わたしたちは「便利」という名の家畜なのだろうか?—サブスク輪廻転生論
Amazonの「時間指定」が消えた日
さきほど、いつものようにAmazonで必要な買い物をしようとして、ふと手が止まる瞬間がありました。
「あれ、時間指定…どこ行ったの?」
以前は当たり前のように選べたはずの選択ボタンがそこには見当たらないのです。
消えたのか、隠されたのか。
少なくとも、以前よりなぜか “選びにくく” なっていると感じます。
会社の経営上、わたしは年間数万円をサブスクなどの会費を払っていますが、以前は、「生活をちょっと楽にするための料金」だったと思っていました。でも現状はどうなっているのでしょう。
それらの会費が、今では改悪に慣れるための参加費みたいな感覚に変わりつつあるようにも感じます。

便利さとは、ある日突然に奪われるのではないのかもしれません。
少しずつ、気づかれないように削られていくのでしょう。
そしてわたしたちは、「まあ、こんなものか」とやんわりと受け入れてしまう事実もあります。
このような感覚、みなさんには覚えがないでしょうか。
「Enshittification(クソ化)」という、あまりに正直な言葉
ここで一つ、強烈だけれども腑に落ちる言葉を紹介します。
Enshittification(エンシッティフィケーション)。
直訳すれば、「クソ化」です。
この言葉を提唱したのは、コーリー・ドクトロウという作家です。
彼は、巨大ITプラットフォームが例外なく辿る “劣化の運命” を、わかりやすくシンプルに言語化しました。
最初は、ユーザーにとって夢のような時代が訪れます。
投資家たちのお金を燃やしながら、安くて、早くて、信じられないほど便利なサービスを提供する。
赤字で構わない。まずは極力依存をしてもらうために。
次に起きるのが、ビジネス顧客への寝返りの開始。
十分にユーザーを囲い込んだら、今度は広告主や販売業者を優遇し、収益化を粛々と進めます。
そして最後に訪れるのが、収穫期。ハーベストナイトです。
ユーザーからも、業者からも、限界まで利益を絞り取ります。
サービスは明らかに使いにくくなるけれど、もう逃げ場はどこにもありません。

Amazonの時間指定が消え、検索結果やSNSが広告だらけになるのも当然です。
これは偶然でも、不具合でもなくて、このサイクルが、最終フェーズに入ったサインなのだと思っています。
サブスクという名の、静かな固定費地獄
「所有から利用へ」。
ずいぶんと聞こえの良い言葉がコロナ禍に流行ったのをみなさんはまだ覚えているでしょうか。
気づけば、動画はNetflix、音楽はSpotify、配送はAmazon。
車も、家電も、ソフトウェアも、ほぼ全部サブスクです。
一つひとつはまぁ適正かなと感じますが、
月末に並ぶ請求一覧を眺めてみると、確実に真綿で首が締まっていく感覚。
しかも、解約しようとすると本当に面倒くさい。
どこをクリックすればいいのか分からない。
確認画面が何度も出てくる。
これも偶然ではなくて、
ダークパターンと呼ばれる、意図的な設計として呼称されていて、人間の「面倒くさい」という感情を、1円単位で回収するための仕組みともいわれています。
正直に言えば、わたしもかなり長い間、この仕組みに大人しく乗ってきたのですが、それは単純に、便利だから。時間がないから。考えるのが面倒だからって、まぁ自業自得なんですが。笑

気づけば、柵の中で草を食んでいる側だとハッとするわけなのです。
なぜ、この構造は繰り返されるのか
高度資本主義下において、トレンドをベースとして考えるビジネスモデルは、いつも新しくて耳寄りな情報を用意しています。
「シェアリング・エコノミー」。
聞こえはいいですが、実態は個人の資産をプラットフォームが管理し、手数料を抜く仕組みだと言われています。
「Web3」や「メタバース」なども、
既存の集金モデルが行き詰まった後に投げ込まれた、新しい玉手箱にも見えるかもしれません。
そして今まさに「AI」という市場のエンシット化が始まりだそうとしているのでしょう。
一つのサービスが正しくクソ化し、ユーザーが疲弊し始める頃、
また別の“便利でキラキラした何か”が現れる。
わたしたちは憤りながらもそこへと移動し、そしてまた同じ目に遭う。
これはもう、デジタル時代の輪廻転生なのだろうなと感じるわけです。
家畜を卒業する、ただ一つの現実的な方法
「この構造に、いつ世界が気づくのか?」
その答えは、たぶん少し悲観的です。
気づいたとしても、もう戻れない。
生活のインフラそのものを、握られてしまっているから。
それでも、完全に無力というわけではありません。
わたしたちに残されているのは、便利を疑う、というとても小さな抵抗なのかもしれません。
時間指定ができないなら、ちゃんと家電屋に行ってみたり、
見ることのない100万本の動画より、1冊の本を読みなおしてみる。
新しいサービスに飛びつく前に、「これは何年後にクソ化する予定なのか?」と考えてみる。

便利を手放した先に、何があるのかは正直わかりません。
そしてたぶん、少し不格好だったり、効率も悪くなるかもしれません。
でも、その不格好さや非効率を引き受けない限り、
選択の自由は再び戻ってもこないのでしょう。
とりあえず今日は、
「あんまり使っていないけど、なぜか続いている月額980円」
そこを一つ、解約してみようかなと思っています。
小さくて、とってもくだらない話ですが、
わたしにとっては、それくらいがちょうどいい反抗だと思うので。
それではみなさんごきげんよう、また来週お目にかかりましょう。