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【MKS別注】Black Magic, Brass Magic

経年劣化?経年変化?

剥げ、ヤレ、割れ、酸化。形あるものは常に変化し、同じ状態を留めるモノはこの世には存在しません。

それは諸行無常なこの世の中では、避けては通れない道。

新品の美しさも素晴らしいですが、使い込んで変化していった先に美しさがあるものが好きです。

自転車でいうと、飛び石で塗装が剥がれたり、ハンドルがぶつかりトップチューブが凹んだり。乗れば乗るほど、新品の美しさは変化していきますが、それも自分のライドの記憶であり、一興に感じます。どんなに大量に作られた製品でも、そのアタリや剥げが入ることにより、その車体に自分が刻んだ歴史を物語るものとして、特別な痕跡になっていくのだと思います。

フレームが凹んでも、剥げても、それがあなたと愛車が作った歴史。その変化が美しいと感じます。

一般的には経年劣化として捉えられてしまうことですが、裏を返すと製品に新たな価値観や思い入れが注入されてしまうことでもあると個人的には思っています。

スタッフシゲのクランク。

例えば着古したジーンズ。使い込んだレザーサドルやジャケット。その一つ一つが大量生産体制に乗って製造されたものであっても、着た人、使った人が違えば、別々の表情を見せ、それがその個体の価値になっていくものたち。

そんな自転車パーツを作りたいと思い、日本が誇るペダルファクトリーMKS(三ヶ島ペタル製作所)に依頼したのが今回の別注です。

構想段階から3年を経て、ついにリリースです(いや、めっちゃ長かった・・・)

MKS Pedal Black Paint

製品の形状はMKSが誇る大定番、PROMENADE、SYLVAN STREAM、BM-7。今回はその3型の側板を真鍮で製造してもらいました。

そしてそれをブラックペイントしてもらっています。アルマイトや電着塗装などとは違って、使い込むと(割と簡単に)塗装が剥げてきます。

使い込むほどにブラックペイントが剥げてきて、地金の真鍮があらわになってくるペダルです。

ある人は踏み面から変化が起こるでしょうし、ある人はペダルを地面にヒットさせてしまった部分から真鍮が顔を出してくるでしょう。

そして露出した地金は酸化し、段々とくすんできます。使用環境によっては緑青が浮いてくるでしょう。

だが、それがいい。

側板以外はレギュラー商品と同じ素材でMKS×MASHと同じブラック塗装をしたものを使用しています。

Black Magic

真鍮の上からブラック塗装。界隈の方ならお気づきかも知れませんが、Leica(ライカ)からインスピレーションを受けました。

ライカはドイツのヴェツラーで創業された光学メーカー。映画用フィルムを流用して、フィルムカメラの標準となる35mmフィルムカメラを発明したメーカーです。

こないだPENTAXがハーフサイズフィルムカメラを新リリースして超話題(?)になりましたが、それ以前では世界で唯一、現在でもフィルムカメラを製造しているメーカーがライカでした。

そのライカのM型は、1954年からモデルチェンジしながら現在まで製造されている人類のマスターピース。(驚くことに1954年製のレンズと、2024年製のデジタルのボディが互換性あり・・・!)

そのM型ライカは発表当初シルバークロームが主流でしたが、報道用として「目立たないように」という要請で、真鍮のボディにブラックペイントが施されているものが少量製造されます。その経年変化がめちゃくちゃカッコ良いい・・・(ちなみにシルバーボディも真鍮製です)

その希少性から、中古市場では、オリジナルのブラックペイントは高値で取引されています(もうマジで手が出ない)

値段はさておき、とにかく経年変化で一つとして同じものがない。

派手に地金が出ているのもかっこいいし、エッジだけアタリが出ているのもかっこいい。

最初の状態は一緒だけど、使い込むうちに一点一点が違う表情になっていく。元は同じものだと思えないくらいの変わりよう(写真はM3とM4なんでモデル違いですが)。この世界観が好きすぎて、デジタルカメラはMのブラックペイントを気合いで購入しました・・・使ってなんぼの道具だと思っているので、扱い方は雑かも知れませんが、それが正しい道具の使い方だと思っています。

バイクパーツも含めて、プロダクトっていうのは新品の時ではなく、使い込んだ先に自分の生活までが現れた時がカッコいいって思ってしまう派なんですが、そういう乗り方が好きだし、自転車はあくまで道具なので「丁寧に大切に乗る」っていうのは、綺麗な状態を保つというニュアンスではなく、キズなど気にせず毎日の様にしっかり乗ってあげるって事だと解釈しています。

ボックスもこのアイテム用に特別にデザインしてもらいました。

思いっきり自分の趣味を持ち込んじゃって超恐縮なのですが、自転車好きな人は写真好きな人も多いし、もしかしてこの価値観共有できるんじゃないかな・・・と思っています・・・!

ちなみに私は、ブラックペイントが好きすぎて、SimWorksの真鍮フェンダーTurtle58もブラックペイントしてます笑

Raw Brass

ちょっとカメラな話になりすぎましたが、世界中のブラスラヴァーに向けて、NO Paintの真鍮バリエーションも用意しています。

ブラックペイントと同様にPROMENADE、SYLVAN STREAM、BM-7の3種類をご用意。

ブラックペイントをやたら熱く語ってしまった後で恐縮ですが、こちらの仕上げは軽く磨いてもらっただけの素地。

つまりこちらも、経年変化前提で作られています。

お分かりの通り、下が使用前、上が使用後です。

あえてあまり磨かずに、真鍮のロウな雰囲気のままに仕上げました。くすんできて、めちゃくちゃ雰囲気良くなります。(こっちは逆に自分で磨いてピカピカにしちゃうのもありかも・・・)

こちらは北海道在中のSimWorksユーザーのmatくんですが、この人の真鍮フェンダーも渋すぎ。

色々書きましたが、品質は安定のMKS製。しっかりハンドメイドで仕上げてます。

MKS Promenade Brass For Circles

カラー : Raw,Black Paint
素材(側板) : Brass
素材(ボディ):Aluminum Alloy
重量 : 455g

Made by MKS in Japan

Price : 8,580円(税込)

MKS Sylvan Stream Brass For Circles

カラー : Raw,Black Paint
素材(側板) : Brass
素材(ボディ):Aluminum Alloy
重量 : 482g

Made by MKS in Japan

Price :8,580 円(税込)

MKS BM-7 Brass Pedal For Circles

カラー : Raw,Black Paint
素材(側板) : Brass
素材(ボディ):Aluminum Alloy
重量 : 537g

Made by MKS in Japan

Price : 8,580円(税込)

絶対ロウ真鍮の方がニーズ多いとはわかってるんですが、どうしてもブラックペイントの素晴らしさを語りたくて、紹介文がブラックペイントの分量多めですみません・・・!

とにかく、既製品だけど経年で変化して愛着が湧くような製品が作りたいし、なんなら自分で磨いちゃって自分だけのモノにしちゃってもいいし。そういう自由な感じのプロダクトを他にも作りたいな〜なんて思っています。

ロウブラスもいいし、ブラックペイントもいい出来。ぜひあなたの足元にどうぞ。

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木村 まさし

Circles /SimWorks /CWD /文化中毒者 イカれちまった人生をやり直しに名古屋へきました。Circlesを他の誰にも似ていないものにするのがお仕事です。自転車はもちろん、服や写真、読書や映画、音楽など、歴史や文化と知性があるものが好きです。
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