物と、どこか懐かしく感じる落ち着いた内装、そこに店主の近藤さんらの人柄が加わってとても居心地の良い空間が出来上がっている。 キョーヘイ君しかり、三重の人達は暖かく、とても素直な人達が多く、どこか惹かれてしまうのだ。 別に名古屋のみんなが素直じゃないということではないので誤解しないで欲しい。

真っ暗闇のキャンプサイトで乾杯

この日の難関を越えた事だし、ここでのんびりしてしまいたいという気持ちを抑え、再びペダルを漕ぎだす。

左手に鈴鹿の山々を望み、西日がやさしく照らす道をひたすら北へと進んでいく。 キャンプ場を前に今夜の食事を買い出し。 キャンプ場に着く頃にはすっかり陽が落ちてしまった。 その上、山から吹き下ろす強風でテントの設営も一苦労したりと、想定外の事態もあったが、なんとか皆で無事にここに辿り着き、夜の宴を始めたのである。

まさに苦楽を共にした仲間とともに、創意工夫して作った晩ご飯と、美味しいお酒を囲む。 夜の冷え込みは想像以上に強く、僕らは辺りから薪を拾い集め火を起こした。 20人がちょうど囲えるくらいの小さなキャンプファイヤー。 寒さを凌ぐためにも自然とお互いの距離は縮まり、1日を振り返ったり、たわいもない話なんかもしながら夜が更けていく。 テキサスから来たキャロラインも、すっかりみんなと打ち解け、言葉が通じなくても、こうして一緒にサドルの上で時間を過ごせば、我々は一つの家族のように絆を深めることができる。

普段はお酒を飲まない私も、ついカシスオレンジのグラスが進んだわけである。 もちろん翌朝ハングオーバーに悩まされるとは知る由もない。

正直に言えば、1日目のルートは少しハードだった。 この点については最後までキョーヘイ君と悩んでいたことだった。 それでも、みんなで助け合ってなんとか辿り着くんだというグルーヴがお互いをゴールへ後押ししたのである。 一度きりの人生、やらずに後悔するより、やって後悔したほうがよっぽど良いじゃないか。 だからこそ、こうして達成感を共有する事ができたのだ。 僕らには最高の仲間、いや家族がそばにいてくれる。

幸運な事に明日の天気も晴れ予報。 下見では見る事のできなかった素晴らしい眺望を皆と一緒に拝めるかもしれない。 はやる気持ちを抑えながら寝床に付くと、やはり自分も疲れていたのだろう、風で揺れるテントの音なんか一切気にならないくらい深い眠りについたのだった。


TODAY’S RIDER

RIDEALIVE Vol.1 MieRider : Caroline Horn

FrameVelo OrangeCampeur
HeadSetChrisKing2nut
RimMavicA319
HubChris KingR45 Road Hub
TireSimWorks by PanaracerThe Homage
SeatBrooksCambium C17S
SeatPostSimWorks By NittoBeatnik
BrakePaul ComponentMinimoto
Main GroupSram Rival 1
CrankWhite IndustriesG30 Gravel/Adventure Cranks
BasketWALD137 Basket
Seat BagSwift Industries
HelmetGiroAspect
ShoesGiro

TEXT by Shige / PHOTO by Eri Tanaka & Shige