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【RITCHEY】鉄の意志、日本の手

なぜ今、Ritcheyを選ぶのか

流行には旬があります。
でも、道具の正しさには旬がありません。

Ritcheyというブランドは、まさにその類のものだと思います。
基本、見た目はシック。派手な数字も、記号的な表現も少ない。
けれど、少し掘ってみるだけでわかるのは、これがただの『雰囲気のいいクロモリ』ではないということです。
それは、このブログを読んでいる皆様も、どこかで既に感じていることなのかもしれません。

「Logic」という名の真理、それを支えた日本の手

トム・リッチーが最初のフレームを作ったのは1972年。
そこから半世紀以上、彼はフレームだけでなく、チュービング、ハンドル、ステム、ヘッドまわりといった、自転車の基礎にあたる部分を考え続けてきました。

どうすればもっと軽くなるか。
どうすればもっと強くなるか。
どうすれば、ただ硬いだけでも柔らかいだけでもない、「走って気持ちいい」に辿り着けるか。

リッチーの歴史は、その問いをやめなかった時間そのものです。
だからこそ、古いから価値があるのではなく、長く考え抜かれてきたから、いつ見ても新しく感じるのでしょう。

そして、その歩みの中には、日本の技術が深く、驚くほど深く関わっています。

リッチーを象徴する「Logic Tubing(ロジック・チューブ)」。
必要な箇所だけを厚くし、他を極限まで薄く削ぎ落とす。
ヨーロッパの名門メーカーが「量産は不可能だ」と断ったその繊細な設計図を、世界で唯一形にしたのは日本のTange(タンゲ)でした。

また、その極薄のチューブを歪みなく組み上げ、ハンドメイド同等のクオリティを量産で実現したのも、大阪・堺の東洋フレームの職人技でした。

コクピットに座れば NITTO(日東)があり、脚を回せば Sugino(スギノ)が応え、足元では ARAYA(新家工業)SANSIN(三信)そしてIRCが路面を蹴っていました。

リッチーはアメリカで生まれたブランドですが、その完成度には、間違いなく日本の職人たちの『知恵と技術』が宿っています。
天才トム・リッチーが描いた空想のような設計図を、世界最高の精度で現実へと着地させたのは紛れもなく、この国の町工場だったのです。

三つの「答え」がいま目の前にある

そんな背景を知った上で、いまサークルズの店頭にある3つのフレームを見ると、少し見方が変わるかもしれません。
これは単にカテゴリが違う3台ではありません。
リッチーという設計思想が、違う答えになって現れている3台です。

Garden City(ガーデンシティ)

Garden Cityは、いちばん潔い。
シングルスピードの純度を大切にしながら、街の中でもちゃんと開かれている。リッチーが自身の原点であるトラック競技、そして彼を支えた日本のスチール文化への「恩返し」ととらえてみても面白いと思います。

削ぎ落としているのに退屈ではなく、むしろ身軽だからこそ、毎日の景色が軽くなる。
余計なものがないぶん、乗り手の気分がそのまま表に出る。
自転車ってこれで十分楽しいじゃないか、とGarden Cityは教えてくれます。

Outback(アウトバック)

Garden Cityとは真逆の受け止めるための美しさを持っています。
舗装路も、荒れた道も、荷物を積んだ日も、少し遠くへ行きたくなった朝も、全部まとめて引き受けてくれます。
でも、なんでもできることをやみくもに自慢するフレームでもなく、大事なのは、懐が深いのに走りの質自体が決してぼやけていないことです。

自力で行ける場所が増えるだけでなく、行く気持ちそのものが自然に膨らんでいく、Outbackには、そういう器の大きさもあります。
旅の道具であり、日常の足であり、休日の言い訳にもなる。
一台を長く使うほど、その価値が後からジンワリとやってくるタイプのバイクです。

■ Road Logic(ロードロジック)

Road Logicはいちばん端正で、見た目だけなら、もっともクラシックに見えるかもしれません。でも中身は、懐古主義とはまるで違います。

専用の熱処理済み・トリプルバテッドLogic tubeset、TIG溶接に最適化されたショートバット設計、独自の鍛造・切削インテグレーテッドヘッドチューブ。クラシックな線の中に、現代のロードバイクとしての答えがきちんと入っています。

いろいろな新しさを見たあとで、それでもなお「これがいい」と思わせてくれる、そんなバイクはなかなかありません。 速く走れて、長く乗れて、気持ちが痩せない。10年後にこのバイクを磨きながら、「やっぱりこれが一番カッコいいな」と呟いている、そういうロードバイクは、探すと意外と少ないことを、知っておいても損はありません。

どちら側で戦うのか

今の時代、自転車を買うのはとても簡単です。 巨大なブランドが巨額の広告予算を投じ、「説明のいらない記号」を世に送り出す。読者はその記号をスマホでなぞり、最大公約数的な「正解」を手に取ればいいのでしょう。

かつて、多くのビッグブランドもまた、日本の町工場と共にその歩みを始めました。 しかし、マウンテンバイクが「文化」から「巨大なビジネス」へと変貌を遂げたとき、彼らは日本を去りました。

プラザ合意、円高、職人気質な工場の供給限界といったビジネスの理屈に対し、彼らは「効率」と「粗利」という答えを選んだのかもしれません。

でも、トム・リッチーは違いました。 彼は、自分を売り込む時間があるなら、ガレージで火花を散らし、日本の職人と膝を突き合わせる道を選んだ男です。

コストが上がっても、作れる数が限られても、彼は日本の職人たちの手を離さなかった。なぜなら、彼が求める「Logic(論理)」を具現化できる場所は、世界中でここにしかなかったからです。

利益率や供給量といった「数字」よりも、一本のパイプの肉厚、溶接面の美しさ、そしてライダーが感じるウィップ感という「真理」を選んだ。 その頑ななまでの執念こそが、大手ブランドの既製品には決して宿らない「体温」の正体なのだと思います。

「説明を読むのはめんどくさい」という風潮に対し、僕らのようなショップが、そして「オタク」を自称する皆さまが抗う唯一の道とは、この剝がされ始めた真実を、狂気的なまでの解像度で語り続けることなのかもしれません。

なぜこの形なのか。
なぜこのバランスなのか。
なぜこの素材なのか。

その問いに、すべて理由があります。

きれいだから、ではなく。
有名だから、でもなく。
知るほどに、この「不器用な真実」に納得してしまうからなのでしょう。

Ritcheyとまつわる世界を見聞するだけでも、十分に面白いブランドなのですが、でも、本当に厄介なのはその先です。

知ったあと、かならず欲しくなってしまうので。

でもたぶんそれが、優良ブランドのいちばん正しい入り口なんだと思います。

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名古屋の自転車屋、Circlesです。This is Circles Bike shop in Nagoya Japan.
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