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【Chris King Precision Components】いま改めて考える50年の歴史

Chris Kingという会社が、なぜいま必要なのだろうか?

自転車を取り巻く環境は、この数年で大きく様変わったと感じています。
その価格は上がり続け、パーツも手に入りにくくなり、でもモデルチェンジの周期は驚くほど短くなっています。

一方で、自転車を修理できるお店は減り続け、
長期的な使用を前提で、腰を据えて話ができる場所も、少しずつその姿を消していっているのが現状ではないでしょうか。
 
さらには、コミュニティの細分化が急進的に進み、情報は溢れているのに、本当の相談ができる相手を見つけるのは、以前よりもずっと難しくなってはいませんでしょうか。

これは誰かの愚痴ではなくて、
いま自転車と付き合っている多くの人が感じている、かなり率直な現実だと思っています。

ただ、だからこそです。
長く使うこと、直すこと、作り手が工程に責任を持つこと。
そうした価値が、以前よりもはっきりと認識できる時代になったとも感じているのです。

そんな時代に、「50周年」という大きな節目を迎えた会社があります。

Chris King Precision Components

派手な拡張も、誇張されたPRも、急激な路線変更もなく、
50年かけて、ほとんど同じ姿勢で、同じ問いに向き合い続けてきたマニュファクチャーです。
個人的な話になりますが、私が最も敬意を払っている製造業のひとつでもあります。

5年前のNAHBSでクリスキング自身にインタビューを下記に提示しますが、すでに彼の眼には、今の市場の姿を正しく想像していたことがはっきりと思い出されます。

でもこのとても大きな大きな節目を、
単なる愚痴や記念日として消費をしたくはありません。
むしろ、ここで一度立ち止まり、問い直したいと思ったのです。

なぜ、この会社は50年も続いたのか。
そして、なぜ“いま”の状況において、その存在が意味を持つのか。

価格は上がった。でも、それだけを語ることほど野暮になる

正直に伝える必要があると思っています。
Chris Kingの製品は、決して安くはありません。
むしろ近年は、以前より高く感じられるようになった、という人も多いでしょう。

ただ、ここで一度立ち止まって考えてみたいのです。
「高くなった」という言葉の中に、何が含まれているのか。

材料費、エネルギーコスト、人件費、物流、為替。
これらが上がり続けているのは、周知の事実です。

そして、もうひとつ。
あまり語られませんが、確実に存在している現実があります。

“ちゃんと作る”こと自体が、年々高コストになっているという事実です。

Chris Kingは、設計を外注し、製造を別の場所に任せる会社ではありません。
自分たちで設計し、自分たちで作り、自分たちで検査し、自分たちでその全ての責任を持つ。
材料の調達先も、工程も、廃棄物の行き先も、把握したうえで製品が成立しています。

効率が良いとは決して言えません。
でも、責任が途中で切れないやり方だと、私は思っています。

価格が上がった、という話をするとき。
それが「安くする努力が足りない」のか、
それとも「安く見せる努力を、あえて選ばない」のか。

その切り分けは、いまだからこそ必要だと思っています。

Chris Kingは、明確に後者に当てはまる会社です。

修理文化が薄れる時代に、修理を前提に作るということ

いまの自転車業界には、ひとつの大きな流れがあります。
「直すより、交換するほうが早い」という判断が、当たり前になりつつあることです。

忙しい生活、限られた時間、複雑化する製品。
現実的な選択として、理解できる側面もあります。

ただ、その流れの中で、
最初から“直す前提”を捨てた製品が増えているのも、また事実です。

専用工具がなければ触れない。
内部構造が公開されない。
部品供給が短期間で終わる。

Chris Kingは、この流れとは明確に逆を向いています。

基本的に分解ができること。
ベアリングさえ分解できること。
そして、そのベアリングを交換し、
何年経っても多くの部品が供給され続けていること。

これは懐古主義ではありません。
長期使用を前提に設計する、という明確な意思表示です。

「一生モノ」という言葉は、軽く使われがちですが、
本来は、作る側と使う側の両方が、その時間軸を引き受けるという約束です。

Chris Kingは、その約束を、50年という時間で実行してきました。

長く使うという選択は、いまやカウンターカルチャーになっている

最新であること。
早く手に入ること。
次がすぐ出ること。

かつては、それらが“進歩”と呼ばれてきました。

でも、いまはどうでしょう。
価格は上がり、供給は不安定で、でも情報は過剰なほどに多い。

そんな状況の中で「長く使う」という選択は、
むしろ意識的で、少し勇気のいる行為になっています。

Chris Kingの製品は、外見が大きく変わらなくても、
内部では少しずつ改良が積み重ねられています。

急激なモデルチェンジはしない。
でも、決して止まってもいない。

変えるべきところと、
変えてはいけないところを、意識的に分けている。

長く使うという行為は、
「最新であること」よりも、「信頼できること」を選ぶということ。
いまの時代においては、それがひとつのカウンターカルチャーになっているのかもしれません。

コミュニティが希薄になった時代に、会社は何をできるのか

もうひとつ、無視できない現実もあります。
自転車を取り巻くコミュニティが、以前より見えにくくなっていることです。

イベントは減り、自転車店も減り、
偶然の出会いはオンラインに置き換えられていきました。

つながっているようで、実は孤立している。
多くのサイクリストが、どこかで感じている感覚だと思います。

私にとってChris Kingがとても興味深いのは、
「コミュニティ」をマーケティング用語として扱わない点にもあります。

社員の通勤環境を整える。
自転車で来られるインフラを作る。
ローカルの活動を支える。
哲学や工程を、隠さずに共有する。

決して派手ではありません。
でも、自転車が日常に存在するための土壌を、地味に、しかし確実に耕し続けています。 まるで農業のように。

そしてコミュニティとは、イベントの数や質ではなく、
同じ価値観で話ができる場所が、どれだけ残っているかなのかもしれません。

Chris Kingは、会社という単位で、その場所を保ち続けてきた、
とても稀有な存在だと私は思うわけなのです。

50年という事実が示しているもの

50周年記念のMatte Goldは、確かに美しい色です。
ただ、私が本当に祝いたいのは、色そのものではありません。

50年という時間の中で、

  • 流行に流されず
  • 工程に責任を持ち
  • 修理と長期使用を前提にし
  • 人と土地と文化を切り離さなかった

その一貫した姿勢に対して、
私は最大限の敬意を表したいと思っています。

勤続30年、現場を支え続けてきたフレッドさん。

価格が上がる。
修理が難しくなる。
長く使うことが珍しくなる。
コミュニティが薄くなる。

そんな現実の中で、
それでも思想をベースに作り続ける会社が存在すること。

それ自体が、いまの環境下において、
私たちサイクリストにとって大きな意味を持っているのではないでしょうか。

50周年は、彼らにとってゴールではないのでしょう。
ここまでこの思想を続けてきた、という事実の提示です。

もし、この姿勢に共鳴できるなら。
もし、自転車を「消費」としてではなく「文化」として考えたいのなら。
Chris Kingという会社を、いま改めて考える価値は、十分にあると思います。

いま、Chris Kingの何を選ぶべきか

ここまで読んでいただいたように、
Chris Kingの価値は、製品スペックだけではなく、
思想・姿勢・長期使用の仕方そのものにあります。

だからこそ製品選びも、
「何が一番変わるか」という体験の視点で考えるのがおすすめです。

ハブ(Hubs)

最も体感が変わる自転車パーツです。
走り出し、ラチェット音、エンゲージメントの反応、耐久性。
RingDrive™ システムによる独特のフィーリングは、使い込むほどに馴染んで成熟していきます。

※50周年モデルでは、すべてのハブに「50th Bee」レーザー刻印が入ります。

ヘッドセット(Headsets)

Chris Kingの原点とも言える製品。
操作感の気持ちよさと精度、そして耐久性は、長く乗るほどに確実に効いてきます。私のファーストキングは30歳になりました。

NoThreadSet / InSet / DropSet など各種規格あり。今回仕入れのないモデルも取り寄せ可。

ボトムブラケット(Bottom Brackets)

足回りの静かさと滑らかさを底上げしてくれる縁の下の力持ち。ドライブトレイン全体の印象が変わります。耐久性に不安が持たれがちなボトムブラケットに、保証を付けているのもその自信の表れです。

ホイール(Wheels)

Chris Kingのハブ性能を、そのまま体感できる完成形。
信頼性を重視する人にとって、非常に分かりやすい選択です。
一番簡単にその性能差を理解できるパーツでもあります。

アクセサリー・ギア

ステムキャップやシートクランプ、エスプレッソタンパーなど。
彼らの思想を“手元”に置いておくためのプロダクト群です。

Matte Gold 50周年モデルについて

Matte Goldは、2026年のシーズンを通じて生産され、その後は終了する特別なカラーです。

全ラインナップ対応でありながら、「いつでも選べる色」ではありません。
50年という節目にだけ現れる、ひとつの記念製品です。

  • すべてのマットゴールドハブに50周年 Bee ロゴ刻印
  • ステムキャップ、エスプレッソタンパーにも周年刻印
  • Threaded Headset、リムブレーキ用ハブは対象外
  • 価格は通常モデルと同じ(アップチャージなし)

プロダクトを選ぶということは、時間軸を選ぶこと

Chris Kingの製品を選ぶことは、
単なるパーツ選びではありません。

それは、少し大げさに言えば、
どんな時間の流れで自転車と付き合うかを選ぶことだと思います。

長く使い、直し、付き合い続ける。
その前提に立ったプロダクトが、Chris Kingにはあります。

価格は決して安くないかもしれません。
でもそれは、数字だけで終わる価値ではありません。

この先何年も、あなたのライドのパートナーであり続けるための選択肢として、Chris Kingの製品がある。
そのことを、正しく知ってもらえたら嬉しいです。
遊びを長く続けるための資産として、Chris Kingの製品は存在しているということを正しく知ってもらえることこそが、わたしの役目であり、本望なのだから。

よろしければかなり古いアーティクルになりますが、まだその役目は終わっていないと感じましたので置いておきます。
もしご一読いただけましたら幸いです。

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kyutai
田中 慎也

空転する思いと考えを自転出来るところまで押し上げてみた2006年。自転し始めたその空間は更なる求心力を持ちより多く、より高くへと僕を運んでいくのだろうか。多くの仲間に支えられ、助けられて回り続ける回転はローリングストーンズの様に生き長らえることができるのならば素直にとても嬉しいのです。既成概念をぶっ飛ばしてあなただけの自転力に置き換えてくれるのなら僕は何時でも一緒に漕ぎ進めていきたいと思っているのだから。
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