19年目の仕立て直し
19年という時間を、ひとつの旅のようにも感じています。
その道のりの過程には、とても遠くまで届く光もあれば、ただ足元を照らすだけの小さな光もありました。

速さよりも、何よりも立ち止まらないこと。
見栄えの良い派手さよりも、きっちりとした確かさ。
Circlesは、そんな時間軸の中で、ゆっくりと形を変えながら走り続けてきたのではないかと思っています。
19年という数字は、単なる継続の証ではないのかもしれません。
それは“関係”の数であり、“対話”の深さでもあるのだと思います。
毎日のスタッフの手、その家族の支え、お客様の真摯な声、メーカーとの誠実なものづくり。

そのすべてが緩やかに輪のように繋がり、Circlesという名前を本当に少しずつ意味のある言葉にしてくれたのではないでしょうか。
Culture Clubという社会実験
11月3日、松原にあったCulture Clubはその役目を終えました。
10年間続いたこの場所は、単なる店舗でも、修理工房でもなかったと思います。

“自転車を自分の手で直す”というシンプルな行為の中に、社会と繋がる新しい可能性を探る、ひとつの実験だったのだと思っています。
海外では「バイクキッチン」と呼ばれる文化があります。
その多くはNPOが行政などとタッグを組み、教育や地域再生と深く結びついています。
私自身がその思想に強くあこがれ、未来を信じ、自分たちの手で“続けること”そのものを選びました。

利益ではなく、関わること、交わること。
効率ではなく、共有すること、助け合うこと。
それは経済の上では難しい選択だったと、今では反省も含めていろいろと考えています。
けれど10年という時間をかけて、この場所を通じて多くの人が自転車を組み、直し、「自分の生活に正しく戻るための力」を取り戻してくれたのではないでしょうか。
閉店パーティーの時に見た多くの笑顔を思い出すたびに、この挑戦は決して無駄ではなかったと感じています。

そして何より、この実験を支え続けてくれたスタッフとその家族に、心からの感謝を伝えたいと思っています。
彼らが日々の営みを支え、時に油まみれになりながら、私が信じたことを形にし続けてくれたこと。
その姿こそが、Circlesの理念そのものだったのだと思います。
これからも、その誇りを胸に持ち続けてほしいと願っています。
Tailored ― 対話の先にある「本質」
そして12月1日。
Circlesの創業日と同じ日に、新しい扉を開こうとしています。
名前は Circles Tailored。
かつてCirclesの2階に存在していたコンセプトを独立させ、
より強いイメージで物事を最良な形に“仕立てる(Tailored)”。
「対話を通して本質を届けたい」という願いを込めています。

それは単に商品や自転車を売ることではありません。
相手の声を聴き、その人の走り方や暮らし方、街との関わり方まで含めて、最良の答えを一緒に見つけていくという姿勢を、これまで以上に真剣に追い求めたいと思っています。
名古屋、愛知、その近郊。
私たちはこの土地と環境下で、30年以上走り続けてきました。
その中で見えてきたのは、土の質も、風の音も、人の温度も、場所ごとにちゃんと異なるということです。

だからこそ、Circles Tailoredでは、値段だけでは測れない“プライスレスな経験と情報”を提供できる場にしたいと考えています。
仕立てるという行為は、つくることではなく、まず“聴くこと”から始まると思っています。
相手の中にある声を拾い、正しく形にして返すこと。
それは、自転車という道具を通した“関係のデザイン”でもあります。
私たちはCircles Tailoredを、その新しい対話の場として、これからしっかりと育てていきたいと考えています。
感謝の循環
Circlesという名前は、その名のとおり“さまざまな輪”を意味します。
その輪の中には、数え切れないほどの小さな輪、すなわち支えがあります。

日々店舗を支えてくれているスタッフたち。
彼らを見守り、背中を押し続けてくれる家族。
私たちのつくるものを選び、信じ、楽しんでくれるお客様。
そして、世界のどこかで真摯にモノを作り続けるメーカーや、それらを届けてくれる問屋の方々。
それぞれの手が、この輪を支えています。
どれかひとつでも欠けたら、Circlesはここまで続かなかったでしょう。

19周年という節目にあたって、あらためてすべてのサイクリストに伝えたいと思いました。「あなたたちがいたから、今がある」と。
感謝の言葉は、どれだけ並べても足りません。
だから私たちは、これからも正しく、豊かに走り続けることで、輪郭を生み出し、形としてその想いを返していければと思います。
20年目への速度調整
19年という時間は、単なる一つの周期の終わりではなく、
次の速度を探すための調整期間のようにも思えています。
(今年だけで様々な部署の3度の引っ越しを経て、4度目の準備も進んでいます。変わり続けることは、もはや宿命のようです。)

私個人の考え方として、常に3年を一つの目安に目標を設定しています。だから今年は、実はまだ始まりの年に過ぎません。
変わることと、変わらないこと。
その狭間をたゆたうように、私たちはまた、新しい一歩を踏み出そうとしています。
自転力―それは、自らを、自らの意思と力で回し続ける力。
誰かに押されるのではなく、自分たちの信じる方向へ、自らの意思で進むための力。
この19年間、私はその自転力を信じてきました。
そして今、その力をもう一度仕立て直すときが来たのだと思います。

Circles Tailoredが生まれる12月1日。
それは新しい店舗の始まりであると同時に、Circlesという物語の新しいシーズンの始まりでもあります。
人と人、人と街、人とモノがまた出会い、会話を重ねながら、正しく丁寧に形をつくっていけたらと願っています。
この輪廻は、まだ止まるわけにはいきません。
20年目もまた、皆さまとともに走り続けられれば幸いです。
19年間のご愛顧、誠にありがとうございました。
引き続き皆さまのサポート、自転力、そして創造性を、私たちに引き続きお貸しください。
そして今週日曜日、11月30日には周年パーティーも企画しておりますので、是非皆様お誘い合わせの上お越しください。
それでは皆さんごきげんよう。また来週お会いしましょう。