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「週刊 球体のつくり方」Vol.39

BIKE FRIDAY “REAL” Archives Vol.2/未完成で生まれ、行動で完成するということ

傷の数だけ、旅があるということ

ピカピカの新車というのは、もちろん美しいものです。
箱から出したばかりのフレーム、まだゴムの匂いが残るタイヤ、指紋さえついていないハンドル。
メカニックの視点として、組み上がった瞬間の達成感は、もはや言うまでもありません。

でも、正直に言ってしまうと、BIKE FRIDAYやわたしたちが“FUN TOOLS”と呼ぶ自転車に限っては、「納車」がピークではありません。

むしろ、まだ“未完成”と言ってもいいのかもしれません。

数年ぶりに里帰り(メンテナンス)してくれた、車体に泥がこびりついていたり、チェーンステイに細かな傷が増えていたりすると、わたしたちは少し嬉しくなります。
「ああ、いい道を走ってきたんだな」 そう思えるからです。
このタイプの自転車は、「飾るもの」では決してありません。
まだ見ぬ景色へ、自分を運んでくれるために生まれています。

「畳める」ことの、本当の意味

創業者アラン・ショルツがこだわった「スーツケースに入ること」。
これは収納や車への積載を考えるだけの機能ではありません。

もちろん、航空会社に追加料金を払わずに済むという実用性もあります。
けれど本質はそこではないと思っています。

「日常から非日常へ、ワープするための装置」

Photo by Atsushi Okuyama

これが折りたたむ本当の意味だと思います。

玄関でパッキングをし、空港へ向かい、ターンテーブルでケースを受け取り、見知らぬ土地のロビーで広げ、組み立てる。
そして、最初のひと漕ぎをした瞬間に世界は変わります。
これは体験した人にしか分からない、事実であり、そしてとても大きな変化だからです。

この「自由へのアクセスの良さ」こそ、BIKE FRIDAYの真骨頂だと思います。
たためるのは、収納のためではなく、できるだけ軽やかに遠くへ行くためなのです。

傑作「New World Tourist」という魔法

BIKE FRIDAYには現在、いくつものユニークなモデルが存在しますが、やはりすべての原点であり、傑作であり原点と呼べるものが「New World Tourist(ニューワールドツーリスト)」です。

その名の通り、新しい世界を旅するための自転車。

Photo By Atsushi Okuyama

見た目は可愛らしい小径車なのですが、あまりその見た目に騙されてはいけません。
もし目をつぶって(危ないので実際にはしないでくださいね)乗ってみたら、それが小さなタイヤの自転車だとは気づかないかもしれません。
それくらい、フルサイズのツーリングバイクと同じような感覚でしっかりと走ることができる自転車です。

キャンプ道具を満載にしても、ふらつかない低重心の設計。
これこそが、アランやハンズたちが何百回もの実験と失敗を繰り返して辿り着いた、“ある種”の小径車だけが持つ「魔法」なのだと思います。

傷を愛すことはできるのか?

だからこそ、Circlesがこの自転車を組むとき、少し「土の匂い」がする、丈夫なパーツを選びがちになります。

見た目の軽さよりも、旅の途中で壊れないタフさを優先したい。
繊細で軽量なレーシングパーツもカッコは良いのですが、旅にはやはりあまり向いていないと思います。

泥にまみれても動き続け、荷物をガシガシ積めて、万が一にも対応しやすいクロモリ製のラックだったり。 そんな、実際に自転車旅を完了できる”能力”を持ったパーツを中心に選んでいきたいなと考えています。

また納車の日、声には決して出しません(出せません)が、心の中ではこう願っています。

「早く傷だらけにしてあげてください」

旅でついた傷は、その時の景色そのものになっていくのです。
タッチアップで補修しながら、次の旅を計画する。
そうしてオーナーの色に染まり始めたBIKE FRIDAYは、どんな新車よりも美しいのです。

BIKE FRIDAYは、納車で終わりではありません。
あなたが旅に出て、最初の傷がついたとき
その瞬間こそが、本当のスタートなのです。

次回は、そんな「最高の道具」であるBIKE FRIDAYの、具体的なモデルの選び方や、わたしたちがおすすめする「遊び方」について、もう少しだけお話ししようと思います。

それではみなさまごきげんよう。また来週お目にかかりましょう。

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田中 慎也

空転する思いと考えを自転出来るところまで押し上げてみた2006年。自転し始めたその空間は更なる求心力を持ちより多く、より高くへと僕を運んでいくのだろうか。多くの仲間に支えられ、助けられて回り続ける回転はローリングストーンズの様に生き長らえることができるのならば素直にとても嬉しいのです。既成概念をぶっ飛ばしてあなただけの自転力に置き換えてくれるのなら僕は何時でも一緒に漕ぎ進めていきたいと思っているのだから。
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